次々に目まぐるしく進展するデジタルディスラプション(創造的破壊)。CIOに今求められているのは、迅速に新しい技術に適応でき、それらの技術で実現する新しいビジネスモデルをサポートできる組織を構築することだ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
ある大企業でCIO(最高情報責任者)を長く務めているデーブ(仮名)は、新しい技術の急速な進歩への対応に苦慮している。古いやり方に慣れてしまっているからだ。それは、新しい技術の進化が数年ごとに起こっていた時代のやり方だ。そうした時代には、デーブは先駆的な採用組織が新しい技術の価値を確認した後で、これを後追いすることで事足りていた。
「様子を見てから動くアプローチは、CIOにとってもはや役に立たない」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのリー・マクマレン(Leigh McMullen)氏は指摘する。
「デジタルビジネスに取り組む企業には、4つの荒波が押し寄せる。これらの波を乗りこなし、新しいビジネスモデルを支える新しい技術に適応する方法を学ばなければならない」(マクマレン氏)
マクマレン氏は、ディスラプション(創造的破壊)の4つの波と、企業はどうすればそれらを乗りこなしていけるかを、次のように解説する。
企業の間では、コストの削減から、売上高と利益の成長追求へと重点のシフトが進んでいる。企業のCEO(最高経営責任者)など経営陣に対するGartnerの最新調査「Gartner 2019 CEO and Senior Business Executive Survey」では、「ビジネス価値を生み出す社内の技術力を高めたい」と答えた経営陣が、「IT業務をアウトソースしたい」と答えた経営陣の2倍以上に上る。
「成長モードでは、企業は自らを差別化しなければならないが、そのためデジタルビジネスにおいては技術を活用しなければならない」(マクマレン氏)
アドバイス:デジタルビジネスをサポートするIT運用モデルを再設計し、人材や働き方など、IT部門で以前から確立されている要素を見直す。
デジタルディスラプションはまだピークに達していない。さまざまな市場に衝撃を与えてきたが、その状況や度合い、タイミングは市場によってさまざまだ。例えば、医療や銀行のような規制が厳しい業界は、完全なデジタル化への抵抗を続けている。これに対し、音楽業界ではストリーミングメディアが席巻している。
アドバイス:さまざまな業界のCIOが、今後のデジタルディスラプションに対応するための選択肢を幾つか持っている。だが、どのような対応を取るにしても、デジタル技術の恩恵を受けるビジネス領域を常に探し、そうした領域で顧客のために新しい価値を生み出さなければならない。
今日、企業自身やエコシステムパートナーのデジタルビジネスを支えているのはデジタル基盤だ。例えば、従業員のデスクのPCやポケットの中のデバイスにおけるアイドル状態のコンピューティング能力の合計は、世界のデータセンターのコンピューティング能力の合計を上回っている。
アドバイス:自社のメインのビジネスモデルやプラットフォームなどをサポートするため、クラウドとエッジコンピューティングを組み合わせた分散クラウドアーキテクチャを検討する。分散クラウドサービスはIoTをサポートするだけでなく、モバイルやデスクトップ環境にも恩恵をもたらす。
ピアツーピアのマイクロトランザクションをサポートするブロックチェーンの機能と、人工知能(AI)のインテリジェントな意思決定支援機能、IoTの高度なセンサー機能を組み合わせることで、これまでは不可能だったビジネスが実現できる。既にチャットbotや仮想パーソナルアシスタントなどのAIアプリケーションは企業で広く導入されており、ブロックチェーン技術は急速に成熟化が進んでいる。
アドバイス:AI、IoT、ブロックチェーンの影響を理解できるように、これらの技術について経営幹部を教育する。また、中間管理職を、これらの技術に携わる人材の育成に当たらせる。
出典:Ride the 4 Waves of Digital Disruption(Smarter with Gartner)
Manager, Public Relations
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