中堅企業のIT責任者は、自社におけるビジネストランスフォーメーションの原資の確保につながるよう、ITコストの最適化を積極的に進めなければならない。ITインフラの規模を縮小することなく、即座に取り組める3つの施策を紹介する。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
中堅企業のCIO(最高情報責任者)は少なくとも年1回、非常に重要な問いをじっくり自問する必要がある。それは、「われわれはハードウェアとアプリケーションの管理に追われることなく、(社内における)戦略的パートナーとして結果を出せるか」という問いだ。
正直な答えが「いいえ」なら、さらに考えるべきことがたくさんある。「IT部門はビジネス部門からどう思われているか」「効果的なコスト最適化ができているか」「効果的な戦略計画ができているか」といった具合だ。中堅企業は、小規模な予算や限られたスタッフなど、固有のさまざまな課題を抱えているが、コスト効率を追求してイノベーションの原資を確保することが、ビジネス成長の鍵を握る。
「ビジネストランスフォーメーションの目標達成を支援するため、CIOは効率の高いIT運用環境を構築しなければならない」と、Gartnerのシニアディレクターでアナリストのジョセフ・プロベンザ氏は語る。
「技術と人にかかる運用コストの費用対効果を最大化することが、中堅企業に固有のスタッフや予算の制約を乗り越え、トランスフォーメーションの原資をうまく確保する最も確実な方法だ」(プロベンザ氏)
CIOにとっての最終目標は、IT運用の効率化と戦略性の向上だ。コスト削減は、コスト最適化の一側面であり、結果的に達成される場合もあるが、こうしたトランスフォーメーションに向けた取り組みの目標にすべきではない。結局のところ、IT部門が効率を高め、優れた戦略的パートナーとなることで、イノベーションや重要な成長施策をより多く展開できる。
Gartnerは、コストを最適化し、イノベーションの原資を確保するために、最初に取り組むべき行動重視の施策を3つ挙げている。
最初にすべきことは、予算のうちどれだけの割合が、業務を支えるシステムの運用管理に使われているかを算出することだ。一般的に、これはIT部門の予算の中で最も金額が大きく、差別化効果が最も小さい費目だ。CIOは、全社的なIT支出を明確かつ包括的に把握し、非効率や過剰支出に目を光らせる必要がある。
特に注意すべきなのが年間メンテナンス契約だ。実態が追跡しにくいからだ。CIOは任期中毎年、これらの契約を再評価し、見直しか交渉かを判断すべきだ。
自社がインフラ資産を最後に棚卸ししたのがいつか分からないなら、今がそうすべき時だ。それはインフラの標準化と集約を行うためだ。冒頭の「われわれは管理に時間を取られすぎることなく、ビジネスに価値をもたらすことができるか」という問いへの答えが「いいえ」なら、幾つかの解決策を考えなければならない。
1.多機能セキュリティアプライアンス:統合型の脅威管理インフラでセキュリティインフラを簡素化する。こうしたアプライアンスは、中堅企業のほとんどのニーズに対応できるほど堅牢(けんろう)だ。
2.ハイパーコンバージドインフラ(HCI)アプライアンス:単一のHCIアプライアンスで100〜150台の本番サーバと最大100TBのストレージをサポートできるだろう。これは中堅企業の一般的なIT規模だ。HCIアプライアンスは、ネットワークやコンピュータ、ストレージの簡素化を実現する。
3.標準化:ときには、標準化よりもビジネスニーズを優先しなければならないこともある。だが、一般的に、デスクトップやアプリケーションのプラットフォームを標準化すれば、スタッフがサポートに費やす時間が減少する。
これらの施策の目的は、インフラを縮小することではない。インフラはビジネスの重要な要素だ。これらの施策は、投入する財務リソースとスタッフの時間を最小限に抑えながら、インフラを提供することを目的としている。
クラウドやXaaSソリューションは、スキルギャップやスタッフ不足の対処に役立つ。これらの選択肢は、オンプレミスソリューションより高くつく場合もあるが、スタッフが付加価値の低い業務に費やす時間の減少につながる。これにより、ITスタッフはより戦略的に貢献でき、リソースを日々のメンテナンスではなく、イノベーションやビジネスに関する取り組みに配分できる。
また、クラウドやXaaSソリューションは、中堅企業の多くがてこずる分野のスキルギャップを埋めるのに利用できる。例えば、中堅企業の44%は、セキュリティ専任の社員がいないという調査結果がある。クラウドベースのセキュリティサービスやマネージドセキュリティサービスでは、24時間週7日、多くの場合はセキュリティ専門家を雇うのと同様のコストで、セキュリティサービスを受けられる。
出典:3 Kick-Off Initiatives for Cost Optimization(Smarter with Gartner)
Brand Content Manager at Gartner
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.