前回は、2020年の延長サポート終了後もWindows Server 2008/2008 R2を使い続けるリスクについて解説した。しかし、サーバOSの移行に当たっては、何を考慮し、何をすべきかなど、検討すべきポイントは多い。今回は、最新のサーバOS「Windows Server 2016」へスムーズに移行できるよう、OSの特徴とそれを生かせるような移行方法を解説する。
Windows Server 2008のサポート終了に備えよ
Windows Server 2008/2008 R2(以下、Windows Server 2008)の延長サポート終了(米国時間2020年1月14日)に対応するには、他のOSへの乗り換えが必要になる。その際、Linuxに乗り換えたり、Microsoft Azureなどのクラウドサービスに乗り換えたりすることも考えられる。しかし、サポート期限が迫っている現状では、今から異なるプラットフォームに乗り換えることは、テスト項目が必要以上に増えるだけでなく、リスクも大きい。そのため、ほとんどのケースでは、最新のサーバOSであるWindows Server 2016への乗り換えが現実的な選択肢となるだろう。
それでは、Windows Server 2016は、Windows Server 2008と比較してどのような違いがあるのか。まずは、移行先となるWindows Server 2016の特徴を確認しておこう。
Windows Serverの仮想化テクノロジー「Hyper-V」は、Windows Server 2008で初めて登場し、当時は大きな注目を浴びた。だが、仮想ディスクの上限が2TBまでであったり、コマンドベースでの管理が複雑であったりしたため、物理サーバと同じように利用するにはさまざまな制約があった。
しかし、その後の10年で機能面が大きく向上し、物理サーバと同じようなことがHyper-V上でも実行可能になった。Windows Server 2008ではHyper-Vの採用を諦めて、他の仮想化テクノロジーを利用したり、物理サーバを使い続けたりしていた企業でも、Windows Server 2016ではHyper-Vに移行できるようになったと思う。
以下の表1は、Windows Server 2012以降で追加された主なHyper-Vの機能だ。
Windows Server 2012で追加された主な機能 | Windows Server 2016で追加された主な機能 |
---|---|
Windows PowerShell用Hyper-Vモジュール | シールドされた仮想マシン |
SMB 3.0ファイル共有上の記憶域 | ネストされた仮想マシン |
64TBまでの仮想ディスクのサポート | コンテナ |
第2世代の仮想マシン | 運用チェックポイント |
動的メモリ | 別の資格情報によるアクセス |
Hyper-Vレプリカ | ホストリソース保護 |
仮想マシンのインポート | Windows PowerShellダイレクト |
リソースメータリング | クラスタのローリングアップグレード |
記憶域の移行 | ストレージQoS |
仮想ファイバーチャネル | ― |
仮想NUMA | ― |
SR-IOV | ― |
表1● Windows Server 2012以降で追加された主なHyper-Vの機能 |
Hyper-Vに関しては、Windows Server 2008と比較すると、ここでは紹介し切れないくらいに多くの機能拡張が行われている。詳細については、以下の記事などを参考にしてほしい。
Windows Server 2008では仮想化テクノロジーを利用するといえば、Hyper-Vのことを指していた。Windows Server 2016では、さまざまな仮想化テクノロジーを利用できるようになった。中でも最も特徴的なテクノロジーが「コンテナ」だ。
コンテナはサーバOSの仮想化テクノロジーの一種で、ゲストOSを稼働させるHyper-Vの仮想マシン(ハイパーバイザー型仮想化テクノロジー)とは異なり、ホストOSの中に独立した環境を作成してプロセスを直接実行するため、軽量なコンポーネントで仮想マシン内のアプリケーションを実行することが可能だ。Windows Server 2016では、このテクノロジーを標準機能として利用できる。
Windows Server 2012で登場した「データ重複除去」は、1つのドライブ内に同一コンテンツが含まれる場合、物理的に重複するコンテンツを保存しないようにすることで、効率よくディスクを利用できる機能だ。
データ重複除去では、ファイルの内容が全て一致していなくても、一部が重複していれば、その部分を重複して保存しないようになっている(図1)。ファイルサーバでは、共有フォルダのディスク容量が常に不安材料となるが、データ重複除去を活用することによって、ディスク空き容量が少なくなるスピードもある程度抑えることができるようになる。
Windows 10でも利用可能な「記憶域プール」は、サーバに物理的に接続されたストレージを1つに束ねて、新たな記憶域を作り出す機能だ。記憶域プールではRAIDを構成できるが、これまでWindows ServerでRAIDを構成する場合には“物理的に同一のディスク容量を持つストレージ”を用意する必要があった。記憶域プールでは、各ストレージの記憶域を抽象化してRAIDを構成するため、各ストレージの容量を意識する必要がない(図2)。
また、記憶域プールのテクノロジーは「フェールオーバークラスタ」の共有ディスクとして利用可能な「記憶域スペースダイレクト」にも応用されている。記憶域スペースダイレクトは、複数の物理ディスクを利用して、フェールオーバークラスタの共有ディスクを構成する機能だ。
フェールオーバークラスタ関連では、異なる拠点でフェールオーバークラスタを実装するために必要な要素が、Windows Server 2016で全てそろえられることも特筆すべき点だろう。
これまで、異なる拠点でフェールオーバークラスタを構成する場合には、クラスタで使用する共有ディスクに高速でストレージ間のレプリケーションができるハードウェアが必要だった。Windows Server 2016では「記憶域レプリカ」と呼ばれる機能により、ソフトウェアベースでストレージ間のレプリケーションを実現するため、特別なハードウェアを用意することなく、拠点間のフェールオーバークラスタを構成できる(図3)。
フェールオーバークラスタを実装するような構成はデータベースサーバでよく見られるが、データベースサーバにSQL Server 2008を利用している企業では、2019年7月にサポート終了を迎えるため、こちらもシステムの入れ替えを検討しなければならない。その際、既存の構成に対してSQL Serverだけをアップグレードするのではなく、記憶域レプリカと組み合わせた構成に更新することで、ハードウェアコストを大幅に削減できる。
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