Gartner、2018〜2023年の戦略的IoTテクノロジートレンドのトップ10を発表AIから新しい無線ネットワーク技術まで

Gartnerは、「2018〜2023年にデジタルビジネスイノベーションをけん引する」と認定した戦略的IoTテクノロジートレンドのトップ10を発表した。

» 2018年11月09日 10時50分 公開
[@IT]

 Gartnerは2018年11月7日(米国時間)、「2018〜2023年にデジタルビジネスイノベーションをけん引する」と認定した戦略的IoTテクノロジートレンドのトップ10を発表した。

 「IoTは今後10年間、デジタルビジネスイノベーションの新たな機会をもたらし続けるだろう。その多くは、新しい、または改良された技術によって可能になる。革新的なIoTトレンドを把握したCIO(最高情報責任者)は、自社のビジネスでデジタルイノベーションをリードする機会を得るだろう」と、Gartnerのリサーチバイスプレジデントを務めるニック・ジョーンズ氏は述べている。

 またGartnerは、「CIOは、主要なIoTのトレンドや技術に対応するのに必要なスキルやパートナーを知っておかなければならない」としている。2023年には、CIOが責任を持つエンドポイントの数は、2018年の3倍以上に増えるからだ。

 Gartnerは、新しい収入源やビジネスモデル、エクスペリエンス、関係を実現する戦略的IoTテクノロジートレンドのトップ10として、以下を挙げている。

トレンド1:人工知能(AI)

 Gartnerは、ネットワークに接続されたモノが2019年には142億個、2021年には250億個に増加し、これらが膨大なデータを生成すると予想する。「データは、IoTの力を支える。また、データから意味を引き出す能力が、組織の長期的な成功を左右する。幅広いIoT情報(動画、静止画、音声、ネットワークトラフィックアクティビティー、センサーデータなど)にAIが適用されるようになる」(ジョーンズ氏)

 AIの技術的な状況は複雑であり、この状況は2023年まで続く。多くのITベンダーがAIに積極的に投資し、AIのさまざまなバリエーションが共存し、AIベースの新サービスが登場する。だが、こうした複雑さの中でも、さまざまなIoT状況でAIを使って良い成果を挙げることは可能だ。そのため、CIOは、自社のIoT戦略の下でAIを活用するためのツールとスキルを備えた組織を構築しなければならない。

トレンド2:社会的、法的、倫理的IoT

 IoTの成熟化と広範な普及に伴い、幅広い社会的、法的、倫理的な問題の重要性が増す。その中には、データのオーナーシップとデータからの推論、アルゴリズムの偏り、プライバシー、欧州連合(EU)のGDPR(一般データ保護規則)のような規制の順守などが含まれる。

 「IoTソリューションが成功するには、技術的な効果があるだけではなく、社会的に受け入れられることも必要になる。組織として学習を積むとともに、企業戦略をレビューする倫理委員会などの設置も考えなければならない。さらにCIOは、主要なアルゴリズムやAIシステムに偏りがないか、外部機関にレビューしてもらうことも考えるべきだ」(ジョーンズ氏)

トレンド3:インフォノミクス(情報経済)とデータブローキング(仲買)

 インフォノミクス(情報経済)の理論では、データを戦略的なビジネス資産と位置付ける。2023年にはIoTデータの売買が、多くのIoTシステムで一般的になる見通しだ。

 CIOは、データブローキング(仲買)に関連するリスクと機会を自組織に教育する必要がある。この分野で必要なITポリシーの設定や、社内へのアドバイスを行うためだ。

トレンド4:インテリジェントエッジからインテリジェントメッシュへのシフト

 IoT分野では、中央集権からクラウドへ、そしてエッジアーキテクチャへのシフトに続いて、動的なメッシュとして接続された幅広い“モノ”とサービスで構成される非構造化アーキテクチャへのシフトが進む。このメッシュアーキテクチャは、より柔軟性、インテリジェンス、応答性の高いIoTシステムを実現するが、それに伴って複雑さが増す場合も多い。

 CIOは、ITインフラ、スキル、ソーシングへのメッシュアーキテクチャの影響に備える必要がある。

トレンド5:IoTガバナンス

 IoTの普及拡大が続く中、IoTプロジェクトに関連する情報の生成、保存、使用、削除が適切に行われることを保証するガバナンスフレームワークがますます重要になる。CIOは、ガバナンスに関わる問題について組織内の啓発を行う必要があり、場合によってはスタッフや技術への投資も必要になる。

トレンド6:センサーイノベーション

 センサー市場は進化が続く。新しいセンサーでは、より多様な状況やイベントの検知が可能になり、現行のセンサーでは、価格の低下や、新しいアプリケーションに対応した新しい方法でのパッケージ化が進む。現在のセンサー技術から、より多くの情報を導き出す新しいアルゴリズムも登場する。

 CIOは、チームがセンサーイノベーションにアンテナを張り、新しい機会やビジネス革新をサポートするイノベーションを発掘するよう導く必要がある。

トレンド7:信頼できるハードウェアとOS

 Gartnerの調査によると、IoTシステムを展開している組織において最も重要な技術的な関心領域はセキュリティだ。2023年までに、より信頼性の高い安全なIoTシステムを実現するハードウェアとソフトウェアの組み合わせが導入されるようになる見通しだ。

 「われわれはCIOに、最高情報セキュリティ責任者と協力し、IoTデバイスと組み込みOSの購入に関わる決定については、適切なスタッフにレビューを担当させることを勧めている」(ジョーンズ氏)

トレンド8:新しいIoTユーザーエクスペリエンス

 IoTユーザーエクスペリエンス(UX)の進化の要因は、新しいセンサー、新しいアルゴリズム、新しいエクスペリエンスアーキテクチャおよびコンテキスト、社会性を意識したエクスペリエンスだ。画面とキーボードがないモノとのやりとりが増える中、UXデザイナーがより優れたUXを実現するには、新しい技術と新しい視点が必要だ。

トレンド9:シリコンチップイノベーション

 現在、ほとんどのエンドポイントIoTデバイスは、従来型のプロセッサチップを採用しており、低消費電力のArmアーキテクチャの人気が特に高い。

 だが、2023年までに新しい専用チップにより、ディープニューラルネットワーク(DNN)の実行に必要な消費電力が減少し、低電力のIoTエンドポイントで新しいエッジアーキテクチャと組み込みDNN機能が実現する見通しだ。そうなれば、センサーに統合されたデータアナリティクスや、低コストのバッテリー駆動デバイスに組み込まれた音声認識といった新機能がサポートされるようになる。

 CIOは、こうしたトレンドに目を配る必要がある。組み込みAIのような機能を実現するシリコンチップは、高度に革新的な製品やサービスの開発を可能にするからだ。

トレンド10:IoT向けの新しい無線ネットワーキング技術

 IoTネットワーキングでは、競合するさまざまな要件を両立させる必要がある。例えば、エンドポイントコスト、電力消費、帯域幅、レイテンシ、接続密度、運用コスト、サービス品質、通信距離といったものだ。全てを最適化する単一の技術はなく、新しいIoTネットワーキング技術が選択肢を広げ、柔軟性を高めることになる。

 現在有望な新技術として、5G、新世代の低地球軌道衛星、バックスキャッタネットワークがある。

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