Microsoft AzureのCloud Servicesで、Windows Server 2019ベースの「AzureゲストOSファミリー6」がリリースされました。ゲストOSファミリー5以前でデプロイしたサービスがある場合は、ゲストOSファミリー6へのテストとアップグレードを検討してください。
「Cloud Services(クラウドサービス)」は、Microsoft Azureの初期(当時はWindows Azure Platformと呼ばれていました)から提供されている、PaaS(Platform as a Service)の主要なフルマネージドサービスの一つです。
クラウドサービスには、フロントエンドを受け持つ「Webロール」とバックエンド処理を受け持つ「Workerロール」の2つがあり、これらのロールとSQLデータベースなどの他のサービスと連携して、スケーラブルなアプリケーションを構築することができます(以前は「VMロール」というものもありましたが、VMロールはAzure仮想マシンに置き換えられました)。
WebロールとWorkerロールは、Azure上に自動で作成、自動でスケールされるWindows仮想マシンにデプロイされることになります。この仮想マシンのゲストOSが「ゲストOSファミリー」であり、その最新バージョンが2019年1月24日(米国時間)にリリースされた「ゲストOSファミリー6」になります。
クラウドサービスにアプリケーションをデプロイする側は、仮想マシンのメンテナンスについて考慮する必要はありません。その点がIaaS(Infrastructure as a Service)のAzure仮想マシンと大きく異なるところです。
最新のゲストOSファミリー6は、2018年10月初めにリリースされ、11月中旬に再リリースされたWindows Server 2019をベースにしたもので、.NET Framework 3.5および4.7.2がインストールされています(画面1)。また、2019年1月23日リリースのAzure SDK for .NET 3.0を使用する必要があります。
Azureの既定では、WebロールおよびWorkerロールのゲストOSは、「サービス構成(.cscfg)」で指定したOSファミリー内でサポートされている最新のイメージに定期的に更新されます。
新しいOSファミリーへの更新を自動にすることも可能ですが、アプリケーションの互換性に影響する可能性もあります。そのため、テスト用デプロイを一時的にセットアップし、新しいゲストOSファミリーでテストして、その後、ゲストOSファミリーの更新を自動に切り替えることが推奨されています(画面2)。
Azureでは、最新の2つのゲストOSファミリーと、ゲストOSファミリー内で最新の2つの更新バージョンがサポートされます。新しいゲストOSファミリーがリリースされると、12カ月間の告知期間後、最も古いゲストOSファミリーがサポート対象外になります。
ただし、現在は、Windows Server 2008 R2 SP(Service Pack)1をベースにしたゲストOSファミリー2以上の5つのゲストOSファミリーが利用可能です。完全に提供が終了したのは、Windows Server 2008ベースのゲストOSファミリー1だけです。
ゲストOSファミリー1の提供終了は2013年6月1日に発表され、2014年9月2日に新しいサービスのデプロイを終了し、デプロイ済みのサービスに対する延長サポートは2014年11月3日に終了しました。次の提供終了の判断が行われれば、対象の古いゲストOSファミリーを使用しているデプロイに対してアップグレードを促す通知があるはずです。
クラウドサービスはAzureの初期から存在し、現在でもPaaSの中核サービスです。しかしながら、Azureポータル上で「Cloud Services(クラシック)」と表示されるように、Azureのレガシーな「クラシックデプロイモデル」のみをサポートし、新しい「リソースマネージャーデプロイモデル」をサポートしない唯一のサービスです。
Azureにはクラウドサービスの代替アーキテクチャとなる、より新しいPaaSサービスが複数あります。例えば、Webロールは「Azure App Service」(Web Appsなど)に、Workerロールは「Azure WebJobs」に置き換えできる可能性があります。
また、クラウドサービスの後継といえる「Service Fabric」もあります。これらのサービスでもサポートされている「Windowsコンテナー」や「Linuxコンテナー」のアーキテクチャやサービス(「Azure Container Instances」や「Azure Kubernetes Service」)もあります。
Service Fabricは、WindowsやLinuxの物理/仮想マシン上に「Service Fabricクラスター」(またはスタンドアロン)として導入でき、開発者はService Fabricの抽象化されたプラットフォームに対してサービスをデプロイできます。
Service Fabricは、AzureのIaaS環境、他社クラウドのIaaS環境、オンプレミスのWindows ServerやLinuxの物理/仮想化環境に構築することができます。また、フルマネージドサービスとして2018年7月に「Azure Service Fabric Mesh」のパブリックプレビューが開始されています。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2018/7/1)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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