アジャイルってなんなんだ!?ブラックアジャイルによろしく(2/4 ページ)

» 2013年04月15日 18時00分 公開
[吉岡礼貴クレイ]

ふりかえり

 さて、アジャイルソフトウェア開発に原則があることは分かりましたが、それに近づいていくためには、まず何をすればいいのでしょうか。この答えは簡単です。近づいていくための仕組みを作ればいいのです。原則の中に次の項目があります。

チームがもっと効率を高めることができるかを定期的に振り返り、それに基づいて自分たちのやり方を最適に調整します。

 この項目はまさに、アジャイルソフトウェア開発の導入過程そのものを表現しています。そして、アジャイルソフトウェア開発の最もポピュラーなフレームワークである「スクラム」には、この原則に対応したプラクティス、「ふりかえり」があります。自分たちの開発をアジャイルにしたければ、最初に始めるべきなのは「ふりかえり」です。

「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰(漫画 on web http://mangaonweb.com/)より

 最初にやることが決まった「ふりかえり」ですが、実は「ふりかえり」にも決まったやり方はありません。アジャイルソフトウェア開発は何から何までオーダーメイドなのです。

 とはいっても実践している人が大勢いて、コミュニティがありますから、一般的なやり方を知ることはできます。クレイでは「オブラブ」のふりかえりガイドをベースに始めることにしました。やり方を簡単に説明すると、以下のようになります。

  1. 大きな模造紙と付箋紙を用意する。模造紙は3つに区切り、それぞれに「K」「P」「T」と書く(それぞれ「Keep」「Problem」「Try」を表す)
  2. プロジェクトの中で上手くいっている事や続けたいことを挙げて付箋紙に書き、「K」の欄に貼る。挙がった内容を参加者全員が理解できるよう、書いた人が説明する
  3. プロジェクトが抱えている問題を挙げ、「P」の欄に貼る。「K」と同様、参加者の中で理解を合わせる
  4. 改善のために挑戦することを挙げ、「T」の欄に貼る
  5. 「T」で挙がったものの具体的な実施方法を検討し、実施するものを選択する

 上の説明は簡略化してありますので、実践する場合はぜひ「プロジェクト ファシリテーョン 実践編 ふりかえりガイド」(PDF)を全部読んでみてください。

KPTによる、ふりかえりのサイクル(「プロジェクト ファシリテーョン 実践編 ふりかえりガイド」p14から引用)

 ところで、「ふりかえり」も“やり方”の1つですから、当然改善の対象になります(つまり、「ふりかえり」で「ふりかえり」のやり方を改善します)。以下にクレイで改善してきたことを挙げてみます。

  • プロジェクトの期間を通して同じ模造紙を使い続け、前回までのふりかえりの内容が分かるようにする
  • 「T」に挙がったことで、実施できたことは「K」へ移動する
  • 「P」と「T」のうち、時間が経って当てはまらなくなったものは剥がす
  • 「P」のうち、長期間解消しないものは、「P」ではない可能性を検討する
  • 「T」のうち、長期間実施されないものは、やり方を再検討する
  • 「ふりかえり」にかける時間を決め、計測する

模造紙と付箋紙を使っている様子

 クレイでは「ふりかえり」を導入することで、自分たちのやり方を評価し、次に必要なことを参加者全員の合意の上で決めていく習慣ができました。アジャイルソフトウェア開発というくくりには、さまざまなプラクティスが含まれますが、残りのプラクティスは「ふりかえり」の中で導入するかどうか、導入するとしたらどのようにやるか、を決めていけば良いのです。

 次ページでは、クレイでアジャイル化の初期に導入したプラクティスを挙げてみます。

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