アナリティクスの成熟度を次のレベルに引き上げるにはGartner Insights Pickup(108)

BIの成熟度が低い企業は、成熟度が高い企業の成功から学ぶことで、データとアナリティクスの能力を引き上げられる。具体的には、戦略、人材、ガバナンス、技術について適切な措置を講じることを考えるべきだ。

» 2019年05月17日 05時00分 公開
[Susan Moore, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 高度なアナリティクスや機械学習などのデータイノベーションが盛んにもてはやされているが、いまだに相当数の企業がスプレッドシートを使った分析を行ったり、データ品質について論じたりしている。

 Gartnerの最近の調査によると、回答企業の87.5%がデータとアナリティクスの成熟度が低く、「基本レベル」または「場当たり的」という分類カテゴリーに該当した。

 「基本レベル」は、ビジネスインテリジェンス(BI)機能として、主にスプレッドシートベースの分析や、個々人によるデータ抽出を利用している企業のカテゴリーを指す。「場当たり的」は、個々の事業部門が独自のデータとアナリティクスの取り組みを単発プロジェクトとして実施し、これらのプロジェクトに共通の枠組みがない企業のカテゴリーを指す。

 データとアナリティクスの成熟度が低い原因としては、限られた予算、ビジョンやスキルの不足、戦略的な計画策定と展開の経験の乏しさ、お粗末な、または老朽化したインフラが挙げられる。

 多くの場合、データとアナリティクスの成熟度が初期段階にある企業は、高度なアナリティクスを活用できるノウハウがない。こうした企業はデータ品質の低さや一貫性のないプロセス、稚拙な社内調整に対処するのに苦労している。

 「あなたの会社がデータ資産の価値を最大化したいなら、まずデータとアナリティクスの成熟度を高める必要があるかもしれない」と、Gartnerのシニアディレクターアナリストを務めるメロディ・チェン氏は語る。

 「成熟度が低いと、BIをモダナイズしようとしているリーダーにとって、重大な制約になる。だが、BIの成熟度が低い企業は、成熟度の高い企業の成功から学び、モダンBIの展開を迅速化して、データとアナリティクスの能力を次のレベルに引き上げられる」(チェン氏)

 チェン氏によると、企業は戦略、人材、ガバナンス、技術について適切な措置を講じることで、データとアナリティクスの能力を進化させ、より大きなビジネス成果につなげられる。

1.戦略

 明確なビジョンを持つことが、優れたデータとアナリティクス戦略を策定する出発点になる。ビジョンはこの文脈で、データとアナリティクスが実現できるビジネス価値として定義できる。ITリーダーやビジネスリーダーと調整して、総合的なBI戦略を構築するとよい。

 次に、短期的なロードマップを作成する。このロードマップでは、達成可能な目標や明確なマイルストーン、パフォーマンスの測定基準、モニタリングの枠組みを設定する。

2.人材

 戦略で掲げられている施策を実行するため、適切な組織体制で適切な職務が、適切なスキルを活用して行われるように、先を見越して人材を確保、育成、またはアウトソーシングする。IT部門でアナリティクス能力を持った人材が限られている場合は、ビジネス部門のリーダーやユーザーを含む仮想BIチームを組織し、柔軟な業務モデルの運用を図る。

3.ガバナンス

 BI成熟度が低い企業のほとんどは、正式なデータガバナンスプログラムを実施していない。ガバナンスは、「ゲームのルール」だと考えるべきだ。企業はこのルールによって、デジタル環境における機会とリスクのバランスを取ることができる。

 そのためには、まず自社の情報資産を全て洗い出し、それらがどこにあるか、誰が使用するかを把握する。次に、データを扱うための枠組みを構築し、社内で合意を取り付ける。

4.技術

 成熟度の低い企業が使用するBIプラットフォームは、従来型で、レポート機能が中心だったり、ERPシステムに組み込まれていたりするなど、限られた使い方に対応した単なるレポートツールである場合が多い。アナリティクスの成熟度を高めるには、モダンアナリティクス技術を導入して、現在のインフラを拡張した統合型アナリティクスプラットフォームを構築する必要がある。BIリソースが限られていて、アナリティクス人材が足りない企業は、迅速に状況改善に着手できるように、自社の要件と文化に最適なパッケージアプリケーションの導入を検討すべきだ。

出典:Take Your Analytics Maturity to the Next Level(Smarter with Gartner)

筆者 Susan Moore

Director, Public Relations


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