Windowsストア・アプリは「Windowsストア」(以降、ストア)だけで配布される。マイクロソフトの審査に合格したアプリだけがストアに掲載されているので、ユーザーは安心してインストールできる。
さらに、ユーザーには見えない安全のためのガードが2つあり、審査と合わせて3つのガードがWindowsストア・アプリを安全なものにして、ユーザーに安心を提供している(次の図)。
Windowsストア・アプリしかインストールできず、まだ「ジェイル・ブレイク」(=想定外のアプリも自由に入れられるようにすること)も困難だとされているWindows RT(=ARM CPU向けWin 8)は、最も安全で安心なタブレット用OSだといえるだろう。
開発者から見ると、ユーザーに安全と安心を提供するために、自由にアプリを作れないという制限を受け入れることになる。
上の図で1つ目に挙げた「プラットフォームの制限」は、特によく理解しておいてほしい。ユーザーの安全と安心を脅かすために使えそうなAPIが、ことごとく排除されているのだ。例えば、プロセス間通信は禁止、あるいは、ファイルの自由な読み書きも禁止(第6回で解説予定)などと、従来のデスクトップ用アプリを開発してきた感覚からすると、できないことだらけだ。詳しくは、上の画像に示した資料をご覧いただきたい。繰り返して言うが、それらは全てユーザーの安全と安心を守るためである。
2つ目の「ストアの審査」では、アプリを使ってみての審査のほかに、不正なAPIの使用や不明なWebサーバとの通信なども解析ツールを使ってチェックされる(第12回で解説予定)。
3つ目の「身元の保証」とは、ストアにアプリを登録する開発者の身元を、マイクロソフトがしっかり確認するということだ。詳しくは第12回で解説する予定だが、開発者が銀行口座を開いてクレジット・カードを持つための金融機関側の与信管理を間接的に利用している。
Windowsストア・アプリはストアだけで配布される*3。アプリを見つけてインストールし、利用料金を支払い、購入済みのアプリを管理し、レビューを書いてフィードバックするまでの全てを、ユーザーはストア内で完結できる*4。
*3 実際には、業務アプリであれば、ストアを経由せずに社内LANのみに配布することも可能だ(「サイドローディング」と呼ばれる)。これにはアクティブ・ディレクトリかWindows Intuneを利用する。
*4 ストアによらない課金やフィードバックの受け取りが禁止されているわけではないので、これに当てはまらないアプリもあり得る。詳しくはMSDNの「Windows 8 アプリの認定の要件」を参照。
開発者から見ると、ストア用のインストール・パッケージだけを作ればよく、また、課金システムを独自に構築しなくてもよいということだ。
インストール・パッケージの作成は、Visual Studioの機能に任せればよい(第12回で解説予定)。インストーラやアンインストーラを開発する必要はないのだ。また、ユーザーがインストールしたアプリの管理もストアがやってくれるので、ユーザーがアプリを削除した後に再インストールする場合の対処なども、開発者は考えなくてよい。逆に、アプリを削除したときに一緒に消されるデータや残されるデータが何かなどは、開発者がコントロールできない。
課金についても、インストール時の課金、試用期間後の課金、あるいはアプリ内の特別な機能やゲームのアイテムなどに対する課金などが、簡単に実装できるようになっている(第12回で解説予定)。マネタイズの手段としては、そのような直接課金のほかに、アプリに広告を入れることもできる(第11回で解説予定)。
また、ストアの販売先は、ほぼ全世界である。開発者は、自分のアプリをどの国の市場にでも出すことができる。課金と広告の仕組みが用意されており、全世界にも配布できるのがWindowsストア・アプリなのだ。個人レベルの開発者が世界を相手にアプリで稼ぐことも夢ではないのである。
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