データとアナリティクスの現状はどうなっているのか。どうすれば成功への障壁を克服できるのか。Gartnerのアナリストでシニア ディレクターのジョーゲン・ハイゼンバーグ氏が解説する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
データとアナリティクスはデジタルビジネスの原動力となっており、世界企業のこれからの生き残りに大きな役割を果たす。だが、データとアナリティクスの担当リーダーは、欧州連合(EU)の「General Data Protection Regulation」(GDPR:一般データ保護規則)のような新たな法規制への対応に加え、人工知能(AI)の役割や影響の評価、定義などの重要な課題を抱えている。
Gartnerのシニア ディレクターで、2018年10月にドイツのフランクフルトで開催されたGartner Data & Analytics Summit 2018のカンファレンスチェアを務めたジョーゲン・ハイゼンバーグ氏が、世界のデータとアナリティクスのリーダーが現在直面する機会と課題を概説する。
データとアナリティクスのリーダーはデータ主導のプログラムにより、現時点でビジネス上の成果に貢献しなければならない。その一方で、データとアナリティクスを担当する、将来に即した効果的な組織を構築する必要もある。これらの課題を達成するため、こうしたリーダーは自らの責任としてデータとアナリティクスの戦略を策定しなければならない。
こうした戦略に求められる重要な特徴は、信頼性、強力な機能、そして洞察の提供だ。データとアナリティクスのリーダーが戦略の策定を効率的に成功させるには、ブロックチェーンやAI、GDPRといった目下のトピックやトレンドに精通しなければならない。また、データを収益化する方法や、社内にデータ主導の文化を確立する方法も熟知している必要がある。
現状では期待は高いものの、社内顧客の成熟度は低い。特にEMEA(欧州、中東、アフリカ)の多くの企業では、データとアナリティクスの生み出す可能性が確認されており、期待が膨らんでいる。2018年の「Gartner CIOアジェンダ・サーベイ」によると、世界のCIOは、アナリティクスとビジネスインテリジェンスを自社のビジネス目標を達成する上で最も重要な技術と位置付けている。当然のことながら、データとアナリティクスのスキルは最も求められている能力だ。
背景としては、時代の変化に対応し競争力を発揮していこうとする企業は、デジタルビジネスの展開を急務と感じていることがある。こうしたデジタルトランスフォーメーションは、データとアナリティクスのリーダーがAIや機械学習、ディープラーニングのような新技術を活用することによってのみ実現できる、強力なデータおよびアナリティクスの能力によって支えられる。
しかし企業では、データとアナリティクスを担う適切な組織体制が整っていないことが多い。その場合、ビジネス価値の提供に焦点を当てた未来志向のデータとアナリティクス戦略を進めようとしても、それに伴う変更に対応するための適切なリソースやスキル、技術が欠けている。
例えば、AIのような技術が特定の定型業務を代替できれば、従業員はより複雑な問題に取り組める。だが、こうした組織のデータとアナリティクスのリーダーは、プロセスを自動化し、従業員が浮いた労力を未来志向のデジタルプロジェクトに割けるようにすることよりも、コンプライアンスのような後ろ向きの業務に多くの時間と費用を投入せざるを得ない。
また、本社のIT部門が、サポートしているさまざまなビジネス部門と連携が取れていないことも目につく。マーケティングや人事、営業のような部門が、データとアナリティクスに関する独自の取り組みを実施し始めている。実際、2020年までに、ビジネス部門内のデータとアナリティクスの専門家が増えるペースは、IT部門内の場合の3倍に達する見通しだ。
それでもIT部門は、データとアナリティクスに関連する全てのプロジェクトに関与しなければならない。ノウハウを適用し、全てのセキュリティとコンプライアンスのポリシーの順守を確保できるからだ。
現在、パラダイムの変化が起こっている。それは、これまでのデータとアナリティクスの管理のやり方からの転換だ。一方では、われわれはあり余るほどのデータや情報を使えるようになっており、他方では適切にデータを集め、分析し、管理する文化と人的能力が欠けている。これは、人がビジネスのために判断を下し、的確な意思決定を行う能力に影響する。
この状況では、CDO(最高データ責任者)のような上級経営幹部がデータとアナリティクスの取り組みを指揮し、データコンピテンシーおよびリテラシーの向上を促進しなければならない。社内の全従業員に、「データを使いこなしたい」という意欲を持たせることを目指すべきだ。
Gartnerの第3回CIOサーベイによると、データリテラシー不足は、CDOオフィスの成功を妨げる最大の障害の一つとなっている。社内全体でデータリテラシーを高めれば、従業員のデータ関連スキル不足や変革への消極姿勢というCDOの他の大きな課題の解決にも役立つ。
出典:Watch These Data and Analytics Challenges and Trends(Smarter with Gartner)
PR Manager Germany & Scandinavia at Gartner
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