アジャイルなマーケティングチームを構築せよGartner Insights Pickup(57)

マーケティングでは、「アジャイル」がキーワードになっている。柔軟で機動力を備えたチームを組織し、マーケティングデータや分析ダッシュボードから素早く洞察を得る活動を進めるべきだ。

» 2018年04月20日 05時00分 公開
[Chris Pemberton, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 タニアはマーケティングチームに6カ月しか在籍しなかったが、分析のやり方が何か違うのは分かった。

 まず、誰もがマーケティングダッシュボードにアクセスしていて、そのためにアドホッククエリやレポートを簡単に実行できていた。マーケティングチームでタニアとコンビを組んだデータおよび分析担当バイスプレジデントのティムは、複雑なレポートを信じられないほど素早く実行し、そのおかげでタニアは、前の仕事のときよりもはるかに迅速に意思決定ができた。ティムとそのチームは、市場の急速な変化に伴って頻繁に変わるタニアのレポーティングニーズにも適応できた。タニアがティムに、こうしたスピードと柔軟性はどうやって実現されているのか尋ねたとき、ティムは一言で答えた。「アジャイル」と。

 マーケティングリーダーはアジャイルプラクティスを分析チームに適用し、迅速な意思決定を促進するとともに、顧客の好みの把握や収益を生む関係の維持、解約の抑制を必要とする経営幹部に、行動につながる洞察を素早く提供する力を強化している。

 「迅速に結果を出せる、柔軟で適応力の高い分野横断型のマーケティングアナリストチームを設計すべきだ。こうしたチームが自らの組織を律し、前進できるようにするとよい」と、Gartnerのマネージングバイスプレジデントを務めるクリスティ・ユーバンクス氏は語る。

 最高マーケティング責任者(CMO)は、マーケティング分析がビジネス成長に大きく貢献すると考えている。Gartnerの調査「Gartner CMO Spend Survey 2017-2018」によると、現在、マーケティング分析がマーケティング予算全体に占める割合は13のマーケティング機能の中で最も高く、CMOの62%は、2018年に分析関連の支出を増やすと回答している。

 だが、「タイムリーに方向転換できるプロジェクトベースのデータチーム」という新しいモデルにシフトするには内側から変わる必要がある。また、組織がチーム管理の新しいアプローチを受け入れることも必要になるが、このアプローチは、データから洞察を導き出すための従来の常識に反している。

柔軟で適応力の高いチームを設計し、スピードを追求

 アジャイルアプローチを採用したマーケティングチームやデータ分析チームは、柔軟で適応力が高く、プロセスの精度よりも、結果を出すスピードを優先する。こうした柔軟なチームが成功する主な条件として、以下の3つが挙げられる。

1.さまざまな分野に通じたゼネラリストで構成されている

 チームは、多様なデバイスやタッチポイントにまたがる顧客の行動を分析し、理解する必要がある。だが、この作業に必要な幅広い経験を持つスペシャリストはほとんどいない。マーケティングおよび分析チームには主に、多くの分析分野の経験を持ち、1つか2つの重要領域での専門知識やノウハウを深めることができるゼネラリストを置くべきだ。

2.自らを律し、自ら前進できる

 自らを律したデータおよび分析チームを構築しなければならない。協調性のある自律したチームメンバーは、経営陣が設定するスケジュールや優先順位に基づいて行動するが、リソースをどのように配分し、各自がどう動くのが最適かは自ら判断する。誰がスキルを提供し、プロジェクト結果に必要な役割を果たすかについては、チームの裁量に任せるようにする。個々のプロジェクトの性質に応じて、チームメンバー間で役割の交代を勧めるとよい。

3.適応力が高く、反復ができる

 Gartnerの顧客は、複雑なレポートを作成、提供するには、6週間以上かかると報告しているが、今日の市場環境では意思決定の材料をそこまで待てる組織はない。トレーニングによって、個々人が答えの導出や探索的分析に必要な情報に自力でアクセスできるようにすることで、チームとしての迅速な適応や反復を容易にする必要がある。専門性の高いリソースの投入や時間をかけた分析は、価値の高いプロジェクトでのみ行うようにする。

 “テストして学ぶ”文化では、素早い調整を通じて、何がうまくいき何がうまくいかないかを理解する。この文化を実現するとなると、マーケティングロードマップにおいて、適切なタイミングで複数回、分析と最適化を集中的に行うことになる。必要なときには、信頼できるサードパーティーの特定のリソースでコア分析チームを増強し、主要なスキルを迅速にそろえるようにする。必要に応じて、関連する社内リソースも部門横断的に利用する。

 「従来のチームの固定的で遅いサイロ化したプロセスから脱却し、コラボレーション、変化、透明性を包含するアジャイルアプローチを導入することが求められている」(ユーバンクス氏)

出典:Build an Agile Marketing Team(Smarter with Gartner)

筆者 Chris Pemberton

Writer and marketing strategist


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