ヴイエムウェアは8月最終週に開幕した年次カンファレンス「VMworld 2013」で、同社が昨年構想として発表したSDDCの根幹となる技術が一通りそろったことをアピールし、同社のいうSDDCの具体的な意味を説明した。だが、ヴイエムウェアの説明を表面的にとらえると、おそらく誤解することになる。
IT業界では複数の企業が「Software Defined Data Center」(以下、SDDC)という言葉を使い始めている。ではSDDCとは何なのか。正解はない。この言葉こそ、今後いう人の数だけの意味が生まれ、「Software Defined Networking(SDN)」よりも定義の難しい言葉として知られていくことになるだろう。だが少なくとも、この言葉を最初に使った米ヴイエムウェアは、同社なりの説得力のある議論を展開している。
ヴイエムウェアは8月最終週に開幕した年次カンファレンス「VMworld 2013」で、同社が昨年構想として発表したSDDCの根幹となる技術が一通りそろったことをアピールし、同社のいうSDDCの具体的な意味を説明した。
だが、ヴイエムウェアの説明を表面的にとらえると、おそらく誤解することになる。そこで本記事では、今回ヴイエムウェアが発表した内容を基に解説したい。
同社のいうSDDCを支える、今回のおもな発表を短くまとめると、次のとおりだ(これらのうち重要な発表については、別記事で紹介する)。
以上の発表を表面的にしか理解しない人は、ハードウェアで提供されてきた機能のソフトウェア化こそが、(少なくともヴィエムウェアのいう)SDDCの意味だと考えるだろう。たしかにそういう側面はある。例えばVirtual SANやVirtual Volumeについては、ストレージ機器ベンダが提供してきた付加価値の一部がヴイエムウェアに移行する可能性がある。しかし、IT業界内の主導権争いとは別に、ヴイエムウェアがユーザー組織に提供しようとしている価値を見逃すべきではない。
その価値とは、「ユーザー組織がやりたいことを、最短距離で実現するためのITインフラを提供する」ということだ。ヴイエムウェアは、もはや仮想化プラットフォームベンダではない。仮想化製品というジャンルを超えて、ユーザー組織がITインフラを自在に制御できる世界を実現しようとしている。
その意味は2つある。ITインフラの展開と拡張の自動化、そしてサービスレベル制御の自動化だ。
ヴイエムウェアはVMware vSphereに搭載したAuto Deployという機能で、すでに自社製品の展開を自動化している。つまり、サーバ機を調達してネットワークに接続するだけで、必要な構成をほとんど自動的に送り込み、このサーバ機を仮想化基盤の一部として使えるようにしている。ユーザー組織が、(それほど技術に詳しくなくとも)迅速・確実に仮想化できるようにしている。そしてこの基盤のうえで動かす仮想マシン(仮想サーバ)については、ポリシーに基づいてサービスレベルの制御ができるように機能を拡張してきた。
ヴイエムウェアの今回の発表は、これまで仮想マシンが対象となってきた上記のメリットを、ネットワークおよびストレージに対して本格的に拡大するという意味が込められている。同社のネットワーク仮想化と、ストレージに関するVirtual SAN、Virtual Volumeといった機能が意味するのは、ネットワークやストレージをつなげさえすれば、あとはITインフラの構築をほとんど自動的に実現できるということだ。しかも、単なるITインフラではない。アプリケーションに応じて、適切な性能や可用性を自動的に制御できるITインフラだ。
ポール・マリッツ(Paul Maritz)氏は、ヴイエムウェアのCEO時代に「ITインフラは透明にならなければならない」と語っていた。理想は「ゼロタッチ」、つまりITインフラ運用担当者が複雑な設定や構成を行うことなしに、ポリシーを設定することを通じ、アプリケーション担当者の求める品質のサービスを提供できるようにすることだ。
今回のVMworldの基調講演で、現CEOのパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏は、聴衆の多くを占める情報システム部門の人たちに対し、「あなたたちを(モバイル化、クラウド化が進む今後のITの)チャンピオンにしたい」と話した。情報システム部門は、ユーザー部門が必要とするIT環境を、適切な形で提供することで、彼らがやりたいことを積極的にサポートできる、頼れる存在になれる、としている。
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