記憶域スペースの新機能「記憶域スペースダイレクト」を理解する(前編)vNextに備えよ! 次期Windows Serverのココに注目(19)

Windows Server 2016では、Windows Serverの記憶域スペース(Storage Spaces)の機能に「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct)」という新機能が追加されます。この機能を使用すると、ごく普通のローカルディスクがクラスター向けの信頼性の高いストレージに変わります。

» 2015年07月07日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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いきなり「記憶域スペースダイレクト」を理解するのは難し過ぎ

 Windows Server 2016の新機能である「記憶域スペースダイレクト(Storage Spaces Direct)」を理解するためには、Windows Server 2012で初めて導入された「記憶域スペース(Storage Spaces)」と「スケールアウトファイルサーバー(Scale-Out File Server:SOFS)」、およびWindows Server 2008 R2のフェイルオーバークラスタリング機能で初めて導入された「クラスターの共有ボリューム(Cluster Shared Volume:CSV)」についてある程度の知識が必要です。

 これらの知識がない状態でいきなり記憶域スペースダイレクトを評価しようとしても、いったいどうなっているのか、何に使えるのか、何がうれしいのか、全く理解することはできないでしょう。今回、これらの前提知識を全て説明はしませんが、最低限“これだけは必要”と考える記憶域スペースについての概要から始めます。

「記憶域スペース」は標準的なディスクを束ねて効率的に利用するソフトウエア定義のストレージ

 Windows Server 2012から利用可能な記憶域スペースは、物理ディスクを束ねてプール化し、ディスクのリソースプール(記憶域プール:Storage Pool)から必要な領域を切り出して論理的なディスク(仮想ディスク:Virtual Disk)としてOSやアプリケーションに記憶域を提供する、“ソフトウエア定義のストレージ(Software Defined Storage)”機能です(図1)。

図1 図1 スタンドアロンサーバーにおける記憶域スペースのイメージ

 記憶域プールは、複数の物理ディスクから作成します。同じ記憶域プールにSAS(Serial Attached SCSI)、SATA(Serial ATA)、USBなど接続バスや容量が異なるディスクが存在していても大丈夫ですし、ハードディスクドライブ(HDD)とソリッドステートディスク(SSD)の混在も可能です(画面1)。

画面1 画面1 接続バスや容量、種類の異なる複数の物理ディスクを束ねて一つの記憶域プールを作成する

 仮想ディスクは、記憶域プールの領域を切り出した論理的なディスクであり、作成された仮想ディスクは、ローカルの物理ディスクと全く同じように扱うことができます。仮想ディスクを作成する際には、「シンプル(ストライピング)」「双方向ミラー」「3方向ミラー」「シングルパリティ」「デュアルパリティ」からレイアウトを選択してパフォーマンスと信頼性を構成することができ、固定またはシンプロビジョニングを選択できます(画面2)。

画面2 画面2 パリティまたはミラー構成で信頼性を追加したり、SSDを使用した記憶域階層によりパフォーマンスを最適化したりできる

 記憶域プールでSSDを利用できる場合は「ライトバックキャッシュ」機能が有効になり、書き込みパフォーマンスが向上します。また、高速なSSDと標準的なHDDの記憶域階層を構成して、頻繁にアクセスがあるデータの読み書きのパフォーマンスを向上させることができます。

 なお、デュアルパリティ、ライトバックキャッシュ、および記憶域階層は、Windows Server 2012 R2で追加された機能です。

 記憶域スペースの最大の特徴は高価なディスク装置を導入しなくても、コスト効率の良い標準的な物理ディスクを束ねることで、パフォーマンスが良く、信頼性が高く、拡張可能で、使用効率の良い記憶域を提供できることにあります。

 実は、記憶域スペースの機能のサブセットは、Windows 8以降にも標準搭載されており、複数のディスクを束ねて大容量化したり、ミラーやパリティを構成してデータを保護したりできるようになっています(画面3)。

画面3 画面3 記憶域スペースの機能のサブセットが、Windows 8以降に標準搭載されており、コントロールパネルの「記憶域」から構成できる

クラスター環境では標準的なディスクではなく、SAS共有ストレージが必須でした

 記憶域スペースは、フェイルオーバークラスターにおけるクラスターディスクとしても利用できます。ただし、クラスターディスクとして使用する場合は、標準的な物理ディスクは使用できず、クラスターに参加する全てのノードからアクセス可能な、SAS接続の共有ストレージ装置が必要になります。

 SAS以外のバスで接続される共有ストレージ装置(iSCSIやFibre Channelなど)はサポートされません。また、ディスクの数や容量に関しても、3台以上、4GB以上という要件があります。

 フェイルオーバークラスターで記憶域スペースを利用するには、クラスター化された記憶域スペース(Clustered Storage Spaces)を準備する必要があります(図2)。これは「フェイルオーバークラスターマネージャー」を使用して、GUIで作成することが可能です(画面4)。

図2 図2 フェイルオーバークラスターにおけるクラスター化された記憶域スペースのイメージ
画面4 画面4 「フェイルオーバークラスターマネージャーを使用したクラスター化された記憶域スペースの作成。このあと、仮想ディスクを作成し、クラスターの共有ボリュームとして構成する

 クラスター化された記憶域スペースを作成したら、そこから仮想ディスクを作成し、クラスターの共有ボリューム(CSV)として構成します。クラスターの共有ボリューム(CSV)は、クラスターに参加する全てのノードから「C:\ClusterStorage\Volume#(#は番号)」という共通のパスで同時アクセスが可能であり、スケールアウトファイルサーバーやHyper-Vホストクラスターのデータ格納域として利用できます。

 スケールアウトファイルサーバーは、クラスター化されたファイルサーバーの一種であり、主にアプリケーション用のSMB(Server Message Block)3.x共有を提供します。スケールアウトファイルサーバーはアクティブ/アクティブ構成のクラスターであり、スケールアウトファイルサーバーのSMB 3.x共有へのアクセスは、ノード間で自動的に負荷分散されます。また、ノードの障害時には別のアクティブなノードに自動的にフェイルオーバーされ、継続的にアクセスすることが可能です。

記憶域スペースダイレクトはローカルディスクをクラスターディスクに変える

 ここまで、Windows Server 2012 R2以前の記憶域スペースの機能をおさらいしました。記憶域スペースダイレクトは、簡単にいってしまえば「クラスターの各ノードのローカルディスクを使用して構成された、クラスター化された記憶域スペース」になります。次回は、本題のWindows Server 2016の記憶域スペースダイレクトについて説明します(図3)。

図3 図3 Windows Server 2016の記憶域スペースダイレクトのイメージ
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筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2015)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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