Windows 10 Creators Update(バージョン1703)から利用可能になった「Windows AutoPilot」。実は、本格的に採用するための周辺環境は十分に整っていません。ですが、導入に向けての評価は既に可能です。今回は、仮想マシンをセットアップ対象のWindows PCと想定して、Windows AutoPilotで何ができるのかをお見せします。
企業でWindows 10コンピュータを新規展開する新たな手段として、Windows 10 Creators Update(バージョン1703)から「Windows AutoPilot」と呼ばれる機能が利用可能になりました。この機能については、本連載の以下の回でも触れていますが、今回はもう少し詳しく見ていきます。
Windows AutoPilotの公式ドキュメントは、以下のURLで公開されています。Windows AutoPilotではこのドキュメントの概要に示されているように、カスタムイメージを企業内で展開して既存のクライアントをアップグレードしたり、ベアメタルPCに展開したりといった従来型のクライアント展開とは全く異なる、新しいアプローチが導入されています。
Windows AutoPilotは、Windowsセットアップの最終段階でエンドユーザーが自分の「資格情報」(後述しますがAzure ADで管理される組織のアカウント)を入力するだけで、Windows 10を組織内で利用可能にするための幾つかの設定を自動的に行ってくれるものです。
Windows AutoPilotが有効なシナリオの1つは、Windows 10のプリインストールPCをボリューム単位で購入し、初回起動時のセットアップの最終段階(言語やキーボードの確認から始まるOOBE(Out-Of-Box Experience)やMini-Setupウィザードと呼ばれる部分)でユーザーに資格情報を入力してもらうことで、組織用のコンピュータとして基本的なセットアップを完了させるというものです。
任意のアプリの自動インストールやグループポリシーによる管理といった構成は、Windows AutoPilotの機能には含まれません。これらに関しては、Windows AutoPilotでセットアップされた組織の環境に付随するサービス(Azure AD PremiumやMicrosoft Intune、Microsoft 365など)の機能が利用できます。
Windows AutoPilotは、Azure Active Directory(Azure AD)を中心としたクラウドベースの機能であり、利用には以下のサービスおよびクライアント環境が必要です。
最も重要な点は、OOBEセットアップが行われていない、新しいデバイスのハードウェア情報を事前に取得し、Windows AutoPilotを構成するためのサービスにアップロードしておく必要があることです。そのハードウェア情報は、OEMベンダーから取得することが想定されています。例えば、2018年4月時点では、Microsoft Surfaceの他、DellとLenovoがWindows AutoPilot対応パートナーとして発表されています(ただし日本市場での提供予定は不明)。
つまり、Windows AutoPilotを本番環境で利用できるかどうかは、導入予定のデバイスのOEMベンダーがWindows AutoPilotに対応し、日本国内でサービスを提供しているかどうかにかかっているということです。
なお、Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)リリース時点では、Hewlett-Packard、東芝、パナソニック、富士通も数カ月以内に対応予定であることが発表されています。最新情報は、Windows 10 バージョン1803の「What's New」ドキュメントで確認してください。
前述したWindows AutoPilotの公式ドキュメント内には、ハードウェア情報を含むCSVファイルを生成する「Get-WindowsAutoPilotInfo」スクリプトが公開されていますが、これはあくまでも評価用に提供されているサンプルです。なぜなら、Windows 10のOOBEセットアップが完了していなければ、このスクリプトを実行することができないからです。
しかし、Windows 10のOOBEセットアップが完了している場合は、Windows AutoPilotの対象にするための「システム準備ツール(Sysprep)」を実行して、再びそのデバイスのイメージを一般化する必要があります。Windows Pilotの本番環境でそのような操作が必要になるのは、全くばかげています。評価用のサンプルというのは、そういうことです。
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