企業、事業者に向けた仮想化環境専用ストレージを開発・販売する米ティントリの会長兼CEO、ケン・クライン氏に聞いた。同氏は「アップルがもしストレージの世界にいたら、ティントリのような製品をつくっていただろう」と話す。
ストレージの世界では、フラッシュが重要な話題の1つとなっている。だが、「フラッシュは今日の段階では差別化につながるが、明日の世界では陳腐化する」と米ティントリの会長兼CEO、ケン・クライン(Ken Klein)氏は話す。「フラッシュは必要だが、フラッシュを搭載したから十分だというわけではない。最大の価値はソフトウェア・インテリジェンスにある」。また、同氏は「アップルがもしストレージの世界にいたら、ティントリのような製品をつくっていただろう」と話す。
ティントリは、フラッシュとHDDを組み合わせたハイブリッド型のファイルストレージ「Tintri VMstore」を開発・販売している。仮想化環境に特化した製品で、VMware ESXiへの対応でスタートし、現在ではKVM、Hyper-Vへの対応を進めている。ハイパーバイザに依存しない形で、アプリケーションを理解する(application aware)というのが最大の特徴だ。
より正確に表現すれば、VMstoreは各仮想マシンのストレージI/O特性をモニターし、それぞれに対してQoSを自律的に適用できる。実際のI/O特性に従って動的にQoS制御を調整するという。そのため、従来型のストレージのように、アプリケーションや仮想マシンを運用開始する際に、LUNやボリュームをそれぞれについて事前設定する必要がない。Tintri VMstoreは1ボリュームで利用する。
ここからくる最大のメリットの1つは高い容量効率。「従来型のストレージは多様なI/Oの混在に対してオーバープロビジョニング(容量の過剰な割り当て)で対応するしかない。VMstoreのミッドレンジモデルでは、3Uサイズで1000の仮想マシンをサポートできる。同様な仕様で数百しかサポートできない従来ベンダの製品に比べると、コストパフォーマンスは10倍にもなる」(クライン氏)。
同じ理由から、各仮想マシンのストレージI/O特性が刻々と変化する場合でも正確にQoS制御を追随させることができる。また、仮想化環境で新規アプリケーションを投入する際に、ストレージ関連での設定がほとんど必要ない。さらに、データベースサーバと仮想デスクトップを1台のVMstore上に混在させることができる。
「ビジネスの原動力はアプリケーションであり、ストレージを含むインフラは、アプリケーションを支えるためだけに存在する。ストレージは静的なものであってはならない。アプリケーションの変化、要件の変化を常に学習し、適応しなければならない。そしてITスタッフはアプリケーションに集中できなければならない。頭の悪い、あるいは静的なストレージのためにLUNやボリュームに関する面倒な作業を行い、なおかつオーバープロビジョニングによって、あまりにも多くの金を掛ける状況に陥っている顧客は、これを理解してくれている。一度VMstoreを購入してくれた顧客は、その後の1年間のうちに平均で当初の購入規模の2.5倍を追加注文してくれている」。
VMstoreの主な用途は、デスクトップ仮想化、サーバ仮想化、そして開発/テスト、プライベートクラウド、クラウドサービスだという。「デスクトップ仮想化で使い始め、サーバ仮想化に利用を拡大した顧客も多い」。
前述のとおり、ティントリは複数ハイパーバイザへの対応を進めている。
「2014年末までには、ハイパーバイザから独立した製品になる。これにより、1台のVMstore上に、ESXi、KVM、Hyper-Vの仮想マシンを混在できるようになる。スナップショット、レプリケーション、クローンといった機能は、これらすべての仮想化環境に対してまったく同じように適用できることになる」。
ティントリは2015年の株式公開に向けた最後の資金調達を2014年2月に実施。これに基づいて、日本を含む世界市場における本格的な事業展開を始めている。
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