Test the Web Forwardは「より良いWebの実現」を目的としたイベントだ。1日目はWeb標準に関する仕様書の読み方やWeb標準のためのテスト作成について学び、2日目には実際のテスト作成に取り組んだ。
Web技術者たちがWeb標準について交流するイベント「Test the Web Forward」が6月7日と8日の2日間にわたり、都内にあるグーグルジャパンのオフィスで開催されました。参加者たちは、Web標準に関する仕様書の読み方やWeb標準のためのテスト作成について学び、実際にテストを書くことでWeb標準の仕様策定に貢献しました。
まず、Test the Web Forwardについて、グーグルの北村英志氏が意気込みと期待を語りました。
Test the Web Forwardでは「より良いWebの実現」を目的としています。具体的には、「Webブラウザの互換性を高めること」だと北村氏は説明します。
昨今、HTML5やCSS3、JavaScriptの新しいAPIなど、新たな仕様やさまざまな機能が登場することで、従来はネイティブアプリでしか実現できなかったことが、Webブラウザだけでも実現可能になってきています。これは、Web技術者にとって都合の良い話に聞こえるかもしれませんが、実は不都合な側面も持ち合わせています。
例えば、CSSではWebブラウザごとに仕様の解釈が違い、実装が異なる場合があります。「各Webブラウザの実装の違いに合わせて処理を分ける」など小手先の対応策もありますが、Web技術者が望む方法ではありません。誰もが同じ書き方で同じように表示される仕組み、つまりは「Webブラウザ間の互換性」を望んでいるわけです。
Webブラウザ間の互換性を実現するために必要なものとはなんでしょうか。それは、Web標準の各機能がWebブラウザに正確かつ仕様通りに実装されているかを確認するテストです。アプリケーションではなく、Webブラウザのためのテストが必要になります。
Web標準の仕様策定はW3Cが中心となって進めていますが、仕様の件数は膨大で、それに対するテスト作業も相当な量に上ります。その一方で、仕様の数に対するテストを作成する人の割合は決して多くありません。
Web技術者の皆さんが協力してテストを書けば、「もっと良いWebを容易に実現できるのではないか」という取り組みが、Test the Web Forwardというムーブメントであると北村氏は強調しました。
ここからはセッションの紹介です。「テストとはなにか」「なぜ必要とされているのか」といったことを、エキスパートの方たちがWeb標準化の現状を踏まえて分かりやすく解説しました。
はじめに、今回のイベントの中心となるテストについて、総務省の岡本樹生氏から説明がありました。
Web標準において、テストはWebブラウザがW3C(World Wide Web Consortium)の定めた標準仕様に準拠しているかを調べるために必要です。また、仕様自体の機能的な過不足を発見するといった役割も持っています。標準策定に際して重要な役割を持つテストですが、作成者は多くありません。
日本のWeb技術者について、岡本氏は「いまある仕様を使ってサービスやアプリケーションを作るのはとても上手だが、HTMLやCSSといったWeb標準自体にかかわる人は多くない」と話します。「日本の技術者からもっとWeb標準にかかわる人が増えてほしい」(同氏)と今回のTest the Web Forwardへの期待を語りました。
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