ゲーム開発におけるクラウド活用の実例とAWS、SoftLayer、Azure〜第8回テックヒルズまとめリポート(2/3 ページ)

» 2014年05月20日 18時00分 公開
[吉村哲樹@IT]

IBMがイチ押しする新世代クラウドサービス「SoftLayer」の正体とは?

 日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業 スマーター・クラウド事業 クラウド・マイスター 安田智有氏からは、「ゲーム基盤に選ばれているIBM SoftLayer」と題した講演で、IBMが2013年7月から提供を開始したクラウドサービス「SoftLayer」の紹介が行われた。

 SoftLayerはもともと、米SoftLayer社が提供していたパブリッククラウドサービスだが、2013年に同社がIBMに買収されたことに伴い、以降はIBMのサービスとして提供されている。

 海外ではSlideShareやTwitpicといった著名Webサービスで使われている他、数多くのゲームタイトルのインフラとして採用されるなど、かなりの数のユーザーを獲得している。その半面、日本ではこれまであまり知名度が高くなかったが、IBMによる買収とそれに伴う世界展開で、現在日本においても急速に注目度を高めつつある。

米国サンノゼ、シンガポール、東京間で3Dゲームを稼働させるデモ

 講演の冒頭、安田氏は米国サンノゼとシンガポールにあるSoftLayerのデータセンターに設置したゲームサーバーに手元のローカルPCからアクセスし、Unityで作成した簡単な3Dゲームを稼働させるデモを披露した。

米国サンノゼ、シンガポール、東京間で3Dゲームを稼働させるデモ

 「何千キロも離れた場所にあるサーバー上で計算・レンダリングした結果をクライアントに返しているが、この通り極めてスムーズに動く。このことから、たとえ海外リージョンであっても十分なパフォーマンスを発揮することが分かる」(安田氏)

仮想サーバーだけではなく、ベアメタルの物理サーバー環境を丸ごと利用できる

 同氏によれば、SoftLayerは既存クラウドベンダーのIaaSサービスとは一線を画す、極めてユニークなサービスを提供するのだという。その最大の特徴は、仮想サーバーだけではなく、ベアメタルの物理サーバー環境を丸ごと利用できる点にある。

 CPUやメモリ、SSDなどの多種多様な組み合わせの中から選んだ物理サーバー環境を、4時間以内に利用開始できる。課金は月額利用料が基本だが、特定の構成のサーバーに限っては、時間単位課金も可能になっている。

SoftLayerの活用パターンの例(安田氏の講演資料より引用)

データセンター間が高速専用線で結ばれていて無料で利用できる

日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業 スマーター・クラウド事業 クラウド・マイスター 安田智有氏

 また、サーバーが置かれるデータセンターは、現在世界中で13箇所に設置されているが、2014年中にはこれを40箇所にまで増設する予定で、その中には日本国内に設置するデータセンターも含まれているという。さらにSoftLayerの特徴的な点は、これらデータセンター間が高速専用線で結ばれており、ユーザーがこれを無料で利用できる点にある。

 安田氏によれば、これは世界展開するゲームのインフラにとって極めて有利だという。「ゲームは、なるべくユーザーと地理的に近い場所で動かしたり配信したりする方が有利。その点SoftLayerは、データセンター間を結ぶ専用線の網を使いこなすことで、世界各所のデータセンターに設置されたサーバーに、ゲームコンテンツを容易に展開できる」

 同氏は実際に、米国サンノゼのデータセンターで立てたゲームサーバー上で作成したイメージを、シンガポールのデータセンター上のサーバーにデプロイする手順を示し、世界を股に掛けたイメージ展開を、SoftLayerがいかに簡単かつ迅速に行えるかをアピールした。

DDoS対策が高く評価されている

 また海外の事例では、DDoS対策が高く評価された結果、SoftLayerが採用される例も多いという。

 「一般的なクラウドサービスでは、サーバーはDDoS攻撃に対してほぼ無防備なまま立ち上がってしまうため、攻撃を受けたり他所への攻撃の踏み台にされたりしてしまうケースが多い。しかしSoftLayerでは、事業者側がサーバーに対する攻撃を常に監視しているため、より安心して使えるクラウド環境を構築できる」

SoftLayer利用しているゲームの例(安田氏の講演資料より引用)

AzureはAWSに対するライバル心むき出しで「勝つまで止めない!」

 続いて、日本マイクロソフト テクニカルエバンジェリストマネジャー 砂金信一郎氏が登壇し、「Microsoft Azureでソーシャルゲームを作ってみた話」と題する講演を行った。

 同氏は冒頭、ようやく念願の「日本国内のデータセンター」が開設されたことを紹介し、「ゲームではレイテンシを低く抑えることが重要だが、Azureの国内データセンターは、既に高い実績のある大手データセンター事業者のコロケーションなので、高品質・低レイテンシのサービスを提供できる」と、ゲーム業界における日本リージョン開設のインパクトを強調する。

日本マイクロソフト テクニカルエバンジェリストマネジャー 砂金信一郎氏

 また同氏は、Azureのサービス内容について、「おおむねAWSと同じだが、細かいところでは違いがある」と説明。と同時に、「先行者であるAWSの方が、現時点では機能が充実している点が多々あるのも確か。それに対して、『後出しジャンケン大好き』のマイクロソフトが、一生懸命追いかけて機能を強化しているのが現状だ。

 しかし、かつて表計算ソフトの分野で『Lotus 1-2-3には絶対歯が立たない』といわれていたExcelが、いまや市場を席巻しているのと同じように、Azureも勝つまでは決して投資を止めない。もともとAzureの総責任者だったサトヤ・ナデルが新CEOに就任したことからも、この方針はマイクロソフト全体としてのコミットメントだ」とも述べ、AWSに対するライバル心を隠そうとしない。

 また、サービス提供価格に関しても、マイクロソフトでは「AWSが下げれば、うちも下げる」という方針を打ち出しており、「弊社の上層部は、クラウドビジネスに関しては泥試合を宣言した!」(砂金氏)とのこと。

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