みずほフィナンシャルグループは、FinTechビジネスの立ち上げに本腰を入れて取り組んでおり、そこで重要なカギを握っているのが金融APIだという。では、どのようなAPIエコシステムを形成しようとしているのか。「API Meetup Tokyo #17」の講演模様からまとめてお伝えしよう。
Web APIに携わる開発・企画担当者向けのオープンな勉強会「API Meetup Tokyo #17 〜年末スペシャル〜」が2016年12月9日に開催された。今回の勉強会では、Web APIの適用事例として、みずほフィナンシャルグループのWeb API担当者をスペシャルゲストに迎え、「みずほFinTechのAPIエコシステム」をテーマにした講演が行われた。本稿では、この講演の内容についてレポートする。
みずほフィナンシャルグループでは、新中期経営計画(2016〜2018年度)において、目指すべき姿として“総合金融コンサルティンググループ”を掲げ、5つの基本方針と10の戦略軸を設定している。その中で、基本方針の1つに「金融イノベーションへの積極的取り組み」、戦略軸の1つに「FinTechへの対応」が組み込まれ、FinTechビジネスの立ち上げに本腰を入れて取り組んでいる。
現在、みずほフィナンシャルグループにFinTech専任組織である「インキュベーションPT」を設置しており、グループ全体では兼任者も含めて約60人のスタッフがFinTech関連ビジネスに携わっているという。
同社がFinTechに積極的に取り組む背景について、みずほフィナンシャルグループ インキュベーションPTの工藤麻貴氏は、「FinTechには大きく2つの効果が期待できると考えている。1つが新規ビジネスの創出だ。資産管理/運用助言、金融情報、レンディングなどの事業領域において新たなビジネスを生み出し、収益拡大につなげることができる。もう1つが業務の高度化だ。FinTechを活用してコールセンターやシンジケートローン、店頭対応などの業務を高度化・効率化することで、大幅なコスト削減が期待できる」と述べている。
そして、こうしたFinTechビジネスを具現化する上で、重要なカギを握っているのが金融APIであるという。「金融業界は、ITによる技術革新が起こるたびに、市場環境が劇的に変化してきた。従来は銀行窓口でしか取引できなかったものが、技術革新によってATM、インターネットバンキング、モバイルバンキングへと進化し、その次のフェーズとして金融APIが立ち上がりつつある」と話すのは、みずほフィナンシャルグループ インキュベーションPTの大久保光伸氏。
「金融APIが本格化すれば、スマートホームやIoTデバイスとの連携によって、今まで以上に金融サービスが身近なものになり、新たな市場が創出されると期待している。一方で、そのためには、金融機関が積極的にAPIコミュニティーに参加し、事例共有や意見交換を行うなど、オープンな取り組みが必要になる」と、金融APIを取り巻く市場環境を説明した。
みずほフィナンシャルグループでは、すでにビッグデータ、AI、AR、GPS、ブロックチェーン、生体認証、音声認識、感情認識、SNS、チャット、ロボティクスの各分野でFinTechビジネスを推進しているが、この中でもAI、ビッグデータ、ブロックチェーンについては、個別に展開するだけではなく、金融APIを活用してそれぞれを組み合わせ、より利便性の高いサービスの実現を目指すとしている。
では、みずほフィナンシャルグループは、FinTechビジネスにおいて、どのようなAPIエコシステムを形成しようとしているのか。
みずほフィナンシャルグループ インキュベーションPTの小野田直人氏は、「APIエコシステムを形成するステークホルダーには、FinTech協会、FINOVATORS、金融庁、全銀協、政府認可のコンソーシアムなどが挙げられる。また、金融APIのビジネス領域としては、API公開で『B2B(Business to Business)』『B2C(Business to Consumer)』『C2C(Consumer to Consumer)』、API利用で『プラットフォーム』『ビッグデータ』など10の領域が考えられる。そして、このAPIエコシステムを支えるオープンイノベーション環境として、API評価環境とコワーキングスペースを提供する」とのビジョンを示す。
「コワーキングスペースについては、2017年2月から『FINOLAB』内にラボ施設を設置し、APIを用いたオープンイノベーションや東京金融シティ構想の実現、さらには社会的課題への貢献に向けた取り組みを進めていく予定」(小野田氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.