データベースサーバリプレイスの考え方ゼロからのリレーショナルデータベース入門(12)(2/3 ページ)

» 2021年05月31日 05時00分 公開
[佐瀬力株式会社アシスト]

アプリケーションの動作保証

 アプリケーションの動作保証とは、一般に「対象アプリケーションがデータベースに接続し、SQLを実行してから結果を受け取るまでの一連の動作について動作検証済みのデータベースバージョンはどれか」という確認を意味しています。

 パッケージアプリケーションの場合、メーカーや提供ベンダーが動作保証するOracle Databaseバージョンから選定することになります。独自に開発したアプリケーションの場合、その大半はデータベース側のバージョンアップを考慮して作成されていません。そのため、「データベースのバージョンを選定する」という作業以前に、「データベースのバージョンアップに伴うアプリケーション改修コスト」の試算も必要となります。

製品の安定性

 「製品の安定性」の考え方には2通りあります。1つは、「より新しい製品がより多くの不具合を解消し、安定している」という考え方です。例えばOracle Database 12c R1はOracle Database 11gR2の後継製品であり、より製品として成熟しているはずであるという考え方です。

 その一方で、メジャーバージョンのレベルでの最新版は「不具合の洗い出しについて不十分な可能性がある」ともいえます。つまり、「製品は出荷されユーザーに使われることで不具合が洗い出され、その修正が行われて、初めて安定性も高まる」という考え方です。この考え方によると、最新版ではなく、出荷開始からより多くの時間を経過した、俗にいう「枯れた」製品が最も安定性を保持していることになります。

 稼働データベースを停止できないなどの制約があり、不具合修正の集合パッチであるPSRや個別パッチを適用できない場合は、メジャーバージョンのターミナルリリースを選択するとよいでしょう。ターミナルリリースはメジャーバージョンの最後のリリースであることを示すものなので、該当メジャーバージョンの不具合が出つくしたと見なせます。

製品ライフサイクルとサポート提供期間

 メジャーバージョンのターミナルリリースを採用するのが選択基準の一つと前述しましたが、「製品ライフサイクルとサポート提供期間」も考慮しなければなりません。現在オラクルは「ライフタイムサポートポリシー」でサポート提供期間を定義しており、大きく3種類のサポート提供形態(サポートレベル)が存在します。

 図3は、Oracle Database 11gR2以降の製品について、各サポートレベルの提供期間を示したものです。

図3 Oracle Database サポート提供形態と期間
  • 「Premier Support」

 新規パッチ作成と新規プラットフォーム対応がされる期間です

  • 「Extended Support」

 所定の料金を支払うことにより新規パッチの提供が可能な期間です

  • 「Sustaining Support」

 Premier Support期間中に作成されたパッチ提供と、技術問い合わせが可能な期間です

 「製品ライフサイクルとサポート提供期間」を考慮すると、できるだけ長い期間「Premier Support」が提供されるバージョンを選定することが望ましく、そこには先に述べた「安定性」の理論、つまり出荷から長い時間が経過し、より多くの不具合が洗い出され、修正パッチも豊富な「枯れた」製品バージョンを選びたいという考え方とのバランスが求められます。

 Oracle Databaseバージョンの選定で、「安定性」のためにメジャーバージョンのターミナルリリースを選定することも選択肢の一つではありますが、システムの次期リプレースのタイミングやシステム寿命を考え、修正パッチが提供される「Premier Support」「Extended Support」の提供期間を優先してバージョン選定することをお勧めします。

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