CIOは、新しいアプローチでビジネス/IT戦略を策定する必要がある。それは、変化をモニタリングし、対応すべき変化を見極め、デジタルビジネスのペースで変化に適応できるアプローチだ。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
デジタルビジネスは非常に動きが速い。このため、CIO(最高情報責任者)はしばしば、戦略の策定・更新についてこれまで実証されてきた方法がもはや通用しないことに気付く。顧客ニーズのシフトや社内の能力拡張、競争圧力の高まりに伴う変化のペースが、優先順位についての仮設を崩してしまうからだ。
「企業は、戦略が確定した途端に古くなると思うかもしれない。そして、戦略の策定や更新を遅らせるかもしれない。(戦略策定のような)大掛かりでまれな取り組みに時間やリソースを振り向ける余力はなく、正当化もできないからだ」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターのイアン・コックス(Ian Cox)氏は語る。
こうした傾向に陥ると、もはや重要性が失われた戦略事項に時間とリソースを投入してしまうリスクが高まる。
CIOや他のITリーダーは新しいアプローチを取る必要がある。それは、変化が起こったときに過剰に反応することなく適応できるアプローチだ。このアプローチの鍵は以下の通りだ。
ビジネス環境をモニタリングし、社内外のさまざまなファクターに関連する変化をチェックする。全てを追跡する必要はない。自社の戦略目標達成力に影響する可能性が高い問題に絞り込んでモニタリングすればよい。主要なモニタリング項目は「戦略的仮設」「戦略的課題」「戦略的トリガー」だ。
こうした仮設や課題、トリガーを、所定の頻度で(理想的には、毎月)モニタリングし、変化の兆候を早期に発見する。リスクの兆候を察知した場合は、直ちに戦略を再検討すべきだ。
効果的な戦略は、顧客と直接やりとりする現場担当者から、IT統括役員へのフィードバックの連鎖を活用することで形成される。同じように重要なのが、業務分野間の――つまり、製造や顧客サービス、財務、法務などにまたがるフィードバックループだ。こうしたフィードバックループにより、実際の業務の進め方や顧客ニーズを踏まえた戦略を立てられる。また、仮設、課題、トリガーに関連するリアルタイムの情報交換が可能になる。
例えば、市場の動きを定期的にモニタリングしている企業が、「新しい競合他社は、まだ市場に本格的に浸透していない」と考えるかもしれない。だが、営業チームからその企業に案件を大量に取られているという報告があったら、それは警戒すべき変化の早期の兆候かもしれない。
モニタリングによって課題が見つかったら戦略を再検討する。変化に対処するには、戦略を少し調整して更新すれば済む場合もあれば、戦略の大幅な方向転換が必要になる場合もある。
戦略の変更は規模の大小にかかわらず、さまざまな事業部門が適応できるように周知する必要がある。フィードバックループを利用し、全ての職層の社員が変更の内容と、変更が行われた理由を理解できるようにする。
出典:Keep Business Strategy Current as Conditions Change(Smarter with Gartner)
Former Analyst, Gartner associate
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