画像や映像認識技術などに強みを持つNECが人工知能に関する技術開発を強化。「時空間データ横断プロファイリング」技術を新規に発表した他、既存の技術を含めてソリューション体系を整備する。
NECは2015年11月11日、いままでの人工知能(Artificial Intelligence:AI)技術のやソリューション体系を再整理し、強化すると発表した。同時に、「時空間データ横断プロファイリング」技術を新規に開発したことも明らかにした。同技術は、複数の場所で撮影された映像データから、特定のパターン(時間・場所・動作)で出現する人物を高速に分類・検索する技術。顔認証技術などと組み合わせることでAIとして利用可能である。
AI技術は、「学習」「認識・理解」「予測・推論」「計画・最適化」といった人間の知的活動をコンピューターで実現するもの。NECは1980年代から関連技術の開発を進めてきており、その分野は、音声認識や画像・映像認識をはじめ、言語・意味理解、機械学習、予測・予兆検知、最適計画・制御など多岐にわたる。
NECでは、特にAI技術の中心となる「見える化」「制御・誘導」「分析」の領域で強みを持っているという。具体的には、見える化の領域では「顔認証技術」、夜間・悪天候・遠方など見えにくい映像を鮮明化する「学習型超解像技術」、群衆全体の動きの変化から混雑環境での異変を検知する「群衆行動解析技術」、工業製品・部品の個体を識別する「物体指紋認証技術」、構造物内部の劣化状態を映像から推定する「光学振動解析技術」などの独自開発技術だ。今回の発表では、これら既存の独自技術と新規開発技術を組み合わせ、ソリューション体系として整備する。
他に、制御・誘導の分野では、事前想定が困難な環境変化に適応して人や物を最適に配置・配分する「自律適応制御技術」や、異種混合学習技術と組み合わせて分析・予測に基づいた判断や計画を最適化する「予測型意思決定最適化技術」がある。予測型意思決定最適化技術を利用すると、人間が行っていた計画立案などを自動で判断可能になる。
さらに分析の分野では、各データの相関関係から人間には察知できない微かな兆しを発見する「インバリアント分析技術」、ビッグデータに混在する多数の規則性を発見する「異種混合学習技術」、二つの文が同じ意味を含むかどうかを判定する「テキスト含意認識技術」、ディープラーニングによりビッグデータの傾向を学習する「RAPID機械学習技術」、顔認証技術などと組み合わせて大量の映像から特定の出現パターンにあった対象を高速に検出する「時空間データ横断プロファイリング」がある。
同日発表した時空間データ横断プロファイリングは、大量の映像データから顔の「類似度」を基にグループ化し、特定の出現パターンに合致した対象を発見する技術。
顔が類似しており同一人物と見なせる出現パターンを分類し、出現時間や場所、回数などで検索できる。例えば、カメラ映像中の「同じ場所で頻繁に出現する人物」や「複数の場所に現れた人物」を発見し、防犯や犯罪捜査など、従来人手では困難だった解析を可能とする。実際に、のべ24時間の防犯カメラ映像から得た100万件の顔データを解析したところ、同じ場所に長時間・頻繁に現れる人物を10秒で検索・抽出できたという。
今後は既存技術の強化と新規開発を加速し、これらの技術を取り入れた高度なソリューションを幅広い分野に展開していくという。例えば、安全な社会・まちづくり、インフラの安全監視、資源の需要予測・制御、企業の顧客サービス向上や業務効率化などに向けた各種ソリューションを拡充する。これに伴う体制強化として、研究・開発やコンサルティングなどに関わるAI関連要員を、2020年度までに約1000人に拡充する予定だ。
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