サプライチェーンのデジタル化を進めるための3つのステップGartner Insights Pickup(86)

サプライチェーンの変革は、自社のデジタル変革との整合性が取れていなければならない。サプライチェーンリーダーが、自社のデジタルビジョンをサプライチェーンの運用モデルに反映させるための3つの方法を紹介する。

» 2018年11月30日 05時00分 公開
[Rob van der Meulen, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 サプライチェーンのデジタル化が盛んに進められているが、その一方で混乱も生じている。Gartnerが2017年に世界318社のサプライチェーン部門を対象に行った調査では、回答者の75%が、デジタルプロジェクトのガバナンスに懸念を示した。また、企業のデジタルビジネスへの取り組みは急速な進化を続けているが、回答者の36%が、サプライチェーン部門のデジタルプロジェクトはそれらの取り組みと整合性が取れていないと答えた。

 「サプライチェーンリーダーは、サプライチェーンをデジタル化する取り組みの計画や、それらの取り組みと、自社とそのエコシステムで行われていることとの整合性をどのように確保するかの計画を既に立てていなければならない」と、Gartnerアナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントを務めるマイケル・バーケット氏は語る。

 「だが実際には、サプライチェーン部門が進めているデジタルプロジェクトはサイロ化していることがあまりに多い」(バーケット氏)

 しかし、こうした整合性を確保することは、どのように投資を行うべきかについての会社からの指示を待つことではない。「サプライチェーンの最適化や変革を最も効果的に実現する新技術を、プロアクティブに定義するとよい。そうした第一線の知見を提供して自社の幅広いデジタルビジネス戦略の策定に貢献し、その遂行の一翼を担うべきだ」(バーケット氏)

 バーケット氏は、その方法を3つのステップで説明する。

ステップ1:自社のデジタルビジョンとサプライチェーンの役割を確認する

 サイロから脱却し、全社的なデジタルビジネスビジョンを出発点としなければならない。それが行動への弾みになる。まずすべきことは、他のリーダーとともに、「自社が顧客に提供するデジタルエクスペリエンスをどのようなものにしたいか」についてのビジョンを定義し、その提供のために必要なサプライチェーン機能を特定することだ。

 この局面では、CEOが掲げる優先事項を理解することが重要だ。Gartnerが2018年に460人のCEOに対して行った調査は、これらのリーダーがこれまでと同様に、主に成長を重視している一方で、成長を実現するための新しいオペレーションモデルや、組織体制にも目を向けるようになっていることを示唆している。

 「単に効率を高めるのではなく、新たな収益源を生み出す可能性があるサプライチェーン技術を探し、その活用への全社的な支持と参加を取り付ける必要がある」(バーケット氏)

ステップ2:サプライチェーン運用モデルをデジタルビジョンに沿ったものにする

 「自社で行っているさまざまなデジタルプロジェクトが、1つのガバナンスプロセスで一元的に管理されている」と調査で答えたサプライチェーン部門は、全体の25%にとどまる。「一元的な管理が行われていなければ、サプライチェーンが会社の主要な優先事項を十分にサポートできる可能性は明らかに低い」とバーケット氏は指摘する。

 例えば、あるメーカーがビジネスの中で、顧客の機器が決して停止しないようにすることに優先的に取り組んでいるとする。現在ではデジタル技術の進歩により、資産をデジタルにモニタリングし、リアルタイムに近いタイミングでソリューションを提供することが可能になっている。これを実行することで、メーカーはサービス収入源を効果的に創出または強化できる。

 その実例として、ロールス・ロイスの「TotalCare」プログラム(航空機エンジンの可用性を保証)や、HPの「Instant Ink」プログラム(プリンタの継続稼働を保証)などが挙げられる。

 デジタルビジネスにおいてこうした革新的な取り組みを実現するには、サプライチェーンも変わらなければならない。単にスペア部品の注文に対応するのではなく、故障を事前に予測し、スペア部品の供給とサービスをパートナーエコシステム全体にわたって調整し、ダウンタイムを防ぐ必要がある。サプライチェーンのこうした変革を実現するデジタル技術投資には、次のようなものがある。

  • リアルタイムにパフォーマンスを測定するためのIoT投資
  • 故障を予測し、プロセスを自動化するためのアナリティクス投資
  • ユビキタスデータアクセスのためのモバイル投資
  • パートナーエコシステムとデータを共有するためのAPI投資

ステップ3:デジタル技術投資の優先順位付け

 先が読みにくい時代には、サプライチェーン部門は現在の利益を増やすために、既存オペレーションの改善に焦点を当て、将来の売り上げ拡大を支える投資を控える傾向がある。多くの場合、この保守的なアプローチでは、社内の幅広い優先順位に対応できない。

 自社が将来にわたって競争力を発揮できるようサポートするには、サプライチェーンリーダーは、オペレーションを効率化するだけでは足りない。未来のデジタルサプライチェーンを構築しなければならない。「それは製品だけでなく、顧客エクスペリエンスも提供するサプライチェーンだ。デジタルに接続されたパートナーのエコシステム全体と連携しながら、自ら決定を下すインテリジェントサプライチェーンを構築する必要がある」

出典:3 Steps to a Digital Supply Chain(Smarter with Gartner)

筆者 Rob van der Meulen

Manager, Public Relations


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

AI for エンジニアリング
「サプライチェーン攻撃」対策
1P情シスのための脆弱性管理/対策の現実解
OSSのサプライチェーン管理、取るべきアクションとは
Microsoft & Windows最前線2024
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。