前述した手順2のストアドプロシージャのソースコードを調査し、(SQLを除いて)MySQLへ移行する場合に工数が発生する可能性のある4つの事項を評価していきます。
本例では、移行前の「Oracleストアドプロシージャ」と移行後の「MySQLストアドプロシージャ」は、構文などに以下の差異がありました。
PL/SQLは、カラムタイプとレコードタイプに以下の独自属性があります。
PL/SQL独自属性 | 特徴 |
---|---|
%TYPE | 構文:変数名 表名.列名%TYPE; テーブルの列の型と同じ型で変数が定義される。テーブルの型変更に、PL/SQLを変更しないで済むメリットがある。また、NOT NULL制約のある列でも、変数にNOT NULLは適用されないのでNULLの代入が可能である |
%ROWTYPE | 構文:変数名 表名%ROWTYPE; %ROWTYPEは表から取得したレコード全体を定義できる |
構文例(コメント) | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|
Oracle | wk_shain_id SHAIN.SHAIN_ID%TYPE; wk_koushin_date SHAIN.KOUSHIN_ID%TYPE; |
422 |
MySQL | DECLARE SHAIN_ID DECIMAL(11); DECLARE KOUSHIN_DATE DATETIME; 代替関数なし。このため、個々のテーブルカラムのデータ型を参照し、対応する変数分宣言する必要がある |
移行コストは 「中程度」 |
個々の変数の修正は容易ですが修正箇所が多いため、移行コストは「中程度」となります。
構文例(コメント) | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|
Oracle | v_shain SHAIN%ROWTYPE; | 53 |
MySQL | DECLARE SHAIN_ID DECIMAL(38); DECLARE SAKUSEI_DATE DATETIME; DECLARE KOUSHIN_DATE DATETIME; 代替関数なし。このため、個々のテーブルカラムのデータ型を参照し、テーブルに属するカラムを全て宣言する必要がある |
移行コストは 「中程度」 |
MySQLにはレコード型がないことから、変数定義の修正が複雑になります。このため、移行コストは同じく「中程度」となります。
OracleのPL/SQLは、Oracleデータ型とは別に独自のデータ型を使用してコーディングを行います。
前述した手順2でストアドプロシージャのソースコードでコーディングされているPL/SQLデータ型の使用状況を調べたところ、「CHAR型」「VARCHAR2型」「NUMBER型」「DATA型」「BOOLEAN型」が実装されていました。それぞれを個別に評価します。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | CHAR(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大32767バイト | 53 |
MySQL | CHAR(n) | (文字数) | 固定長文字列 最大255バイト | 移行コストは 「低」 |
MySQLへの移行においては「桁あふれ」に注意する必要はありますが、本システムで「CHAR(256)以上」の指定はありませんでした。このため、移行コストは「低」と評価されます。なおMySQLは「0バイト文字列を認識する」ので、カラムのNULL判断方法にも留意するようにします。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | VARCHAR2(n) | (バイト数|文字数) | 固定長文字列 最大32767バイト | 172 |
MySQL | VARCHAR(n) | (文字数) | 固定長文字列 最大65535バイト | 移行コストは 「低」 |
こちらは容易に移行できます。ただし、CHAR型と同様にMySQLは0バイト文字列を認識するので留意してください。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | NUMBER(p) | (精度) | 数値 精度(p):38桁 ※PL/SQLではNUMBER(p、s)を宣言できないため、使いたい場合には%TYPEまたは%ROWTYPEを使用する |
310 |
MySQL | DECIMAL(p,s) | (精度,位取り) | 数値 精度(p):65桁 位取り(s):0〜30桁(“p”より大きくはできない) |
移行コストは 「低」 |
こちらは容易に移行できます。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | DATE | 年月日・時分秒 | 西暦前4712年1月1日0時0分0秒〜西暦9999年12月31日23時59分59秒 | 191 |
MySQL | DATETIME | 年月日・時分秒+小数秒(最大6桁) | 西暦1000年1月1日0時0分0秒.000000〜西暦9999年12月31日23時59分59秒.999999 | 移行コストは 「低」 |
DATE型では、西暦1000年1月1日0時0分0秒より「前」の日付データが、ストアドプロシージャの処理中に格納されるシステムの場合に注意が必要です。本システムでは明らかに使われず、ソースコードも確認したところ格納される処理は存在しませんでした。そのため、移行コストは「低」と評価されます。
ちなみにPL/SQLのデータ型における「TIMESTAMP型」の場合も、少数点以下6桁秒までのデータならばMySQLのDATETIME型への移行が可能です。
データ型 | 単位 | 仕様 | 本システムでの個数/移行コスト評価 | |
---|---|---|---|---|
PL/SQL | BOOLEAN | ─ | TRUE、FALSE | 119 |
MySQL | BOOLEAN | ─ | TYNYINT(1)のシノニム -127〜128 |
移行コストは 「中程度」 |
MySQLのBOOLEAN型は、TYNYINT(1)のシノニムのため、論理判断の制御方法に注意する必要があります。移行コストは「中程度」と考えられます。
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