Qoncept AR Engineは日本のQoncept社が開発したARライブラリです。対応言語が多くiPhone(Objective-C)以外にもJavaやC言語、ActionScriptに対応しています。マーカー型、マーカーレス型(画像認識)、形状認識が使えます。
公式アプリの「Scan it」はマーカーと画像認識の両方に対応していますが、アプリのバージョンアップによるものか、Scan itの公式ページで配布されているマーカーと認識用画像の内、マーカーのみに反応するようです。
他にも、Qoncept AR Engineを使ったアプリとしては「どこでもAR「おうちのおかね」、形状認識を使ったものとして「AR花火」などがあります。
マーカー型のARは精度が良くトラッキングできていますが、上記のとおり画像認識の方が確認できなかったため、画像認識エンジンの精度は未知数です。
「SATCH」はauが発表した「D'Fusion Mobile」を用いたライブラリです。オーサリングツールとしてはD'Fusion Studioがそのまま使われており、ARコンテンツ(D'Fusion Studioのプロジェクトファイル。SATCHでは「シナリオ」と呼ばれている)を読み込んで表示できるiOS用ライブラリです。
アクセス解析機能が組み込まれているため、アクティブユーザー数や起動された時間、地域などの統計情報を確認できます。
「String SDK」は、最大10マーカーの同時トラッキングが可能なマーカー型ARライブラリです。3GSでもほぼ問題なく使用できるぐらいにトラッキングが早く、精度も良いため、マーカー型のアプリを作成する場合には有力候補です。
デモやアプリ「String Augmented Reality Showcase」で動作を確認できます。
APIはマーカー認識に特化しており、極シンプルな作りになっているため、3Dモデルのローダー、描画などの機能は含まれていません。描画に関してはOpenGL ESをそのまま使うため、3D描画を独自に作り込むのは大変ですが、他の描画ライブラリとの連携は行いやすい作りといえるでしょう。
また、上位ライセンスであれば「Unity」との連携が使用可能です。3Dモデルのロードや描画はUnityが得意とするところなので、マーカー認識以外の部分はUnity上で実装するのも1つの方法かと思います。
価格は1アプリ当たり年間499?7000ドルです。開発者向けライセンスは99ドルで、1マーカーのみ、Unity不可で1アプリ当たり年間499ドル、複数マーカー可、Unity可で1アプリ当たり年間999ドル、複数マーカー化、Unity可、ライブラリ名のスプラッシュなしだと、1アプリ当たり年間7000ドルです(参照)。
試用版SDKがフリーでダウンロードできるため、後ほどmetaioと同様にサンプルコードを見ていきたいと思います。
AR対応のアプリを自分で開発したい場合は上記のリストにある8つのライブラリを使うことになりますが、複雑な動作が必要なく、単にマーカーの上に3Dモデルや動画を表示したいだけであれば、各社が提供しているプラットフォーム型のARサービスを利用するというのも1つの手です。
プラットフォーム型のARサービスでは、3Dモデル、マーカーといったコンテンツのみを用意してサーバにアップロードし、アプリの方はプラットフォーマーが提供する共通のモバイルアプリを使用します。
既製のアプリを使用するためカスタマイズ性はかなり低く、コンテンツダウンロードにかかる時間や、他社のコンテンツと共存する可能性といった問題点もありますが、コードを書くことなくARコンテンツの表示が可能なため、納期や予算などによっては一考の余地があります。
以下では「ARToolKit」の技術を利用した「Biz-AR」と、「metaio」の技術を利用した「Junaio」について金額や特徴をまとめています。
「Biz-AR」はARToolKitライセンス販売の日本代理店であるエム・ソフトが提供するマーカー型のARプラットフォームです。価格は、初期費用5万円、月額費用2万5千?12万5千円です。プランによってできることは異なりますが、流したい動画や、物体の周辺360度から撮影した写真をコンテンツデータとしてサーバへ登録し、マーカー画像を指定することで閲覧アプリ(Biz-AR Pocket View)を用いてARコンテンツを表示できます。
ビューワーアプリはiOSとAndroidの両方に提供されているため、両方でコンテンツの表示が可能になりますが、3Dモデルの表示には対応していません。
「Junaio」はmetaioが公式に提供している無料のARプラットフォームです。アプリは「Junaio」という単一アプリに統合されていて、各開発者/企業はJunaio上で動作するARコンテンツのみを提供します。
作成できるARの種類はかなり豊富で、マーカー型ARに限らず、マーカーレス(画像認識)やロケーションベースのAR、緯度経度方角を記録した特殊マーカーを用いたIndoorLocationベースのAR、コンパス情報を用いて上下左右360度を囲む形で光景を表示するARを提供できます。
上記で紹介したライブラリはSDKを公開していないものも多くありますが、metaioとStringに関しては試用SDKの無償ダウンロードが可能です。これら2つにはサンプルコードも同梱されているため、まずはサンプルを動かします。
シミュレータではカメラが使えないため、ARアプリを試す場合にはiPhone実機で試すことになります。
iTunes App Storeへ公開しない場合であっても、iPhoneの実機上でアプリを動かすためにはiOS Developer Program(年間8千400円)が必要となるため、以下の手順でiOS Developer Programの登録を行い、その後で実機の登録、動作させるアプリの登録を行います(ARとは直接関係がないため、詳細は割愛します。知りたい方は、記事「ここが大変だよiPhone実機テスト+iPhone OS 3.0の新機能」を参照してください)。
次ページでは、いよいよサンプルを動かし中身のコードを解説します。
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