ほとんどの企業は、複数のクラウドプロバイダーを利用することを選択する。多くの場合、ベンダーロックインの回避、あるいは“ベストオブブリード”ソリューションの活用が理由となる。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
世界の複数地域にまたがってクラウドサービスを利用する企業にとって、自社のニーズを満たせる単一のパブリッククラウドインフラプロバイダーを見つけるのは大変だ。こうした企業では、マルチクラウド戦略の採用は極めて理にかなっている。
実際、パブリッククラウドサービスの導入企業の大部分は、複数のプロバイダーを利用している。これは「マルチクラウドコンピューティング」と呼ばれている。マルチクラウドコンピューティングは、クラウドのより幅広い利用形態を指す「ハイブリッドクラウドコンピューティング」の下位概念だ。Gartnerが最近行ったパブリッククラウドユーザーに対する調査では、回答者の81%が、2社以上のプロバイダーと契約していると答えている。
「メガベンダーがパブリッククラウドサービス市場を支配していることが、企業が複数のクラウドプロバイダーを選択する大きな理由だ」と、Gartnerのバイスプレジデントでアナリストのマイケル・ワーリロウ氏は指摘する。
「ほとんどの企業がマルチクラウド戦略を採用するのはベンダーロックインを避けたいから、あるいは“ベストオブブリード”ソリューションを利用したいからだ。ほとんどの大企業が意図的にこのアプローチを追求し続けると、われわれは予想している」(ワーリロウ氏)
Gartnerは、少なくとも2023年まで、パブリッククラウドプロバイダーの大手10社が、少なくともパブリッククラウド市場の50%以上のシェアを占めるだろうと予想している。
マルチクラウドコンピューティングに関する意思決定は通常、3つの観点から行われる。
1.ソーシング:企業はアジリティを高めるとともに、ベンダーロックインを最小限に抑えたいと考えている。また、マルチクラウドコンピューティングに関する意思決定は、可用性やパフォーマンス、データ主権、規制要件、人件費といったさまざまなファクターも考慮して決定される。
2.アーキテクチャ:モダンアプリケーションは、設計に従ってモジュラー型で作成される。利用するサービスは、複数のクラウドプロバイダーから提供される、複数クラウドにまたがることがある。
3.ガバナンス:企業はIT運用におけるコントロールを確保するために、ITシステムの管理とモニタリングを統合的に行いたいと考えている。そのため、複数のクラウドプロバイダー間で、ポリシーや手続き、プロセスの標準化およびツールの共有を進めようとする(特に、コストガバナンスおよび最適化を実現するものが対象になる)。
顧客はマルチクラウドのメリットとして、ディザスタリカバリの改善および一部のデータやアプリケーションの容易な移行などを挙げている。
マルチクラウドのトレンドとは無縁な企業の最たる例は、1社のベンダーの技術スタックに集中的に投資している企業だ。また、数社のクラウドプロバイダーを利用する際の労力やコストは、割に合わないと考える企業も少数ある。
「オンプレミスから一足飛びにマルチクラウド環境に移行するのは避けるのが賢明だ」と、ワーリロウ氏は語る。
「クラウドプラットフォームによって、さまざまな微妙な違いがある。複数のプラットフォームで同時にサービスを構築しようとしても難しい。マルチクラウド化はじっくり進めるべきだ。そうすれば、社内スタッフがスキルを磨き、クラウドの管理方法を学ぶ時間も確保できる」(ワーリロウ氏)
出典:Why Organizations Choose a Multicloud Strategy(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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