2018年の国内企業におけるIT支出のうち、事業/業務部による支出(LOB支出)が市場の約40%を占める4兆8793億円と予測。LOB支出は金融、製造、運輸、公共/公益、建設/土木産業を中心に、2021年まで年間平均成長率(CAGR)4%で成長すると分析する。
IDC Japanは2018年5月7日、国内IT市場におけるLOB(Line of Business:事業/業務)部門の支出について、産業分野別・企業規模別の動向分析結果を発表した。
同調査は、国内企業のIT支出について、支出元がIT部門(IT Funded)か、事業/業務部門(Business Funded)かの観点で実施したもの。事業/業務部門(LOB部門)によるIT支出動向については、17の産業分野別と4つの従業員規模別、さらに研究開発やマーケティングなどの12の職務機能別に分析している。
2018年のLOB部門による支出(LOB支出)は、全体の39.9%に当たる4兆8793億円で、IT部門による支出は60.1%の7兆3463億円が見込まれると分析。
IDCによると、国内IT市場全体に占めるLOB支出は約4割で推移し、増加傾向にあるという。
2016〜2021年の年間平均成長率(CAGR)は、LOB支出は4.0%で、IT部門の1.5%を上回ると予測している。
LOB部門によるIT投資が積極的に行われると見込まれる産業分野は、銀行、保険、組立製造、プロセス製造、運輸、公共/公益、建設/土木と分析。
この背景には、金融機関は業務効率化を目的にRPA(Robotic Process Automation)の本格的な活用が開始されていることや、FinTechサービスの本格展開、電力やガスの小売り自由化を受けた顧客向けサービスの拡充にITを活用する動きあるという。
製造、建設/土木分野では、研究開発部門の他、生産部門や建設/土木部門などの特定の産業に特化した部門で、IoT(Internet of Things)やコグニティブ/AI(人工知能)システム、ドローンを含めたロボティクス、ビッグデータ/アナリティクス、モビリティー、クラウドといった第3のプラットフォームの活用が、LOB部門主導、またはIT部門との協働プロジェクトとして進められるためとIDCでは分析している。
また、企業規模が大きくなるにつれ、LOB支出の成長率は徐々に高まる傾向にあり、大企業のCAGRは5.1%と高い成長率を予測。これは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが大企業を中心に進められていることも背景にあるとみている。
DX推進に関するユーザー調査では、自社のデジタル戦略やDXを推進するのは「自身の所属部署である」との回答が最も多かったのはIT部門だった。IDCでは、ITを活用した変革への意識が高いことがうかがえると分析。
「他の部門とともに、自分の部門が推進役を担う」との回答率が最も高かったのは、研究開発部門と管理部門で、3割前後の回答者が「他部門とともに推進役を担う」との意識を持つ結果になった。
研究開発部門では、新たな製品、サービス、ビジネスモデルを開発し、展開することを狙う変革の取り組みが考えられ、一方、人事部門やセキュリティ/リスク管理が含まれる管理部門では、組織の体制強化の領域での取り組みが挙げられるという。
IDCでは、ITサプライヤーは、事業部や業務部門の現場のIT活用レベルを見極め、DXのゴール設定やKPIの議論などをともに進める共創のアプローチを推進すべきと指摘。それによって、LOB部門における変革の意識が醸成され、全社的なDXの推進を加速させることができると説明する。
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