Windows 10には、Linuxをサポートするための機能が次々に実装されています。中でも、Linux環境では当たり前に利用できるユーティリティーに関係する新機能は、WindowsとLinuxの混在環境をより扱いやすくしてくれます。オフィス(インフォメーション)ワーカーには影響ないかもしれませんが、アプリ開発者とってはうれしい機能です。
Hyper-V仮想マシンのゲストOSとして実行されるLinuxや、Linuxのさまざまなコマンドラインツール/ユーティリティーのネイティブなバイナリをWindows上で直接実行できる「Windows Subsystem for Linux(WSL)」、WindowsのDocker上で実行される「Linuxコンテナー(Linux Container on Windows:LCOW)」、Azure IaaS(Infrastructure as a Service)/他社クラウド上のLinux仮想マシンなど、アプリ開発者が中心になると思いますが、WindowsでLinuxやLinuxのシェル環境を利用する場面が増えてきました。
WSLは、Windows 10 バージョン1703(Creators Update)にβ版が搭載され、Windows 10 バージョン1709(Fall Creators Update)から正式版になりました。
LCOWは、Windows 10 バージョン1709以降で動作する「Docker for Windows(Docker CE)」と、半期チャネル(SAC)のWindows Server,version 1709以降で動作する「Moby master branch」のDockerデーモンのExperimental(実験的)機能として評価できます。LCOWは、Windows Server 2019で動作する「Docker Enterprise Edition(EE)for Windows Server」で将来、正式にサポートされる予定です。
これらの機能については、これ以上説明しません。今回は、これらの機能でWindowsとLinux両方の環境でやりとりする際に、便利に使えるコマンドツールと「メモ帳」の新機能を紹介します。
今回紹介するのは、2018年4月(日本では5月1日)にリリースされた「Windows 10 April 2018 Update(バージョン1803)」と、2018年10月にリリース(11月13日に再リリース)された「Windows 10 October 2018 Update(バージョン1809)」に搭載された機能です。ちょっとした新機能ですが、WindowsとLinuxの両方を扱うユーザーにとっては、とてもありがたいものです。
Windows 10 バージョン1803では、Linux環境で一般的に利用されている「OpenSSH」「tar」「cURL」のオープンソースのコマンドツールが標準搭載されました。OpenSSHは「C:\Windows\System32\OpenSSH」ディレクトリに存在し、SSHクライアント(ssh.exe)、公開鍵認証のための鍵(キー)生成コマンド(ssh-keygen.exeなど)、SFTPクライアント(sftp.exe)などを含みます。
tarは「C:\Windows\System32\tar.exe」に存在し、アーカイブファイル(.tarや.tgzなど)の作成と展開が可能です。cURLは「C:\Windows\System32\curl.exe」に存在し、さまざまなプロトコルを使用したデータ転送が可能です。
Windows 10にOpenSSHが標準搭載されたことで、Linuxのシェル環境にリモート接続するためにSSHクライアントを別途用意する必要がなくなりました(画面1)。これまで、Windows環境ではフリーウェアである「PuTTY」や「Tera Term」が利用されてきましたが、これらのツールはもう必要ありません(使い慣れているなら、もちろん使ってください)。
 画面1 Windows 10 バージョン1803からは、OpenSSH、tar、cURLが標準搭載されている。例えば、Azure上のLinux仮想マシンにOS標準の「ssh.exe」を使用してリモート接続できる
画面1 Windows 10 バージョン1803からは、OpenSSH、tar、cURLが標準搭載されている。例えば、Azure上のLinux仮想マシンにOS標準の「ssh.exe」を使用してリモート接続できるOpenSSHクライアントは、Windows 10 バージョン1803以降、Windows Server,version 1803以降、Windows Server 2019以降に標準でインストールされます。OpenSSHサーバについても、これらのOSではオプション機能として簡単にインストールできます。
なお、Windows 10 バージョン1709およびWindows Server,version 1709には、OpenSSHクライアント(β版)およびOpenSSHサーバ(β版)がオプション機能として提供されています。Windows 10 バージョン1703以前は、GutHubで公開されている「Win32-OpenSSH」を利用できます。
Windowsのテキストファイルは、「CR+LF」を改行コードとして使用します。Windowsは古くから標準のテキストエディタとして「メモ帳(Notepad.exe)」を搭載していますが、CR+LFのみを改行コードとして認識します。
一方、UNIX/LinuxなどWindows以外のOSでは、「LF」を改行コードとして使用するものが大多数です。そのため、オープンソースのプログラムコードのソースファイルや付随するテキストファイル、構成ファイルなどをWindowsでダウンロードし、メモ帳で開くと、可読性が極めて悪くなるという問題がありました(画面2)。それを知っている方なら、さまざまな改行コードに対応した、プログラムコード作成用の高機能なテキストエディタを利用しているでしょう。
 画面2 Windows 10 バージョン1803以前のメモ帳は、Windows標準の「CR+LF」の改行コードしか認識できないため、ダウンロードしたテキストファイルを開くと、こんな状況に見えることがある
画面2 Windows 10 バージョン1803以前のメモ帳は、Windows標準の「CR+LF」の改行コードしか認識できないため、ダウンロードしたテキストファイルを開くと、こんな状況に見えることがあるWindows 10 バージョン1809、Windows Server 2019、Windows Server,version 1809のメモ帳はこの点が改善され、CR+LF以外の改行コードを認識できるようになりました。つまり、LFのみ、CRのみの改行コードも正しく改行できます(画面3)。
既に高機能なテキストエディタを利用している人には“いまさら感”しかないかもしれません。しかし、簡単に好みのテキストエディタを持ち込めない(インストールが許可されていない)環境や、不特定多数のPCを扱う状況で作業する人にとっては、大きな改善点でしょう。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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