IPAは、「情報システム・モデル取引・契約書」のアジャイル開発版を公開した。あらかじめ特定した成果物の完成に対して対価を支払う「請負契約」とせず、ベンダー企業が業務を遂行することに対価を支払う「準委任契約」を前提とした。
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独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2020年3月31日、「情報システム・モデル取引・契約書」のアジャイル開発版を公開した。IPAのWebサイトからダウンロードできる。アジャイル開発の外部委託を想定したもので、ユーザー企業やベンダー企業、業界団体、法律専門家の意見をとりまとめて策定した。
アジャイル開発は、機能の追加や変更、優先順位の変更、先行リリース部分の改善などに柔軟に対応可能な開発手法。そのため同契約書では、あらかじめ定めた成果物に対して対価を支払う「請負契約」とせず、ベンダー企業が業務を遂行することに対価を支払う「準委任契約」を前提とした。
さらに、アジャイル開発の利点を生かすためにユーザー企業が積極的に関与できるよう、ユーザー企業とベンダー企業の間で認識の食い違いを防ぐ2つの補足資料も用意した。
1つは「契約前チェックリスト」で、契約締結前にユーザー企業とベンダー企業が、開発対象がアジャイル開発に適しているかなどを確認するために使う。もう1つは「アジャイル開発進め方の指針」で、ユーザー企業とベンダー企業が開発プロセスについて共通認識を確立することが目的。
なおIPAは「アジャイル開発では、成果物の方向性や内容について責任を持つ『プロダクトオーナー』の役割が重要だ」と指摘する。同契約書は、プロダクトオーナーをユーザー企業が選任するよう定め、開発を進めるためにプロダクトオーナーが担う役割を明確化した。
一方のベンダー企業については、成果物の価値向上に向けて業務を遂行することに加え、ユーザー企業に対して成果物の技術的なリスクなどに関して説明するよう求めている。そして、開発チーム全体が円滑に活動できるよう支援する「スクラムマスター」をベンダー企業が選任すると定めた。
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