今後、パナソニックISでは、Oracle EBS用のDBとしてExadataを増強し、現在の2台の統合DB基盤とRAC化することでストレージ使用効率とI/Oを強化する予定だ。
この移行検討時の検証で特筆すべきは、製造業系では特に問題となりやすい生産実行計画の処理は約5倍高速化する点だろう。生産実行計画は月次・週次・日次などで、需要動向や外部要因を考慮して都度調整が必要なもの。だが、1製品当たり多数の部品があり、それぞれの納期や製造リードタイム、物流状況など、分析対象となるデータが多岐にわたり、かつ大量になりやすいため、その分、データの処理時間も長くなりやすい領域だ。
一方で、事業部門担当者からすると、計画の見直しは、外的要因が変化する都度すぐに再検討できた方が、ムダや欠品といったリスクが発生しにくくなり、コスト面でも優位となることから、パフォーマンス向上が直接的に業績に寄与することもある。
これだけではない。同社は、パナソニックES社グループ全体の基幹業務システムDBを集約・運用効率化した実績と経験を基にしたソリューション外販にも注力するという。
「メーカーでもないSIerでもないわれわれが、ユーザーとして取り組んで来たことをお客さまと共有しソリューションを提供できることが最大の強み」と河田氏は話す。
今後は、パナソニックISが開発した統合DB基盤のノウハウを、同社の基幹システムIT基盤ソリューション「Nextructure」にも生かし、ExadataへのDB統合やアプリケーションとセットにしたプライベートクラウド構築の提案を行っていくという。
「われわれはこれまで、サーバーやストレージなどを中心にインフラソリューションを提供してきましたが、今後はミドルウェア以上のレイヤーまで提案の幅を広げていきたいと考えています。新たなお客さまにわれわれ自身が使っている新たなデータベースソリューションを提案していくことで、基幹システムが抱えている課題を1つでも多く解決していきたいと考えています」(河田氏)
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前後編に分けて、多岐にわたる商品を扱うパナソニックES社の中で、同社がいま実施している基幹DBの統合と改善の様子を紹介してきた。グループ内での大規模な展開とそれに伴うナレッジの蓄積を強みに、業務効率化を推進しつつ、ナレッジそのもののビジネス展開を実現した同社の場合、システムの運用を受け持つ専業の企業である、という特長がある。
事業部門側が別会社であることは、通常であれば、こうした大規模な基幹業務システム標準化や共通化にとって障壁となるケースも少なくないが、同社の場合、運用側が効率化を目指しただけでなく、事業部門側もアプリケーション改修などのムダを削減したいという意思が強かったという。経営環境変化の速さを受けて、個別のアプリケーションに対する改修案件が増え、納期も短縮化している今、「改修作業も、業務サイクルや市場動向の移り変わりの早さに併せてスピードアップしなければならない」――そうした状況を相互に理解・共有していた故の成功事例といえよう。
基幹業務システムを支えるバックエンド側インフラの構成は、止められない、パフォーマンスを落とさないことが大前提です。止められない、動かせないシステムであるからこそ、情報システムの共通化や標準化のプロセスから除外されてきた経緯があります。その理由の1つが、データベースシステムの技術的な制約です。 仮想化によるサーバー集約が一般的になってきた現在でも、重要情報を扱うシステムのデータベースだけは、物理サーバーで運用するのがある種の常識となっています。 しかし、技術革新が進んだ現在、クリティカルなデータベースシステムであっても、統合と集約、共通化の恩恵が受けられるようになってきました。本テーマサイトでは、基幹業務システムの改善とともに従来着手ができなかったデータベースの効率化や運用の標準化についての指針を、先行企業の事例を交えて示していきます。
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