理研の三好建正氏らの共同研究グループは、首都圏の30分後までの降水予報を30秒ごとにリアルタイム更新する超高速降水予報の実証実験を2020年8月25日〜9月5日に実施する。わずか数分の間に急激に発達するゲリラ豪雨を予測できる。
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理化学研究所(以下、理研)の三好建正氏ら共同研究グループは2020年8月21日、首都圏の30分後までの降水予報を30秒ごとに更新する「超高速降水予報」の実証実験を2020年8月25日〜9月5日に実施すると発表した。これまでの天気予報と比べて30秒という短時間で更新することで、数分の間で急激に発達する「ゲリラ豪雨」を予測できるとしている。
超高速降水予報の基になったのは、同共同研究グループが2016年に開発した「ゲリラ豪雨予測手法」。これは、スーパーコンピュータ「京」と雨雲の3次元観測ができる「フェーズドアレイ気象レーダー」(PAWR)を活用し、予測対象地域を解像度100メートルのメッシュに分割し、フェーズドアレイ気象レーダーのデータを30秒ごとに更新して30分後までの天気を予報する仕組み。開発当時は、30秒以内に完了しなければならない計算に約10分かかっており、実用に耐えなかった。今回の実証実験は、このゲリラ豪雨予測手法を高度化したものだ。
実証実験で使用する超高速降水予報システムは、情報通信研究機構(NICT)が運用する「マルチパラメータフェーズドアレイ気象レーダー」(MP-PAWR)から雨雲の詳細な観測データを30秒ごとに取得し、筑波大学と東京大学が共同で運営する最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)のスーパーコンピュータ「Oakforest-PACS」で、30分後までの予報を30秒ごとに演算する。スーパーコンピュータ上での大規模データの入出力を抑えるようにし、予報モデルの計算を高速化することで処理性能を向上。計算にかかる時間を20秒程度に短縮できたという。
同共同研究グループによると、超高速降水予報システムは雲の発生や発達、衰弱、消滅といった気象学的メカニズムを考慮してシミュレーションする。このため、現在気象庁が運用している予測モデル(LFM)では難しかった「短時間で発達するゲリラ豪雨の変化」を捉えることができるという。
実証実験の予報データは、理研の天気予報研究のWebサイトとエムティーアイのスマートフォンアプリ「3D雨雲ウォッチ」で、2020年8月25日14時から公開される。
なお、同共同研究グループには、理研の計算科学研究センターでデータ同化研究チームのチームリーダーを務める三好氏の他、NICTの電磁波研究所リモートセンシング研究室で研究マネージャーを務める佐藤晋介氏や、大阪大学大学院工学研究科教授の牛尾知雄氏、エムティーアイのライフ事業部で気象サービス部の部長を務める小池佳奈氏、筑波大学計算科学研究センター教授の朴泰祐氏、東京大学情報基盤センター教授の中島研吾氏らが名を連ねる。
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