富士通研究所は判別が困難なほど振れ幅が激しい時系列データでも、高精度解析を可能とするDeep Learning技術を開発した。
富士通研究所は2016年2月16日、人による判別が困難なほど振れ幅が激しい時系列データでも、高精度解析を可能とするDeep Learning技術を開発したと発表した。最先端の数学を活用し、時系列データから「幾何的な特徴」を抽出することで解析を可能にしたとしている。
同研究所がUC Irvine Machine Learning Repositoryのベンチマークテストで検証したところ、約85%の精度が得られたとしており、既存の技術に比べて約25%増の精度向上に相当するという。また、脳波の時系列データを使った状態推定では、約77%の精度が得られたとしている。既存のDeep Learning技術は、画像や音声では高い認識精度が得られているものの、IoT(Internet of Things)機器などから取得するような振れ幅の激しい時系列データを高い精度で自動分類することは困難だった。
開発した技術は、次のような手順で学習し、時系列データを分類する。
(1)カオス理論に基づいて時系列データを図形化 センサーから収集したデータの時間変化をカオス理論を用いてグラフ化すると、それらのデータを収集した機器の物理的な動きに応じて、特徴ある軌跡を描くという。この軌跡を利用して、収集した時系列データを分類する。
(2)得られた軌跡の図形的特徴をトポロジカル(位相的)データ分析の手法を用いて数値化 トポロジカルデータ分析は、データを「ある空間内に配置された点の集合」と見なして、その集合の幾何的な情報を抽出するもの。ここでは、図形に含まれる穴の数や、大まかな形状を捉え、独自のベクトル表現に変換する。
(3)ベクトルデータを学習 新たに設計した「畳み込みニューラルネットワーク」を用いて、(2)で獲得したベクトルデータを学習する。
同研究所では、今回開発した技術によって、Deep Learningの適用可能データ範囲を時系列データに広げ、複雑なデータの分類も可能にしたことで、医療分野での診断や治療支援といった新たな分析が可能になるとしている。
この技術は、富士通が持つAI技術を体系化した「Human Centric AI Zinrai」の中にも取り込んでいく予定。今後、さらに分析精度を高め、2016年度中の実用化を目指すという。
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