1988年から30年以上、企業ネットワークで大事な役割を果たしてきたISDN(INSネット)が2024年にサービス終了を迎える。2020年現在で考えるとまだ4年あるともいえる。だが、1000拠点を超えるような多拠点ネットワークでは、今からその終わり方を考えても早過ぎることはない。
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既によく知られていることではあるが、NTT東日本/西日本がISDN終了をどのようなスケジュールで進め、何をするのか復習しておこう。NTTの用語では「固定電話」の中に「加入電話」と「INSネット」(ISDN)が含まれる。これらが廃止され、「メタルIP電話」として提供されるようになる。理由は図1にあるように回線交換で電話を中継するPSTN(公衆電話交換網)の設備が老朽化し、保守できなくなるからだ。回線交換に代わってIPで中継するIP網へ移行する。
2021年1月からNTTの電話網とKDDIやソフトバンクなど、他の電話会社との接続をPSTN接続からIP接続に切り替える作業が始まる。2024年1月からは固定電話をIP網へ収容する作業が始まり、2025年1月に完了する。作業の概要は図2の通りだ。
固定電話のうち加入電話はアナログ回線で電話局の加入者交換機に接続されており、INSネットはISDN回線で接続されている。アナログ回線は一対の回線で1番号1通話の電話にしか対応していないが、ISDNはデジタル化されており、一対の回線で2番号2通話が利用できる。
IP網へ移行後も加入者交換機はメタル収容装置として使われる。固定電話はPSTN音声とIP音声に変換する変換装置を介してIP網へ接続される。これがメタルIP電話である。
なお、ひかり電話を収容する光回線は「フレッツ 光ネクスト」でありフレッツ網が使われている。
ISDNがメタルIP電話に移行する際に、多拠点ネットワークのユーザーがどう対処するか、基本的に3種類の対応策がある。「何もしない」「ひかり電話への移行」「非固定電話への移行」だ。
図3は典型的な多拠点ネットワークの構成である。データ通信はフレッツ 光ネクストを利用し、電話とファクシミリ(FAX)は別番号でISDNを使っている。
一番安直な対応策は図4のように「何もしない」ことだ。拠点のメタル回線やTA、電話機やFAXといった端末もそのままで、電話とFAXを使い続けることができる。何もしないので移行の費用はかからない。これがメリットだ。デメリットはISDNの月額3530円(税別、以下同じ)という高額な基本料金を払い続けねばならないことである。1000拠点あると月額353万円、年間4236万円という大きな金額になる。
2番目の対応策はひかり電話へ移行することだ(図5)。フレッツ 光ネクストにホームゲートウェイを付け、データ通信用のCPEをLANポートに接続し、電話/FAXを電話ポートに接続する。電話やFAXの電話番号は変わらず、そのまま移行できる。
ひかり電話へ移行するメリットは基本料金を大きく削減できることだ。フレッツ 光ネクストでひかり電話を使う場合の基本料金は月額500円で済む。ISDNの基本料3530円が500円になるので、1拠点当たり3030円、1000拠点だと月額303万円、年額3636万円節減できる。
デメリットは移行工事の費用が必要であること。だが、3年以内で余裕を持って回収できる。その後は削減効果だけを享受できる。
せっかく移行の手間をかけるのであれば、同時にIPv4で使っていたデータ通信をIPv6に移行するとよい。キャリアVPNとの接続にPPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet)を使うIPv4からIPoE(IP over Ethernet)を使うIPv6に変更することで、Windows Updateなどによるフレッツ網の輻輳(ふくそう)の影響を軽減できるからだ(関連記事)。フレッツ 光ネクストのIPv6オプションは無料なので月額費用は増えない。
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