ファイルシステムを意識しようファイルシステムの基礎知識(1)(2/2 ページ)

» 2012年08月24日 17時50分 公開
[星野隆義シマンテック セールスエンジニアリング本部]
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 あるファイルが、どのフォルダの配下にあり、所有ユーザーは誰で、最後に更新されたのは何時で、ハードディスクのどの部分に格納されているか、というような情報が格納されていると理解してほしい。コンピュータのトラブルが発生した際に、「ファイルシステムが壊れた」という言葉を耳にするが、これは「目次の情報が不正になり、必要な情報がどこにあるか分からない状態」を指すと考えてほしい。

 本によって呼び名は異なるが、書かれている情報を項目ごとに分類している単位を、ここでは「章」と呼ぶ。料理の本であれば、第1章では和食のレシピ、第2章では中華のレシピ、という具合である。ファイルシステムの場合、これに相当するのが「フォルダ」である。もちろん、章が節に細分化されているように、あるフォルダの配下に別のフォルダがあってもよい。

 実際の本のページ、例えば「68ページに掲載されたカレーのレシピ」に該当するのが、ハードディスク上に書かれた実際のデータ部分である。この部分に辿り着くには、インデックスの役割が非常に重要である。逆の言い方をすると、データを使用できなくするには、基本的にインデックスだけを消去すればよい。「基本的」と付け加えたのには理由があるが、それは後述する。とりあえず、コンピュータに格納されているファイルを消去した場合は、ファイルシステムにおいてインデックスだけを消去したことになる。

 最後に、「1ページ当たりの文字数」に触れておきたい。本の世界では、あまり意識しない要素だと思うが、ファイルシステムでは重要な概念だ。1ページあたりの文字数が多ければ、本は薄くなり、ページをめくる手間も減るだろう。しかし、説明する内容が大きく変わって、改ページをする際に無駄になる面積が大きい(第1章から第2章に変わる際に、改ページしない本もまれに存在するが)というようなデメリットもある。これと同じ事がファイルシステムでも言える。ファイルシステムの仕組み上、どんなに小さなファイルでも必ず1つのクラスタ(「ブロック」ともいう)を使用するため、クラスタサイズが大きいと、ハードディスクが無駄になりやすい。

ファイルシステムを意識しなければならない状況

 読者の方々の日々の通常業務の中では、ファイルシステムを意識する必要はないだろう。しかし、意識すべき状況も存在する。ここでは「ファイルシステムの仕組みなど難しくて分からないし、意識しようにも何をどうすればよいか見当もつかない」という方のために、重要なポイントを2つ説明する。前述の本の例えを思い出しながら読んでいただきたい。

 1つ目は、フォルダの中にファイルを保存する場合の注意点である。単刀直入に言うと、1つのフォルダの配下にたくさんのファイルを置かない方が良い。1つのフォルダ配下のファイル数が1,000個を超えたら、かなり多いと思っていただきたい。そのような場合は、サブフォルダを作って分類することをお勧めする。1つの章に膨大な記述があると、目次が役に立たなくなるのと似ている。多くのページで構成された章の場合、章の中がいくつかの節に分かれていれば、目次も使いやすくなるだろう。ファイルシステムでも、同じ事が言えて、ファイルを検索するときのパフォーマンスに大きく影響する。

 2つ目は、ファイルを削除する場合の注意点である。コンピュータに格納されているファイルを消去すると、ファイルシステムが持つインデックスだけが消去されると先に述べた。ということは、ファイルシステムのプロフェッショナルであれば、消去されたファイルの中身を復元することができるのである。本の例えを思い出してほしい。「カレーのレシピ —— 68ページ」という目次の情報がなくても、カレーの作り方が掲載されているページを見つけるのが可能なのと一緒である。コンピュータを廃棄する際は「必要なファイルをゴミ箱に移してゴミ箱を空にした」だけでは不十分であり、ハードディスクを物理的に破壊するか、専門の業者にデータの消去を依頼するなどの配慮が必要な理由がご理解いただけたと思う。ITガバナンスの重要性が叫ばれている昨今、このようなファイルシステムの知識を持つことが、情報漏洩事故の防止に非常に重要である。

まとめ

 第1回では「ファイルシステムとは何か」について述べ、ファイルシステムを意識しなければならない2つのポイントについて述べた。第2回では、ファイルシステムの仕組みをもう少し掘り下げて解説し、初心者でも簡単にトラブル防止や性能向上を実現できる方法に触れてみたい。

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