これらの処理能力や容量抑制能力の検証結果を受けて、パナソニックISではExadataの本番導入を決断した。
一方で、オプション機能をフル活用しているExadataを有効に利用するには、社内の技術力の向上が不可欠という課題もあったと片岡氏は話す。
「社内の技術力を底上げし、それぞれの技術についてこの人に聞けばよいというテクノロジリーダーを育てなければならないと考えています。パナソニックグループの創業者である松下幸之助は“任せて任さず”という言葉を遺しました。日常的な業務の中で少し上のレベルの業務を任せて、丸投げではなく、しっかりとフォローすることで底上げを進めていく必要があります。また、社内の情報だけで人員育成できるわけではないので、セミナーや説明会、他社との交流などで自分たちの技術レベルを見つめ直し、アンテナの感度を高くして活動してほしいとグループのメンバーには話しています。これらの社外活動を社内に戻って他のメンバーに説明し、フィードバックすることで、本人の理解度や知見が高まると思っています」。
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ここまでで、パナソニックIS社が抱えていた基幹業務DB環境の課題や検討の過程を紹介してきた。
多様な企業のノウハウが詰まっている基幹業務システムは、なかなか改革の手がつけにくい領域だということは多くの読者が実感しているところだろう。個々のシステムでパフォーマンスに課題があったとしても、償却期間ごとのサイクルでハードウェアの更新をしてパフォーマンスを担保する、といった検討で済ませるケースも少なくないのではないだろうか。
特に、パフォーマンスや信頼性が絶対に必要となる基幹系では、一般的な仮想化による統合・集約は考えにくい領域である。後編では、同社が実際にどのようなプロセスやルールを策定して、基幹業務システムのDB統合を実施したか、その軌跡を追う。
基幹業務システムを支えるバックエンド側インフラの構成は、止められない、パフォーマンスを落とさないことが大前提です。止められない、動かせないシステムであるからこそ、情報システムの共通化や標準化のプロセスから除外されてきた経緯があります。その理由の1つが、データベースシステムの技術的な制約です。 仮想化によるサーバー集約が一般的になってきた現在でも、重要情報を扱うシステムのデータベースだけは、物理サーバーで運用するのがある種の常識となっています。 しかし、技術革新が進んだ現在、クリティカルなデータベースシステムであっても、統合と集約、共通化の恩恵が受けられるようになってきました。本テーマサイトでは、基幹業務システムの改善とともに従来着手ができなかったデータベースの効率化や運用の標準化についての指針を、先行企業の事例を交えて示していきます。
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