あなたはエンジニアの仕事を楽しんでいますか? この連載では、仕事を「つらいもの」から「楽しいもの」に変えるためのヒントを考えていきます。
「すべてのエンジニアに、もっとやりがいを持って働いてほしい」――これは、私が最も伝えたいメッセージの1つです。
エンジニアとして働き続けたい人には、ずっとエンジニアでいてほしいと思います。仕事のやりがいや充実感は大切ですし、好きな仕事を続けることは大きな喜びです。
とはいえ、「理想はそうかもしれないけれど、現実はそう簡単ではない」という意見が根強いのも確かです。多くのエンジニアが30歳ぐらいを境に、職場環境の変化を体験します。ずっとプログラミングを続けたくても、ある程度のキャリアを積むとどうしても、マネジメント職や管理職の仕事を任せられがちです。
「エンジニアの仕事を続けたいけれど、現実は厳しい」と考える人のために、「何歳になってもエンジニアを続ける」ための道を考察します。
「プログラマではなく別の仕事をして」と言われたとき、多くの人が戸惑い、反発します。人によっては、業界構造や企業が悪いと考えるかもしれません。エンジニアの仕事が好きなのですから、そう思うのはある意味、当然です。
このようなシーンに出合ったとき、「エンジニアを続けたい」と思っている人の振る舞いは大きく分けて2タイプに分かれます。「変わろうとしない」エンジニア、そして「変わろうとする」エンジニアです。
(1)「変わろうとしない」エンジニア
このタイプは、エンジニアを続けたいという意思が強く、環境の変化を拒みます。エンジニアの仕事に固執して転職を考える人もいますが、転職がうまくいかないと挫折しがちです。
(2)「変わろうとする」エンジニア
このタイプは、環境の変化に対応しようと試みます。マネジメントやコンサルティングなど、エンジニア以外の仕事にも挑戦します。そして、仕事を進めていく中で新しい分野の仕事にも楽しみを見いだします。
変化を拒否し続けるか、変化を機会と捉えて新たな可能性を見いだすか……この選択が、その後の仕事のやりがいに大きな影響を与えます。
ここで、知人であるYさんの話を紹介しましょう。Yさんは現在、人材育成の仕事に関わりつつ、エンジニアとしても働いています。
「30歳を過ぎたころから、スタッフの育成に仕事の重心をシフトせざるを得なくなってきた」と、Yさんは語ります。もともと、Yさんはエンジニアの仕事をずっと続けたいタイプでした。しかし、プロジェクトにおける人間関係でさまざまな苦労をしてきた経験から、スタッフをまとめる仕事の必要性を感じていたのです。
エンジニアの仕事が減ることには多少の不満があったものの、意を決してスタッフをまとめ、育成する仕事に取り組みます。コミュニケーション技術を勉強しながらスタッフとの関わりを変えていったところ、スタッフの行動が変わっていきました。この変化に、Yさんはエンジニアの仕事とは別の面白さを見いだしたようです。やがて、人材育成のプロとして独立するまでに至ります。
Yさんは、研修やセミナーのたびに、エンジニアという仕事への愛情やそれを続けたかったこと、しかし人間関係で苦労してエンジニアの仕事どころではなかったことなどを講演しました。Yさんのバックグラウンドを知った顧客は、メンバー育成だけでなく、やがてシステム開発についてもYさんに相談するようになりました。巡り巡って、Yさんはエンジニアの仕事を再開したのです。
「エンジニアの仕事を一時的に離れたとしても、それを諦める必要はない」とYさんは言います。Yさんのように、機会がいつかまたやってくるかもしれません。 「運が良かっただけだ」と思うかもしれませんが、もしYさんがエンジニアの仕事をすることだけに固執していたら、このような機会には巡り合わなかったでしょう。
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