ゲーム開発におけるクラウド活用の実例とAWS、SoftLayer、Azure〜第8回テックヒルズまとめリポート(1/3 ページ)

AWS、IBM SoftLayer、Microsoft Azureを使ってゲームシステムをどう構築・運用すべきなのか。導入・活用する上でのノウハウや注意点をまとめて紹介する。

» 2014年05月20日 18時00分 公開
[吉村哲樹@IT]

 2014年4月24日、六本木ヒルズ(東京・六本木)でクルーズ主催の勉強会「第8回テックヒルズ Games on the Cloud! 〜ゲームシステムをクラウドで〜」が開催された。

 テックヒルズは、主にゲームやソーシャルアプリの開発に携わる技術者向けに、そのときどきの“旬”の開発技術について、その分野のエキスパートを招いて紹介するイベント。8回目の今回はタイトルにもある通り、モバイルゲーム開発におけるクラウドサービスの活用をテーマに行われた。

 世界展開を視野に入れたモバイルゲームの世界では、世界規模でのアプリ配信や、ゲームインフラの運用などが技術課題として持ち上がっている。現在、こうした課題を解決するための有効な手段として採用が進んでいるのが、世界規模でサービスを展開するクラウドベンダーのインフラサービスだ。

 本イベントでは、そうしたクラウドベンダーの代表格であるAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure(以下、Azure)、IBM SoftLayer、Google Cloud Platform、それぞれの担当者が登壇し、自社サービスの優位性をアピールした。

 普段、世界規模で苛烈なシェア獲得合戦を繰り広げているこれらクラウドベンダーが一堂に会するとあってか、当初の定員を大きく上回る聴衆で会場は埋め尽くされた。本稿では、当日行われた各社のセッションの中から、AWS、IBM SoftLayer、Azure、そして主催者であるクルーズの講演の内容を紹介する。

クラウドの先駆者AWSが提供するゲームインフラへの3つの疑問点

 初めに登壇したのは、アマゾンデータサービスジャパン テクニカルエバンジェリストの堀内康弘氏。AWSのテクニカルエバンジェリストとして、日々講演やセミナーでAWSの啓蒙や普及活動に携わる同氏は、「ゲームインフラと解析基盤そのものの考え方を変えるAWS」と題した講演で、AWSの簡単な紹介と、ゲーム業界でよく見られるAWSの適用例を、Q&A形式で紹介した。

アマゾンデータサービスジャパン テクニカルエバンジェリスト 堀内康弘氏

 冒頭で同氏は、AWSの新サービスや新機能のリリース数が年々増え続けており、右肩上がりで順調に成長を続けている現状を紹介するとともに、フルマネージドNoSQLデータベースサービス「Amazon DynamoDB」や、Amazon EC2に新たに加わったメモリ最適型のインスタンスタイプ「R3」、また2014年4月1日から値下げとなった新価格体系について説明。AWSの近年の好調ぶりをアピールした後、今回のテーマである「ゲームインフラとしてのAWS」に話題を移した。

 「AWSを活用することで、インフラを自分で全て作る必要がなくなる。サービスを活用し、まるでブロックを組み立てるように簡単にインフラを構築・運用できるようになることで、インフラ周りの工数を大幅に削減し、結果として技術者はゲームそのものの開発に専念できるようになる」(堀内氏)

 ここで同氏は、ゲームインフラにクラウドを採用する際によく挙げられる疑問点に答える形で、「ゲームインフラとしてのAWS」の特徴を紹介した。

【1】AWSはゲーム用クラウドとして性能は大丈夫なのか?

 まず1つ目の疑問点は、「そもそも性能は大丈夫なの?」。ゲームはレイテンシにシビアなことが多く、よってクラウドを使うに当たっては往々にして性能が最大の懸念点として挙げられる。しかし堀内氏はこの点に関し、「まったく問題ない」と言い切る。

 その根拠として同氏は、AWSが常に最新のCPUを搭載した高性能なインスタンスを提供していることを挙げる。最新のインスタンスメニューでは、一般用途向けの「M3」、CPU性能に特化した「C3」、ストレージとI/O性能に特化した「I2」、メモリ最適化型の「R3」と、ワークロードの種別ごとに最適化した多種多様なインスタンスタイプが用意されており、かつその全てにおいて最新のCPUやSSDストレージ、高速ネットワークが使われているという。

多種多様なインスタンスタイプ(堀内氏の講演資料より引用)

 またディスクI/O性能に関しても、EBSのIOPSを指定する、あるいは専用SANを構築することで、あらかじめ十分なスループットを担保する仕組みが用意されている。

【2】AWSはスケールするのか?

 2つ目の疑問点は、「スケールするの?」。ゲームのインフラは、ユーザー数が読めないリリース当初は小さな規模で始めて、幸いにもヒットしてユーザー数が急増したら一気にキャパシティを拡張できるのが理想だ。つまり、柔軟なスケーラビリティを備える必要があるのだが、この点においてもAWSは極めて優れているという。

 堀内氏は、モバイルアプリのログを収集して分析する仕組みをAWS上で実装した事例を挙げ、いかにAWSのサービスがスケーラビリティに優れるかを示した。

 「DWHサービス『Amazon Redshift』を使えば、拡張性に優れるログ分析基盤を簡単に構築できる他、これにHadoop分析基盤『Amazon EMR』を組み合わせれば、さらに広範な種類のデータをまとめて管理・分析できるようになる。さらには、リアルタイムデータ処理サービス『Amazon Kinesis』と組み合わせれば、リアルタイムデータ分析まで簡単に実現できる」(堀内氏)

AWSで実装したリアルタイムヒートマップの例(堀内氏の講演資料より引用)

【3】AWSのサポート体制は?

 そして3つ目の疑問点が、「万が一のときどうすればいいの?」。堀内氏はこの疑問に対し、「日本語で365日のサポート体制を敷いているAWSのサポートをぜひ利用いただきたい!」と明快に答える。

ゲームインフラとしてのAWSの優位性

 最後に、AWS上で稼働する世界規模のゲームの事例を幾つか紹介した後、同氏はあらためてゲームインフラとしてのAWSの優位性について次のように述べる。

 「すでに数多くの世界規模のゲームがAWS上で稼働している実績がある。さらにAWSは、規模のメリットを生かしてサービス価格を年々引き下げている。この価格メリットを生かして、ゲーム開発者の方々にはよりゲームそのものの価値向上に注力してもらいたい」

AWSを利用しているゲームベンダーの例(堀内氏の講演資料より引用)
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