とうとう国内でもiPadが発売された。筆者も毎日、自分の手のように使っている。これを機にモバイルルータ、そして電子書籍の世界に大きな変化が起こりそうだ。
iPadを使っている。朝起きてiPad、ダイニングテーブルでiPad、トイレでiPad、デスクでiPad、電車でiPad、カフェでiPad、ベッドでiPad……。早い話がiPadが僕の手の一部になってしまったわけだ。
妻は半分バカにしつつ「楽しそうね」といい、娘はあきれつつ距離を置いて眺めている。でも、そんなことはカンケーネー! この“ジョブズの生み出した奇跡”は、それを使ったものにしか分からんもんネー、と今日もiPadと同化するのだ。
僕のようなWi-Fi版iPadユーザーにとって外出時に強い味方となってくれるのが、Wi-Fiのモバイルルータ。こちらも、老舗(?)のPocket Wi-Fi、速度がウリのUQのモバイルWiMAXルータ、そして、6月下旬にはNTTドコモからもバッファロー製の製品が出るらしい。iPadの登場が呼び水となったのだろうか、役者が出そろい始めた。その中で最大の注目株は、2010年5月24日から発売が開始された日本通信の「b-mobile Wi-Fi」だ。
この端末自体は、SIMロックフリーで1万9800円で発売されているが、これに同社の「b-mobileSIM U300(年額2万9800円)」を組み合わせると、定額使い放題で月額2500円弱で通信できる。モバイルの定額接続がここまで安価に使えていいの! と叫んでしまうくらいのバーゲン価格なのだ。
デバイスの価格もリーズナブル。安価なコスト構造がウリのWiMAXのルータは別にして、PocketWi-Fiやバッファロー製の製品が3万円台であることを思うと、エリアカバー率100%を誇る3G回線向けの製品として、この価格は財布にうれしい、うれしすぎる。日本通信代表取締役専務兼COOの福田尚久氏は、「ディスプレイ装置を省略するなどして徹底的なコストダウンに努めた」という。
「b-mobile Wi-Fi」は安かろう悪かろうではない。その抜群のコストパフォーマンスに注目したい。NTTドコモのMVNOである日本通信だけに、インフラはNTTドコモのものがそのまま利用できる。一説には投資規模7兆円といわれるインフラだけに、そのパフォーマンスは折り紙付き。ソフトバンクモバイル(SBM)の1兆円規模インフラとはレベルが違うのだ。SBM版iPad 3Gユーザーにはかわいそうだが……。
かつてNTTドコモと日本通信は、ネットワークの相互接続の条件をめぐって争い、電気通信事業紛争処理委員会沙汰にまで発展した経緯があったが、それもいまは昔。「b-mobile Wi-Fi」や「b-mobileSIM U300」を見ていると、あのとき大臣裁定で勝ち得た勝利が布石となって、いままさに花開いてるかのようだ。
人によっては、b-mobileSIM U300の速度が上下300kbpsまでであることを問題視するが、モバイルのデータ通信は、額面の数字だけを見ていてはダメ。例えば、イー・モバイルが、HSDPAで下り7.2Mbpsと威張っても、都心などフィールドでの実効レートはせいぜい200〜300kbpsもあればいいところ。ひどいときには100kbpsにも達しない。基地局インフラのキャパに対しユーザー数が多過ぎるのだろうか。
日本通信の上下300kbpsというのは極めて現実的な数字なのだ。そもそも、全国をくまなくカバーしているW-CDMAのデータ通信速度の上限が下り最大384kbpsだということを、忘れてはいないだろうか?
SBMなどは下り7.2MbpsHSDPAを導入しているとはいうが、『全国の政令指定都市および主要都市、首都圏/16号線内、東海/名古屋市および周辺の主要都市、静岡市、関西/京阪神エリア』と、実にあいまいないい方に終始しており、エリアマップを提示していない。
通信事業者が「いいたくない」ときは、自分に都合が悪い場合がほとんどなので、SBMで「HSDPA接続可能な場面がどれだけあるのか」と、疑心暗鬼にもなる。それに比べ、NTTドコモは「FOMAハイスピードエリア」という名称で堂々とエリアマップを公開している。
日本通信の「上下300kbps」は必要にして十分な速度なのだ。福田氏は、このような速度制限を掛けたことについて、「コストを抑えるために、CD1枚の価格にしたかったから」という。なぜCDの価格なのかは「毎月支払う金額として感覚的にそのあたりが上限」(福田氏)というのがその理由だ。
そして「b-mobile Wi-Fi」がすてきなのは、SIMロックフリー端末である点。インセンティブビジネスではないので、PocketWi-Fiや3G版iPadとは異なりSIMロックが掛けられておらず、契約のシバリがない。もちろんその分、最初に端末代金が必要になるが、「端末がいくらで、通信料がいくら」と明確に分離されている点が、実に気持ちよくてすがすがしい。「分離プラン」と称しながら、極めて複雑でユーザーを煙に巻くような実質インセンティブ商法の「新スーパーボーナス」のカラクリには、疲労感を感じるだけ。
「b-mobile Wi-Fi」は、SIMロックフリー端末であるが故に、その気になれば、SBMのSIMを挿して利用することができる。iPhoneを持っているのであれば、iPhoneのSIMでも通信が可能だ。ただし、SBMのパケット定額制が適用されるかどうか分からないので、やらない方が無難だろうけど……。
だから僕的には、
ということで現時点での最適解は、Wi-Fi版iPad+b-mobile Wi-Fiだと思っている。
欠点があるとしたらバッテリーだろう。「b-mobile Wi-Fiは4時間持つ」(福田氏)というが、3G版iPadの公称9時間は魅力的だ。ただ、iPadはバッテリーが大容量になっている分、充電にも時間がかかることは覚えておきたい。
iPad、モバイルルータや電子書籍へのインパクトは?
NTTドコモの7兆円インフラを安価に使える幸せ
上下300kbpsは現実的にして十分な速度
SIMロックフリー端末って実にすてきですね!
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