業務用モバイル向け国産リッチクライアントとしても実績多数のBiz/Browserについて、概要や特徴、新機能を生かしたアプリの作り方も解説します。前編は、概要と特徴を説明しVBのようにUIデザインできる無料の開発環境を使った簡単なアプリの作り方をコードを交えて解説。
2011年5月25日に、RIA/リッチクライアントのプラットフォームである「Biz/Browser」の最新版、「Biz/Browser V(ビズ・ブラウザ・ブイ)」がリリースされました。
Biz/Browserは大手企業への導入実績も多く持ち、アクシスソフト(現オープンストリーム)の発表によると昨年度の導入企業数が約50社、これまでのトータル導入企業数は、2011年5月末日時点で約830社とのことです。これは日本製のRIA/リッチクライアントとしてはトップクラスのシェアとなっています。
とはいえ、同じRIA/リッチクライアントであるAdobe AIR/FlexやSilverlight、JavaFXといった海外製品と比べると、少しマイナーな存在で、実際にBiz/Browserがどういったものか、知らない方も少なくないかと思います。
理由は、いろいろあるとは思いますが、筆者はその要因の1つとして、高額なライセンス料があったのではないかと考えています。ですが、今回のバージョンから今まで有償であったBiz/Browserの開発環境「Biz/Designer」のライセンスが無償化されており、製品の評価・導入のためのハードルが下げられています。なお、今までは開発者ライセンス25万円+年間利用料5万円が必要でした。
この新しいライセンス体系により、今後は今まで以上にBiz/Browserへの注目が集まるのではないかということで、前編では「Biz/Browserとは何ぞや!?」といったところからの紹介をしてみたいと思います。また後編では、今回のバージョンの目玉の1つとされているスプレッドシート機能についても少しのぞいてみます。
まずは、Biz/Browserの主な特徴を3つだけ紹介します。これら以外にも特徴はありますが、それについてはサンプルアプリを作りながら紹介します。
Webアプリケーションといえば、Internet ExplorerやFirefoxなどのWebブラウザ上で動くアプリケーションを指すものだという認識があります。普段インターネットを閲覧しているWebブラウザでサーバと通信して業務アプリケーションを動かすので、クライアント側にアプリケーションのインストールが不要、といったイメージです。
筆者もそういう認識であったため、当時、初めてBiz/Browserに触れたとき、まずクライアントにBiz/Browserの実行環境のアプリケーションをインストールする必要があることを知り、「これはWebアプリケーションじゃないじゃん!」と叫びました。
でも、よくよく考えるとHTTPプロトコルを用いてサーバとクライアント間の通信を行う点でWebアプリケーションなんですね。とはいえ、当時はこれをWebアプリケーションと呼ぶのには抵抗がありました。
しかし時代は移り変わり、Webブラウザとは別に、Flash PlayerやSilverlightなど、クライアントにRIA/リッチクライアントの実行環境をインストールするケースも増えてきました。こうなってみると、自分の端末にBiz/Browserをインストールすることは特に違和感がなくなります。これはアクシスソフト(現オープンストリーム)に先見の明があったのかもしれません。
このWebブラウザだけでは動かないという点はデメリットのようでありますが、エンタープライズ系のWebアプリケーションではある意味メリットともなります。一昔前はエンタープライズ系のWebアプリケーションではそのほとんどがInternet Explorerで統一されていたという実感があります。
それは、それまでのいわゆるC/S(クライアント/サーバ)型で作成されたアプリケーションを操作性を損なうことなくWebアプリケーション化するために、使用するWebブラウザを特定して、それに特化した形でリッチなアプリケーションを作り込むためです。
しかし、同じInternet Explorerでもバージョンを統一したり、Googleツールバーなどのプラグインのインストールを禁止したりなどの制約を設けるなどクライアント環境の統一に配慮が必要なケースが多々ありました。
そういった中で、1つ決められたRIA/リッチクライアントアプリケーションをインストールすることでクライアント環境は統一され、Webブラウザは好きなようにカスタマイズしてインターネット閲覧できるという状況はメリットともいえます。
Webブラウザを使ってBiz/Browserを一度ダウンロードしインストールさえしてしまえばクライアントの環境が出来上がってしまうので、その手間はそこまで苦になる話ではないと思います。
Biz/Browserには、モバイル向けの「Biz/Browser Mobile」もあります。Windows CE搭載のハンディターミナル端末や、Windows Mobile搭載のスマートフォン端末でならでは、オフライン機能や通信コスト削減、低バッテリ消費などを実現しています。
また、外回り営業支援、店舗入力端末、物流、生産管理、介護(看護)情報管理などモバイル端末が役立つ業務システムで、すでに実績があります。さらにアクシスソフト(現オープンストリーム)は、次期バージョン「Biz/Browser J」でのAndroidやChrome OSへの対応も表明しており、エンタープライズ向けAndroidアプリやChrome OSアプリを展開するプラットフォームとして期待されています。
モバイル対応というと、Biz/Browserはアクシスソフト(現オープンストリーム)の帳票製品「PrintStream Core」とも連携してシステムを構築できます。そのモバイル向けである「PrintStream for Mobile」もBiz/Browser Mobileと連携して、モバイル端末から直接帳票を印刷できます。業務システムとして帳票は欠かせないものです。モバイル端末で入力した情報がすぐに帳票として印刷できるのは、業務用システムをモバイル対応するのに当然のように求められることでしょう。
他の製品との連携といえば、Biz/BrowserはWebサービス連携や、VBやC#、C++で開発できるプラグインによる拡張性も備えています。
Java/.NET/Rubyのソースコード生成ツール「GeneXus」や、Javaアプリ生成ツール「Wagby」、回帰テスト自動化ツール「anyWarp Capture/Replay」、シェルスクリプトだけでシステムを作る「ユニケージ」との連携、JavadocのようなAPIドキュメントをBiz/Browserアプリのソースコードから生成する「Biz-Logip」、VBからBiz/Browserへの移行支援ツール「VaBo-RICH」など、アクシスソフト(現オープンストリーム)以外のサードパーティ製品も多数存在しています。
また、ユーザーフォーラムで開発情報も活発にやりとりされていて、エコシステムを確立しています。
続いて次ページからは、Biz/Browserの簡単なサンプルアプリを作成してみましょう。
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