ブロケード コミュニケーションズ システムズは5月22日、「オンデマンド・データセンター構想」を発表。この構想の実現に向け、新たな仮想ネットワーク製品もリリースした。
ブロケード コミュニケーションズ システムズは5月22日、「オンデマンド・データセンター構想」を発表した。
この構想は、ルーティングをはじめ、セキュリティや負荷分散といったこれまでハードウェア機器で提供していたネットワークサービスをソフトウェアで提供することで自由度と拡張性を高め、コストを削減しようというもの。究極的には「ラックの中、あるいはブレードの中にオンデマンドでデータセンターを作ってしまう」(同社 SDNビジネス開発本部 執行役員 尾方一成氏)ような状態を目指す。かつ、そのデータセンターが最適化されている状態を実現することで、事業者による新たなアプリケーションやサービスの迅速な展開を支援する。
ブロケードはこの構想の実現に向け、新たな仮想ネットワーク製品も発表した。その筆頭が、同社が2012年12月に買収したオープンソースの仮想ルータ、Vyattaだ。これをあらためてブロケードブランドの「Brocade Vyatta vRouter」としてリリースした。L3ルーティングやファイアウォール、VPNといった機能を、ハードウェアではなくソフトウェアで提供することにより、初期コストの大幅な削減と柔軟かつ迅速なサービス展開を実現する。
Brocade Vyatta vRouterの特徴の1つが、仮想サーバ間のトラフィックすべてをコアネットワーク(イーサネットファブリック)に流すのではなく、不要な折り返しトラフィックを流さないような工夫を実装していることだ。今後も継続的に機能を強化する予定で、2013年秋にリリース予定のバージョン6.6では、マルチキャストルーティングやダイナミック・マルチポイントVPN(DMVPN)をサポートする予定という。
また「Brocade Virtual ADX」は、これまでハードウェアアプライアンス「Brocade ADX」として提供してきた負荷分散機能を、ソフトウェアでも提供するものだ。ADXのアーキテクチャを継承しつつ、ソフトウェアとして提供することで、サードパーティ製も含めさまざまなオーケストレーションツールとの連携が容易になる。
ADX/Virtual ADX用のオーケストレーションソフトウェア「Application Resource Broker」の機能も強化する。バージョン2.5では、アプリケーションの負荷増大に応じた拠点内での負荷分散だけでなく、グローバルな負荷分散もサポートし、離れたデータセンター間にまたがって自動的にリソース制御を行えるようにした。
さらに、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」との連携も強化する。具体的には、イーサネット・ファブリック構築のコアとなっているスイッチ「Broacde VDX」向けに、現時点での最新リリースである「Grizzly」ベースのプラグイン「VCSプラグイン」の提供を開始している。さらに、ADXやVirtual ADX、Vyatta vRouter向けのプラグインも、2013年下期にリリースする予定だ。これらはおそらくHavanaベースになる見込みという。
ブロケードはまた、オープンソースのSDNプロジェクト「OpenDaylight」にも積極的に参加する方針だ。同社のSDN関連ソリューションの基盤として、OpenDaylightコントローラを使用していく計画という。
サーバやストレージだけでなく、ネットワークサービスも「仮想化」し、柔軟なデータセンターを実現していくというアプローチは業界全体の趨勢だが、ブロケードはその中で、フラットかつ高速な「イーサネット・ファブリック」というネットワークインフラを提供していること、さらに、サーバやファイバチャネルストレージというインフラも含め、複数のレイヤにまたがるソリューションを提供していることが強みだと尾方氏は述べている。
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