CIOは、ITコスト最適化をどう進めるべきかGartner Insights Pickup(116)

「IT予算の削減」は、あらゆる企業のIT部門にとって、避けられない命題になっている。CIOは、CEOやステークホルダーに対する説得力を高めるために、率先してITコストの最適化を進める文化を確立しなければならない。

» 2019年07月12日 05時00分 公開
[Laurence Goasduff, Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 「IT予算を減らす必要がある」。CIO(最高情報責任者)にとって嫌な言葉だが、非常によく耳にする言葉でもある。CEO(最高経営責任者)やビジネス担当役員を前に、CIOが予算を維持しようとしても、無表情な沈黙の後で「とにかく実現してほしい」と要請されるのが常だ。しかも、「全てのサービスを円滑に稼働させたままで」という条件が付く。

 多くのビジネスリーダーが、いまだにITの機能やコストを不透明と考えている。「『特定のコスト削減がサービスにどんな影響を与えるか』『どの領域でコストを節約できるか』をステークホルダーに説明するのは、CIOの役割だ」。Gartnerのアナリストでシニアディレクターのジェームズ・アンダーソン氏は、2019年3月にドバイで開催されたGartner IT Symposium/Xpoでそう語った。

 「CIOがこうしたプロアクティブな姿勢を示せば、IT部門が予算を効率的に管理できるという証拠になり、ステークホルダーから『より大きな成果をより少ないコストと労力で』という要求が繰り返されることへの歯止めになる」(アンダーソン氏)

 ITコストの最適化に向けたビジョンと戦略をビジネス部門の意思決定者に伝えて納得させるには、CIOは、プロアクティブなコスト最適化を継続していく戦略の実効性を示さなければならない。これは、幾つかのステップを踏むことで可能になるが、ビジネスやステークホルダーの優先順位に合わせて行う必要がある。

ステップ1:ベースラインを確立する

 IT部門のベースラインを確立する。定められた出発点がなければ、進捗(しんちょく)を示すことは難しい。CIOは、CFO(最高財務責任者)やCEOと協力し、IT部門が自社にとって最高の価値を提供する取り組みに、リソースを効果的に配分する仕組みを決めなければならない。この決定は、データに基づいて行う必要がある。データがなければ、IT投資の戦略的効果を、意見だけを根拠にして判断することになる。

ステップ2:機会を見極める

 自社のIT支出およびコストを細分化し、価値ある洞察を得るために、データポイントを同業他社と比較する。運用費が業界平均を大幅に上回っている場合は、コスト最適化の余地がある可能性がある。一方、ITサービスデスクのように、支出が比較的少ない業務は、コストを削減するとサービス品質に影響する恐れがある。

ステップ3:ガバナンスを確立する

 一般的に、CIOはコストを最適化する取り組みを幾つか検討した経験があるだろう。最も重要なタスクは、コスト最適化のガバナンスチームを通じて、全てのアイデアをプロアクティブに管理し、各アイデアの可能性を評価することだ。

 一部のアイデアはIT支出の抑制に終始し、小幅なコスト削減にとどまるかもしれない。だが、中にはビジネスの支出と売上高に影響するアイデアもある。「IT部門が、メンテナンスが簡単で、顧客エクスペリエンスも向上させる新しい決済モデルを導入したら、それは費用対効果が高いだけでなく、新しいビジネスモデルも実現する」と、アンダーソン氏は指摘する。

ステップ4:即効性のある取り組みから着手する

 信頼できるビジネス部門リーダーと組み、何を達成できる見込みかを伝え、ビジネス部門の目標達成をIT部門がどのようにサポートできるかを説明する。プロアクティブなコスト最適化戦略への社内の支持を取り付ける一番の方法は、短期間で達成された成果のポートフォリオを紹介することだ。こうした成果の例としては、全くコストをかけずにすぐに現金支出の節約に成功した、あるいはあまり費用を発生させずに現金収支を黒字化したプロジェクトや変更などが挙げられる。

 こうしたプロジェクトが幾つか完了したら、CEOや他のステークホルダーにそれらの成果のポートフォリオのプレゼンテーションを行う。

 「こうした成果を積み上げることは非常に重要だ。コスト削減とそのビジネス効果に関するCIOのビジョンと戦略を浮き彫りにするからだ」と、アンダーソン氏は語る。

 「成果ポートフォリオをプレゼンできるのであれば、CIOやIT部門は、コスト削減効果をどう説明するかで頭を悩ませる必要がない。代わりに、何に基づいてコスト削減実績を達成してきたかを訴えればいい。結局、こうしたビジョンが、CEOやCFOを含む多くのステークホルダーにとって重要だ」(アンダーソン氏)

出典:How CIOs Can Optimize IT Costs(Smarter with Gartner)

筆者 Laurence Goasduff

Director, Public Relations


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。