本企画はWeb開発企業『クレイ』におけるアジャイルソフトウェア開発の経験を漫画「ブラックジャックによろしく」の名シーンを挿絵に紹介するドキュメンタリーです。
はじめまして、認定スクラムマスターの吉岡と申します。私は2011年にWeb開発企業『クレイ』に入社して以来、開発プロセスの改善に取り組んできました。クレイはエンジニア5人とプロジェクトマネージャ2人でWeb開発を請け負っており、プロジェクトの規模としては2〜3カ月で完了する短いものが主流でした。
入社当時はエンジニアそれぞれのToDo管理はしていたものの、要件の解釈で行き違いがあったり、担当者以外に開発の状況が見えないなどの問題がありました。
そこで、私はそれまで独学で学んできたアジャイルソフトウェア開発の知識を1つ1つ自分の担当プロジェクトに適用していくことにしました。
クレイには幸い変化を受け入れられる土壌があり、少しずつ着実に、プロジェクトはアジャイルになっていきました。2012年に入ってからは認定スクラムマスター研修も受講させてもらい、開発プロセスをより一層洗練するのに役立ちました。
本稿では、クレイにアジャイルソフトウェア開発を導入した経験を、理論と実践に基いて紹介したいと思います。
アジャイル化を始める前の開発プロセスには、さまざまな問題がありました。
要件定義のやり方が定まっていなかったため、あいまいで抜けが多くありました。タスクはToDoリストで管理していましたが、やはり完了条件があいまいで、プロジェクトマネージャが作成した分が消化されてしまうと開発者に待ちが発生していました。
また、案件やモジュールごとに担当者が固定だったので、設計のまずさに気付かず進んでしまったり、仕事の負荷が特定の担当者に偏ったりしていました。
そんな現場に、私は「開発リーダー」として参加しました。「リーダー」という肩書きもあり、新しいことの提案はしやすい立場でした。
上司は、やはり開発プロセスに問題を感じており、常にもっとうまくやりたいと考えている人でした。
また、同僚は若いながらも技術レベルが十分に高く、挑戦を受け入れる柔軟さがありました。こうしてクレイのアジャイル化は始まりました。
アジャイルに開発するには、何をすればいいでしょうか。何をすれば、「我々はアジャイルだ」といえるでしょうか。
残念ながら簡単な答えはありません。アジャイルな開発を実践している人それぞれが、それぞれの考えを持っていることと思います。これは不思議なことではありません。
なぜなら、アジャイルソフトウェア開発は手法ではなく、原則(「アジャイルソフトウェアの12の原則」)だからです。アジャイルな開発を実践する人は、その原則に従って、それぞれの製品や顧客、開発者に合わせ、自分たちのやり方を編み出さなければなりません。
アジャイルソフトウェア開発の導入とは、特定のソフトウェアをインストールすることなどではなく、自分たちのやり方を模索し、改善していく過程そのものなのです。
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