パーティションを構成し、システムパーティションとWindowsパーティション(BIOSベースの場合)のボリュームを準備したら「WBADMIN」コマンドを使用して、バックアップが格納されているドライブにある復元対象のPCのバックアップ情報を調べます。回復対象のバージョン識別子を確認し、C:ドライブにマウントされていたボリュームのバックアップが存在することを確認します。
WBADMIN GET VERSIONS -BackupTarget:<バックアップ格納ドライブ:> -Machine:<コンピュータ名> WBADMIN GET ITEMS -Version:<バージョン識別子> -BackupTarget:<バックアップ格納ドライブ:> -Machine:<コンピュータ名>
次のコマンドラインを実行して、バックアップ作成時のC:ドライブのボリュームをWindowsパーティションの作業用ドライブ(W:\)に回復します(画面2)。
WBADMIN START RECOVERY -Version:<バージョン識別子> -ItemType:volume -Items:C: -BackupTarget:<バックアップ格納ドライブ:> -RecoveryTarget:W: -Machine:<コンピュータ名>
「ボリューム(C:)の回復操作が正常に完了しました。」と表示されれば、成功です。
なお、「イメージでシステムを回復」と同等の「WBADMIN START SYSRECOVERY」コマンドもありますが、今回の場合、恐らく「イメージでシステムを回復」と同じエラーで失敗したでしょう。
バックアップに含まれるC:ドライブの内容を、新しいWindowsパーティション(作業用のW:\)に回復したら、次のコマンドラインを実行して、システムパーティション(作業用のS:ドライブ)にブートファイル(Windowsブートマネージャーとブート構成データ)を作成します。ちなみに、UEFIベースのシステムの場合は「/f UEFI」を指定します。ここからは、前回のテクニックとほとんど同じです(同じPCへの回復なのでブート構成データのdetecthalの設定は不要です)。
BCDBOOT W:\Windows /l ja-jp /s S: /f BIOS
最後に、システムパーティションと同じボリュームにWindows REをインストールして、Windowsパーティションの回復ツールとして設定し、PCを再起動します(画面3)。
MKDIR W:\work\mount DISM /Mount-Image /ImageFile:<メディアのドライブ>:\Sources\Install.wim /Index:1 /Mountdir:W:\work\mount /ReadOnly MKDIR S:\Recovery\WindowsRE XCOPY /h W:\work\mount\Windows\System32\Recovery\Winre.wim S:\Recovery\WindowsRE W:\work\mount\Windows\System32\reagentc /setreimage /path S:\Recovery\WindowsRE /target W:\Windows BCDEDIT /store S:\boot\bcd /v W:\work\mount\Windows\System32\reagentc /enable /osguid {Windows 10インストールのGUID} W:\work\mount\Windows\System32\reagentc /info /target W:\Windows DISM /Unmount-Image /MountDir:W:\work\mount /Discard WPEUTIL reboot
前回説明したので、詳しい説明は省略します。UEFIベースのシステムの場合は、システムパーティションとは別の回復パーティション(作業用のR:\)に作成します。なお、筆者の問題のPCについては、前回の試みで必要なファイルはS:ドライブに存在していたので、「Install.wim」から「Winre.wim」を取り出してコピーする操作は省略することもできました。
前回も紹介しましたが、Windows REの展開についてさらに詳しく知りたい場合は、以下の公式ドキュメントが参考になります。
筆者は、MSDN(Microsoft Developer Network)サブスクリプションでダウンロード提供されているWindows 10のISOイメージを使用しましたが、Windows 10ダウンロードサイトの「Windows 10メディア作成ツール」を使用して作成したISOイメージやUSBメディアの場合、「Sources\Install.wim」ではなく、「Sources\Install.esd」の形式で提供されているはずです。その場合、Sources\Install.esdを「DISM」コマンドでマウントすることはできません。
まず、「DISM /Get-ImageInfo」または「DISM /Get-WimInfo」コマンドでInstall.esdに含まれるイメージのインデックス番号を確認し、「DISM /Export-Image」コマンドを次のように実行して、Install.esd内の目的のイメージをInstall.wimに変換します。回復対象のPCのディスク領域が少ない場合は、別のPCで事前にInstall.wimに変換しておき、USBメディア経由でPCに持ってくるのがよいでしょう(画面4)。
DISM /Get-ImageInfo /ImageFile:<メディアのドライブ:>\Sources\Install.esd DISM /Export-Image /SourceImageFile:<メディアのドライブ:>\Sources\Install.esd /SourceIndex:<インデックス番号> /DestinationImageFile:<パス>\Install.wim /Compress:max /CheckIntegrity
以上の作業の結果、バックアップに含まれるC:ボリュームの回復だけで、システム全体を以前のバージョンに回復することができました(画面5)。
このように、問題なく作成に成功したバックアップ(システムイメージ)さえあれば、バックアップ/回復ツールが誤動作したとしても何とかなるものです。今回の方法以外にも、前回(本連載第122回)説明したさまざまな方法があります。ただし、複雑なコマンドラインを操作するのは、大変かもしれません。決して、一般ユーザー向けの方法ではありませんので、もしチャレンジして失敗するようなことがあっても、質問などは受け付けません。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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