IDC Japanが発表した世界のブロックチェーンソリューションに対する支出額の予測によると、2018〜2023年の年間平均成長率は60.2%で、2023年の支出額は約159億ドルの見込み。銀行業の支出額が最も大きい。
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IDC Japanは2019年9月5日、世界のブロックチェーンソリューションに対する支出額の予測「Worldwide Semiannual Blockchain Spending Guide」を発表した。それによると、2019年のブロックチェーン支出額は対前年比80%増の27億ドルと予測。2018〜2023年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は60.2%で、2023年には約159億ドルに達する見込みだ。
地域別で見ると、2019年の米国のブロックチェーンソリューション支出額は、世界最大の約11億ドルを見込む。次いで、西ヨーロッパの6億6100万ドル、中国の3億400万ドルが続く。カナダは2018〜2023年のCAGRが突出しており、73.3%と予測する。
業種別では、世界的に見てブロックチェーンの支出額が最も大きいのは銀行業で、約30%を占める見込み。「国際決済」と「貿易金融/取引後決済」がブロックチェーンのユースケースの上位2つで、これらがけん引役になる。
次点が組み立て製造業とプロセス製造業。この2つの業種で、支出額全体の20%以上になる見通しだ。特にプロセス製造業は、CAGRが68.8%と、成長率が最も高くなる見込みで、2023年にはブロックチェーン支出額が第2位の業種になると予測する。これらの業界をユースケース別で見ると、「来歴管理」や「資産/商品管理」への投資が底堅い。IDCでは、これらのユースケースはどれも高い支出成長率を示すとしている。
一方、技術の観点から見ると、ITサービスとビジネスサービスで、2019年のブロックチェーン支出額全体の約70%を占める見通しだ。2023年までの投資額は、ITサービスの方がやや多くなる見込み。IDCでは、ブロックチェーンプラットフォームソフトウェアはサービスセグメント以外では最大の支出カテゴリーになるとみている。2018〜2023年のCAGRは、ITサービスの66.0%に次いで2番目に高い、65.2%と予測する。
IDC Customer Insights & Analysisのリサーチマネージャーを務めるステイシー・スーフー氏は、「多くの企業がすでに実感しているように、ビジネス上のさまざまな差し迫った問題がブロックチェーンで解決される。企業は概念実証のフェーズを終えつつあり、問題はブロックチェーンが普及するかどうかではなく、どこまで普及するかだ。コラボレーションやパートナーシップの促進と同時に、組織間でのデータの共有、旧態依然のプロセスの簡素化、ビジネスプロセスの透明性向上といった確かな利点が、ブロックチェーンによって実現されつつある」と述べている。
また、IDC Worldwide Blockchain Strategiesのリサーチディレクターを務めるジェームス・ウェスター氏は、「ブロックチェーンによる効率向上、プロセスの改善といったメリットが理解されるにつれ、ブロックチェーンは急成長し、企業による採用が加速している。ブロックチェーンという技術に関しては、規制とガバナンスの部分にまだ不確実性が残っている。しかし、金融サービスやアイデンティティー、貿易などの市場ではブロックチェーンの普及が進んでいる」と述べている。
なお、IDCでは、ブロックチェーンを取引または記録のデジタル分散台帳と定義する。Worldwide Semiannual Blockchain Spending Guideでは、米国、カナダ、日本、西ヨーロッパ、中央/東ヨーロッパ、中東/アフリカ、ラテンアメリカ、中国、アジアパシフィックという9つの地域の、19業種と17のユースケースにわたって、10種類の技術の支出データを示すことで、ブロックチェーン市場を数値化した。ただし、ビットコインなどブロックチェーン技術を用いる各種暗号通貨に関連する支出は含まない。
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