Windows 10 バージョン1709で新しいサインインオプションが追加され、既定で有効になったことに気が付いたユーザーもいるでしょう。「更新または再起動の後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」のことです。では、2018年1月から2月にかけての品質更新でこれを「オフ」にしたときの動作が変わったことはご存じでしょうか。
先に指摘しておくと、今回の話題(Windows 10の仕様変更の話)は、Windows Updateで要求される再起動の話だと思っていると、訳が分からなくなるかもしれません。順を追って説明しますが、途中でWindows Updateとは切り離して考える必要があります。
さて、Windows 10 Fall Creators Update(バージョン1709)を利用しているユーザーで、サインイン前後に以前と異なる挙動に遭遇してポカンとしたことや、何だか気持ち悪い思いをしたことはないでしょうか。
具体的には、例えばコンピュータの起動時や再起動後に、サインイン画面からシャットダウンしようとしたら、まだ誰もサインインしていないのに使用中のユーザーの存在を示すメッセージが表示されたり、サインインするとシャットダウンや再起動前に使用していたアプリケーションの一部(ペイント、タスクマネージャー、レジストリエディターなど)が自動的に開いたりといった挙動です(画面1)。
これらの挙動は、Windows 10 バージョン1709の「設定」→「アカウント」→「サインインオプション」→「プライバシー」に追加された、「更新または再起動の後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」の設定が既定で「オン」になっていることの影響です(画面2)。このオプションは、ドメインに参加しているコンピュータでは利用できません(つまり、オフになります)。昨日リリースされたWindows 10 April 2018 Update(バージョン1803)では、「サインイン情報を使用してデバイスのセットアップを自動的に完了し、更新または再起動後にアプリを再び開くことができるようにします」という表現になっています。
Windows 10 Creators Update(バージョン1703)以前にも、これとよく似たオプションがありました(画面3)。「設定」→「更新とセキュリティ」→「詳細オプション」にある「更新後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」です(Windows 10 バージョン1703の場合)。これらのオプションはよく似ていますが、同じものではありません。「または再起動」が追加されているという違いはすぐに気が付くでしょう。
Windows 10 バージョン1703以前のオプションの方は、実は「Windows Automatic Restart Sign-On(ARSO)」という機能としてWindows 8.1から導入されたものです(後述するポリシーによって)。Windows Updateによって更新のために再起動が必要になり、システムが再起動を実行したとき、現在のサインイン情報を使用して自動的にサインインし、すぐにワークステーションをロック、その背後で更新のインストールを完了させるオプションです。
Windows 8/8.1ではどうなっていたか確認していませんが、Windows 10では再起動直前に実行中のアプリケーションがあり、そのアプリケーションが対応していれば、自動サインイン時に自動的に開始するような挙動をします。ただし、自動開始に対応しているアプリケーションは少ないため、気が付かないかもしれません。
再起動時にアプリケーションを自動開始するように登録する機能は、実は、Windows Vistaで導入されたものです。例えば、開発者向けには「RegisterApplicationRestart API」が提供され、ユーザーにはこれに対応した「shutdown」コマンドのオプションとして「/g」オプションが提供されました(shutdownコマンドのオプションについては後述します)。
話を戻すと、Windows 10 バージョン1703以前の「更新後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」と、Windows 10 バージョン1709からの「更新または再起動の後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」の違いは、設定場所の移動だけではありません。
Windows 10 バージョン1709では、システムによる再起動だけでなく、ユーザーの指示による通常のシャットダウンや再起動でも、自動サインイン(およびロック)や登録アプリケーションの自動開始が実行されるようになったのです。そのため、Windows Updateによる更新のための再起動ではないときにも、前出の画面1のような挙動になり、それを知らないと戸惑うことになるというわけです。
Windows 10 バージョン1709の新しい仕様は、完全にオフにすることができませんでした。どういうことかというと、「更新または再起動の後にサインイン情報を使ってデバイスのセットアップを自動的に完了します」をオフにしたとしても、自動サインイン(およびロック)が行われなくなるだけで、その後のユーザー自身によるサインインでは登録済みアプリケーションが自動開始します。このアプリケーションの自動開始をオフにするオプションが存在しなかったのです。
そして、このシャットダウンと再起動の新しい仕様は、2018年1月18日付リリースの「KB4073291(OSビルド16299.201)」でまた変更され、その後の累積的な品質更新プログラムに含まれるようになりました。さらに新しい仕様は、Windows 10 バージョン1803にも実装されています。この変更については、以下のブログでアナウンスされています。この投稿では、Windows 10 バージョン1803での仕様変更を、Windows 10 バージョン1709にバックポートしたと表現しています。
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