Automotive Grade Linux、新プロジェクトUADPで、先進運転支援システム/自律運転システムへの取り組みを本格化エグゼクティブディレクターが説明

車載LinuxのOSSプロジェクト、Automotive Grade Linux(AGL)はどこまで来たのか。AGLのエグゼクティブディレクターであるダン・コーチー氏は2019年7月17日、Open Source Summit/Automotive Linux Summit Tokyo 2019で、同プロジェクトが先進運転支援システムおよび自律運転システムに関する本格的な取り組みを始めていることを説明した。

» 2019年07月19日 07時47分 公開
[三木泉@IT]

 車載用Linuxのオープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクト、Automotive Grade Linux(AGL)はどこまで来たのか。AGLのエグゼクティブディレクターであるダン・コーチー(Dan Cauchy)氏は2019年7月17日、Open Source Summit/Automotive Linux Summit Tokyo 2019で、同プロジェクトが先進運転支援システムおよび自律運転システムに関する本格的な取り組みを始めていることを説明した。

 AGLはトヨタ自動車が設立のきっかけを作ったこともあり、2012年の発足当初は、日本の自動車メーカー/関連会社が目立っていた。だが、2019年7月時点では、世界の自動車出荷台数の約半数をカバーするようになったという。具体的には、自動車メーカーとしてマツダ、スズキ、トヨタ、ホンダ、スバル、三菱自動車、Mercedes-Benz、Volkswagen Group、Hyundai Motorsが参加している。

 AGLでは早い時期から、あらゆる車載ソフトウェア機能に対応するつもりであると宣言していた。そしてこれまで、車載インフォテイメントシステム、テレマティクス/コネクテッドカー、ヘッドアップディスプレイ、インストルメントクラスタ(インストルメントパネル)などへの対応が進められてきた。

 今後はどうなるのか。まず、各国の政府や自治体からは、安全性向上のための車車間通信や地域インフラとの通信機能などの拡充が求められており、AGLは「V2X」、つまりクルマをさまざまなものとつなげる取り組みを進めると、コーチ―氏は説明した。具体的には例えば、2019年中に「Vehicle-to-Infrastructure Expert Group」という専門家グループを発足する予定という。

機能安全、先進運転支援、自律運転への取り組みを進める

 コーチ―氏は続けて、先進運転支援システム/自律運転システムへの取り組みを本格化するとし、「AGL Unified Autonomous Driving Platform(AGL UADP)」プロジェクトの発足を発表した。これは、先進運転支援システム/自律運転システムのためのR&DプラットフォームとしてのLinuxを提供するものという。

AGL UADPを発表。Autoware Foundationとも協業していくという

 「Linux Foundation傘下のプロジェクトであるReal Time Linuxを活用し、カメラやレーダー、LIDAR(Light Detection and Ranging)システム、センサーなどへのサポートを追加、標準化されたプラットフォームとして提供する。関連企業はこれを使い、AIをはじめとした面白い機能を、必要に応じて開発できる」(コーチ―氏)

 UADPではまた、機能安全に関する認定の取得を目指し、「研究開発はLinuxで行うが、実製品は独自のRTOSなどを使わざるを得ない」といった問題の解決に取り組むという。

 Linux Foundationでは、このテーマに関連し、ELISAプロジェクトが2019年2月に発足している。ELISAとは「Enabling Linux in Safety Applications」の略で、同プロジェクトはロボット、医療機器、スマートファクトリー、交通機関などで使われるLinuxの機能安全を確保する取り組みを進めている。認可当局や関連業界の標準化団体と連携し、安全基準に適合したLinuxの要件を定義するという。

 AGLではELISAプロジェクトに加入し、Linuxをベースとして開発された自律運転システムが製品化される際には、実製品用プラットフォームとしての認証が得られている状態に持っていきたいと、コーチ―氏は話した。

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