Windows Server 2003からの移行前にやっておくべきこと今から始めるWindows Server 2003移行のススメ(1)(1/2 ページ)

「2015年7月15日」にサポートが終了するWindows Server 2003。本連載では、現在稼働中のWindows Server 2003から、Windows Server 2012 R2への移行ポイントと手順を解説する。

» 2014年04月18日 18時00分 公開
[阿部直樹(Microsoft MVP for Hyper-V)エディフィストラーニング株式会社]

サポート終了まであと1年、それまでに何をすればよい?

 Windows Server 2003(とWindows Server 2003 R2)は「2015年7月15日」(日本時間)に延長サポートが終了し、以後、マイクロソフトからのサポートは提供されなくなる。しかし、多くの企業では、まだまだWindows Server 2003が現役で稼働しているのが現状だろう。そして、延長サポートの終了により、Windows Server 2003に代わるサーバーOSの導入を迫られているのではないだろうか。本連載ではWindows Server 2003で構築されたドメイン環境を、Windows Server 2012 R2へ移行する必要性や手法を解説していく。

製品のサポートライフサイクルを理解する

 マイクロソフトが提供する各種ソフトウェア製品は、同社の「サポートライフサイクルポリシー」に従ってサポートが提供される。サポートライフサイクルはコンシューマー用ソフトウェアとビジネス用ソフトウェアで条件が異なる。

 ビジネス用ソフトウェアでは製品の発売後、最低5年間のメインストリームサポートと、最低5年間の延長サポートの合計最低10年間のサポートが提供される。新機能の追加はメインストリームサポート期間中だけであり、延長サポート期間に入ると主に修正プログラムとセキュリティ更新プログラムの提供が継続される(表1)。

表1 表1 マイクロソフトの製品サポートフェーズで提供されるサポートの内容(クリックで拡大)

 延長サポートが終了すると、以降はセキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。これが、企業では大きな問題となる。サポート期間終了後に新たなセキュリティホールが見つかっても、それに対処できなくなるからだ。企業がこのようなリスクを負うことは、社会的な責任を考えると是が非でも避けなくてはならない。

 そのためには、現在稼働しているWindows Server 2003を、早い段階で別のサーバーOSに移行する必要ある。移行先の第1候補は、2014年現在、最新のサーバーOSであるWindows Server 2012 R2だ。しかし、企業の中には、最新のOSを好まないところもあるだろう。その理由として、問題が出尽くした感のある一世代前のOSであれば、何かトラブルが発生しても既に対処方法が確立されているから安心という話をよく聞く。確かにそうした一面もあるが、Windows Server 2012以降は「クラウドOS」と呼ばれ、最新のWindows Server 2012 R2ではエンタープライズ環境、仮想化環境向けの大幅な機能強化が魅力となる。

・参考:Windows Serverのサポートライフサイクル期間一覧(マイクロソフト プロダクト サポート ライフサイクル)

サーバーのスムーズな移行のための3ステップ

 サーバーOSを移行する際には、次のステップを踏むことでスムーズに作業を進めることができる。

[1]現状の把握

[2]検討と準備

[3]移行の実施

[1]現状の把握

 Windows Server 2003の移行作業に入る前に、まずは既存環境の現状を把握することから始める。Windows Server 2003サーバーの台数や実際に稼働しているサービス、アプリケーションの種類を調査し、洗い出す。また、運用方法も忘れずに確認しておこう。

 現状を把握したあとも、Windows Server 2003からWindows Server 2012 R2への移行に伴うさまざまな調査が必要だ。例えば、今稼働しているアプリケーションはそのまま移行できるかどうか、それともOSとともにバージョンアップが必要かどうかの調査だ。

[2]検討と準備

 具体的に移行を検討する際には、次の点を考慮する。

・移行先の決定

・移行方法の決定

 まず、移行先としてはオンプレミス環境とクラウド環境があるだろう。また、オンプレミスの場合でも、物理マシンと仮想マシンが考えられる。Windows Server 2003のリリース当時、仮想化はまだ一般的なソリューションではなかったこともあり、ほとんどは物理環境上に構築されているだろう。現在、仮想化環境上での運用は一般的になったこともあり、新たに仮想化基盤を構築すると同時に、Windows Server 2003を移行するといったパターンも考えられる。

 また、もう1つの選択肢として、クラウド環境への移行も検討する必要があるかもしれない。クラウド環境へ移行するメリットとしては、初期投資コストが低く抑えられることや、サーバーハードウェアのメンテナンス作業から解放されることが挙げられる。

 移行方法としては、新しいサーバーマシンを用意して新規にシステムを構築する。実は、Windows Server 2003からWindows Server 2012 R2への直接アップグレードはサポートされていないため、新規構築が一般的な方法となる。また、移行前にP2V(物理−仮想)変換を行って、仮想化環境への移行を先に行うことも検討してほしい。その理由は、仮想化環境であればスナップショット機能を活用することで、既存環境を維持しながら事前検証することも容易になるからだ。

 次に、全体設計を考える際には、さまざまな要素を盛り込む必要がある。例としては、次のようなものが挙げられる。

・移行手順

・リカバリ手順

・移行スケジュール

 ここでのポイントは、移行手順が決定したら、できる限り現実の環境に即した事前検証を行うことだ。事前検証で課題が出た場合は、その段階で解決策を見つけて対処することもできるだろうし、スムーズな移行につながるだろう。

 さらに、移行前には必ずシステムのバックアップを行い、いつでも以前の環境にロールバックできるように準備する。ここで注意したいのは、バックアップは普段の運用タスクで実施しているが、リカバリはやったことがないという管理者が意外に多いことだろう。この点においても事前に検証しておくことをお勧めしたい。バックアップ/リカバリを検証できないのであれば、最低でもリカバリ手順書だけは準備しておき、迷うことなく以前の状態に戻せる環境だけは整えておこう。

 大規模な環境では、土日の2日間だけでは全ての作業を完了することは難しいかもしれない。移行作業中に発生する想定外の事態にも対応できるように、余裕を持ったスケジュールが望ましいので予備日を含んだ日程を確保するとよいだろう。そうなると、3連休以上が移行作業スケジュールのターゲットになる(表2)。

表2 表2 Windows Server 2003サポート終了(2015年7月)までの連休の把握
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