幻のWindows ApportalとGranular UX Controlの謎その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(66)(2/2 ページ)

» 2016年09月13日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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Windows 10には「ビジネス向けWindowsストア」が登場

 Windows Apportalの展開とアプリの更新方法として紹介されていた「Corporate App Store」ですが、本連載第12回ではMicrosoft Intuneの「会社のポータル(Company Portal)」のことだと予想しました。Microsoft Intuneの「会社のポータル」もその目的で使えたのでしょうが、Windows 10では「ビジネス向けWindowsストア(Windows Store for Business)」が利用可能です。

 Windows 10を利用する企業および教育機関向けに、ビジネス向けWindowsストアのサービスが始まっています。ビジネス向けWindowsストアを使用すると、アプリを組織の管理者アカウント(Azure ADの管理者など)で購入することができ、組織ユーザー(Azure ADのアカウントやAzure ADと同期されたオンプレミスのドメインアカウント)にプライベートストアを利用して展開できます(画面3)。現状、無料アプリ(インストール数は無制限)の購入と展開が可能ですが、有料アプリの提供については、今後、追加される予定のようです。

画面3 画面3 「ビジネス向けWindowsストア(Windows Store for Business)」を利用すると、ストアアプリに統合されたプライベートストアを通じて企業アプリを配布できる

 Windows 8で初めて登場したストアアプリですが、企業で導入するにはいろいろと課題がありました。最大の課題は「Microsoftアカウントが必要なこと」。アプリのインストール用にMicrosoftアカウントを用意して、複数のPCにアプリをインストールしていたところもあるでしょう。Windows 8のリリース時は5台でしたが、Windows 8.1のリリースに合わせて81台に拡大(Windows 8にも適用)されたので、そのような運用は結構多かったのではないかと思います。

 Windows 10では、1つのMicrosoftアカウントでアプリをインストール可能な台数は10台までに減少しました。その代わりといっては何ですが、ビジネス向けWindowsストアを利用可能になったことで、Microsoftアカウントを使用することなく、組織のアカウントで台数に制限なく(無料アプリは無制限、有料アプリは購入数)アプリを配布できるようになりました。

 また、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)からは、ストアアプリにビジネス向けWindowsストアのプライベートストアのみを表示できるポリシー設定が利用可能になりました(画面4)。このポリシー設定は、Windows 10 バージョン1511にも存在しますが、筆者が確認した限り、期待通りに適用されませんでした。

画面4 画面4 Windows 10 Anniversary Updateからは、ストアアプリにプライベートストアのみを表示させ、企業専用にすることができる

こんにちは、Granular UX Control。君はいずこに?

 Windows 10ではコンシューマー向けにさまざまな新機能が提供されていますが、企業ではコンシューマー向け機能の利用を制限したいというニーズがあるはずです。「スタート画面の制御」や「ビジネス向けWindowsストア」はUIやアプリについて、企業での制限を可能にするものです。

 Windows 10の企業向けエディションの機能を比較する以下のWebサイトには、2016年7月までWindows 10 Enterprise(およびEducation)限定で「きめ細やかで高度なUX制御(Advanced Granular UX Control)」あるいは「きめ細やかなUX制御(Granular UX Control)」という機能があるとされていました(画面5)。ただし、このページの内容は2016年8月になって大きく変わってしまいました。

画面5 画面5 「きめ細やかで高度なUX制御(Advanced Granular UX Control)」がどんな機能なのか現状、よく分からない(現在、このサイトは別の内容になっている)

 実は、この機能に関しては情報が少なく、どんな機能なのか筆者にとっては謎です。Windows 10 EnterpriseのWebサイトでは次のように説明されています。

きめ細やかなUX制御

 粒度の細かいUX制御がIT機能を強化します。デバイス管理ポリシーを使用し、タスクワーカー用、販売店用、IoT機能などに分けて、Windowsデバイスのユーザーエクスペリエンスをカスタマイズまたはロックすることができます。

 しかし、マイクロソフトのWebサイトで「Granular UX Control」や「UX制御」といったキーワードで検索してみても、上記の説明以上の情報は現状得られません。筆者にとっては、Windows Apportalに続く、新たな謎です。

 上記の説明を読む限り、Enterprise(およびEducation)エディションだけの機能というには、何だかぼんやりしています。例えば、「割り当てられたアクセス(Assigned Access)」機能を利用すれば、特定のストアアプリだけを実行可能な端末を実現できますが、この機能はPro以上のエディションで利用できます。

 単に、UX(ユーザーエクスペリエンス)の詳細なカスタマイズの全てを利用できるのが、Windows 10 Enterprise(およびEducation)というだけなのかもしれません。例えば、ストアを無効にするポリシーや、全てのストアアプリを無効にするポリシーは、Windows 10 Enterprise(およびEducation)のみで利用可能なポリシーです(画面6)。

画面6 画面6 ポリシーによるストアおよびストアアプリの無効化は、Windows 10 Enterprise(およびEducation)エディション限定の機能

 あるいは、Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607)でも未実装の制御機能がまだあるのかもしれません。

 正解はどちらなのでしょうか。どちらも不正解かもしれません。機能アップグレードで新機能が追加されるWindows 10は、その辺がはっきりしないことがありますし、途中で仕様が変わったりすることにも留意が必要です。例えば、Windows 10の「エンタープライズデータ保護(Enterprise Data Protection:EDP)」機能に期待して、 いち早く導入したいと考えている企業はあるのではないでしょうか。この機能は、Windows 10 Anniversary Updateでようやく実装されました。しかも、名称は「Windows Information Protection(WIP)」に変更されています。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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