クラウドを使い始めると、予想以上にデータコストがかかることが多い。データとアナリティクスの担当リーダーは、クラウド環境に財務的なガバナンス管理を導入しなければならない。具体的にはどうしたらいいのか。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
コスト削減と運用効率は常に、データ管理をクラウドに移行する大きな動機となってきた。無限のクラウド空間でデータの保存や処理を行えば、メンテナンス費がかさむと共に、キャパシティーが限られる高コストのオンプレミスデータセンターは不要になるというわけだ。
少なくとも、それが長い間の通説だった。だが、そんなにうまい話ではないことが、残念ながら明らかになってきている。Gartnerが2016年に行った調査では、回答者の過半数がクラウドを使用することで実際には運用費が増加したと答えた。
「アナリティクスやデータレイクなどのデータ集約型の環境にクラウドインフラを使用しているデータとアナリティクスのリーダーが、クラウド料金の月々の支払額に驚くことはよくある」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターを務めるアダム・ロンサール氏は語る。
「その主な原因は、オンプレミスデータセンターとクラウドが異なる経済原理に従って使われることにある。オンプレミスでは、企業はリソースの使用率を最大化することに考えが向く。キャパシティーとコストが固定されているからだ。逆に、クラウドでは、使用するリソースの量をできるだけ少なくしなければならない。一つ一つのコンピューティングアクションごとに課金されるからだ」(ロンサール氏)
クラウドを完全に避けて通るべきだということではない。クラウドには、オンプレミスにはないコスト最適化の手段がある。だが、それらを活用するには、データとアナリティクスのリーダーは、財務的ガバナンス管理の3つの施策をクラウド環境に適用する必要がある。
既にほとんどのクラウドサービスプロバイダー(CSP)は、アカウントレベルと個々のプロジェクトレベルの両方で、予算やリソースの割り当てる量を設定できる手段を提供している。ネイティブな予算管理および予測のサービスが用意されており、これらは既存のデータ管理ソリューションとさまざまなレベルで統合されている。データとアナリティクスのリーダーは各種の選択肢を把握し、さまざまなクラウド利用について予算を設定しなければならない。
「プロアクティブな予算管理は、クラウド予算を管理し、予測可能な支出を徹底するための第一歩だ。ただし、クラウドが備える管理サービスは、非常に基本的なものであることが多い。CSPは、自社にとって大きな価値を生むサービスに注力するからだ」(ロンサール氏)
予算設定の次にすべきことは、予算で設定したキャパシティーを超えたり、予定外の支出が急増したりした場合にどうするかを決定することだ。選択肢には「リソースオーナーに通知を送信する」ことや、「次の予算サイクルまでリソース使用量を大幅に制限する」「予算を超過させたリソースへのアクセスをブロックする」といった厳格な措置まで、さまざまなものがある。
多くのCSPは予算管理機能や予測機能だけでなく、リソースの割り当て、ひいてはリソースコストをきめ細かく管理できる機能もサービスの一環として提供している。コンピュートリソースとストレージリソースの分離がその一例だ。ユーザーは、これらのリソースを個別にスケールできれば、さまざまな方法でコストを節約できる。
CSPから提供される使用状況追跡や予算管理の統合機能の多くは、まだ発展途上であり、大幅なカスタマイズが必要な場合が多い。独立系ソフトウェアベンダー(ISV)は、クラウドベースの製品に財務的ガバナンス機能を直接組み込むことで、このようにCSPのサービスが比較的未成熟な分野でのチャンスをつかんでいる。
「一般的に、ISVはCSPと比べてコストの最適化や財務的ガバナンス管理の機能を提供することで、より直接的な利益を得られる。このことが、一部のISVのデータ管理製品に高度なツールが含まれる理由の一つともなっている」(ロンサール氏)
出典:Reduce Your Cloud Data Management Costs(Smarter with Gartner)
PR Manager Germany & Scandinavia at Gartner
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