森田 昨年(2012年)、筑波大学大学院を卒業されていますが、卒業前からトレジャーデータの起業に関わって米国に移住されていますよね。起業以外にも就職の話とかたくさんあったと思うんですが、トレジャーデータを選んだ理由は、どこにあったんでしょうか。
古橋 就職活動もしましたが正直、自分の得意なところを生かせる会社は、ほとんどなかったんです。さっきもいいましたが、僕はゼロから設計して、いままでになかったものを作ることが得意なので、それを評価してくれる環境じゃないとつらいかなと。トレジャーデータなら、それができることは分かっていたので。
森田 どうしてトレジャーデータならできると?
古橋 トレジャーデータは「日本に限らず、世界の誰もが使えるサービスを作る」「データの活用が人々を幸せにする」という理念をもって米国で創業しましたが、肝心のデータを集める仕組みがなかった。Hadoopをサービスのコアにするのは決まっていたんですが、当時、Hadoopの技術者はすごく少なくて、しかもHadoopにデータを流すことすらできない状態だったんです。
僕は大学時代、分散システムを研究テーマにしていましたが、その中でもミドルウェアとか低レイヤの処理を扱うことが得意だったので、fluentdやMessagePackの開発で培った経験がここで生きると確信しました。
森田 トレジャーデータには、太田さん(トレジャーデータのCTO 太田一樹氏)の誘いで創業に参加したんですよね。
古橋 そうです。太田との出会いも大きかったですね。彼は「生まれながらのCTO」という言葉がぴったりな人で、多分、バイト時代からCTO以外の仕事をやったことがないんじゃないですかね(笑)。エンジニアの気持ちをよく理解して、スタッフに出す指示もすごく的確です。そして、お客さんとの会話もそつなくこなせるし、けっこう強気の交渉もできる。
実は僕、お客さんとはなかなか言葉が通じないんですが、僕らのような生粋のエンジニアとお客さんの間の橋渡しをしてくれる存在が太田なんです。そういう意味で、トレジャーデータはうまく役割分担ができているといえますね。
森田 トレジャーデータが順調に業績を伸ばしているニュースを聞いて、うれしい限りですが、技術者が足りなくてハイアリングに力を入れているというウワサも聞きますが。
古橋 それは本当です。米国/日本法人の両方で人材を募集しています。米国で仕事をしていて思うんですが、日本人のITエンジニアが海外のITエンジニアに比べて技術力で劣るということはまったくありません。むしろ日本人エンジニアは本当に優秀だと思うことの方が多い。ITエンジニアとしてインプットしている知識量に違いはないと思っています。
米国との違いはむしろお客さんの違いですね。例えば日本のお客さんは、まずFace to Faceを望むというか、直接会うことを大切にします。一方、米国だと一度も会うことなく、メールや電話で商談が成立するケースも少なくありません。そういった商習慣の違いを考慮して、日本法人は東京・丸の内にオフィスを構えていますが、ITエンジニアとしてのマインドは、どこにいても変わらないものだと思っています。
森田 なるほど。最後に古橋さんが目指すところを聞かせてもらえますか。トレジャーデータが目指すゴールと、いちエンジニアとして目指す道、それぞれ教えてもらえれば。
古橋 トレジャーデータが作った仕組み、つまりビッグデータを収集して保存し、クエリを掛けるという一連の処理を高速に、かつ安価にできるようにしたことは大きな価値があったと自負しています。誰もが触れるビッグデータプラットフォームなんて、世界中のどこにもはなかったんですから。
でも、ビッグデータが世界に行き渡るようになるのは、これからです。これからは世界中のデータがTreasure Data Platformやfluentdに集まるようなシステムを作っていきたいですね。
個人的にはストレージのシステム構築に本格的に取り組みたいです。正直、ITエンジニアをハイアリングしているのも、Hadoopの運用とか、fluentdやMessagePackの管理など、僕の仕事を減らして、新しい分散ストレージに取り組ませてほしいという希望もあるんですよね(笑)。
私見ですが、ITエンジニアの極める道って、OS、言語、データベースの3つのどれかじゃないかなと。僕は、その最後の道、データベースを極めるために、これからも開発を続けていきたいと思います。
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