次に紹介するのは、組み込み・制御ソフトウェア開発のエンジニア、田島さん(仮名・34歳)です。
私が初めてお会いしたときには転職活動を開始してしばらくたっていましたが、残念ながら書類選考を1社も通過していませんでした。
田島さんは新卒でベンチャーのソフトハウスに入社し、開発エンジニアとしてキャリアをスタート。その後、個人事業主として4年間、ネットワークゲーム(ゲームアプリ、ゲームエンジン、UI表示ライブラリ、ゲームサーバ、LightWave用プラグイン)を開発しました。直近は組み込み・制御ソフトウェアの開発エンジニアとして、小規模のSIerで勤務していました。
今までの経験を生かして製品開発に携わっていきたい、また英語が堪能なのでグローバルでの業務も視野に入れていきたいと考え、メーカーへの転職を希望していました。一貫して組み込み・制御ソフトウェアの開発に携わってきた技術スキルに加え、コミュニケーション能力も高いので、転職活動開始当初は、容易に転職できると田島さんは思っていたそうです。
しかし製品開発ができる規模のメーカーは保守的な企業が多いため、個人事業主の期間が4年と長く、社歴が3社と年齢の割りに多い田島さんの経歴を見て、組織の中での協調性や定着性を懸念して不合格としていたのです。
そこで私は今までの反省を踏まえて応募企業を見直し、田島さんの転職のテーマである「製品開発」をキーワードに「メーカー系子会社」「地方メーカー」を選択肢に加えました。
これらの会社は転職希望者が少なく、転職回数などの細かい経歴よりもスキルや人物重視となる傾向があり、田島さんの希望である自社製品の組み込み・制御系のソフト開発に携われると考えたからです。
結果は大当たり。得意分野と指向が合致する企業12社に応募したところ、順調に選考をパスし5社から内定を獲得しました。そのうち2社に絞って内定後面談に進み、最終的に新潟の東証二部上場メーカーへ入社しました。
この会社は社員2千人ほどの自動車部品メーカーで、とある製品では国内シェアトップクラス、世界でも有数の企業です。希望の製品開発に携われるだけではなく、製品が海外でも展開されていることに魅力を感じたそうです。
また、将来的にプロジェクトマネージャとして期待されていることも決め手となりました。応募企業の範囲を広げたことで、製品開発の経験を積みながらプロジェクトマネージャを目指せる、希望どおりの環境を手に入れたのです。
今回は、希望を見直し選択肢を増やしたことで、希望をかなえる転職を果たしたエンジニア2人を紹介しました。
ひとりで転職活動をすると、視野が狭くなり可能性を狭めることがあります。また、転職は市場の動向や環境にも大きく左右されますが、情報を一人で収集するのはなかなか難しいものです。自分だけは分からないことは、お知り合いやキャリアコンサルタントに相談されることをお勧めします。
アデコ 木口衛
大手生命保険会社にて法人・個人への営業職として従事。その後、IT専門の人材サーチ会社にてITコンサルタントやSEを中心とした人材のキャリアコンサルタントを経験、現職に至る。これまで、IT業界を中心に3000人以上の転職支援を行った実績あり。
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