Mozillaは、世界のWebデザイナーと開発者を対象とした年次ニーズ調査の結果をまとめたレポート「MDN Web Developer Needs Assessment(DNA)2020」を公開した。前回の調査に引き続いてWebブラウザの非互換性に対する不満が高いことが分かったものの、Webプラットフォームへの全体的な満足度は高かった。
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Mozillaは2020年12月16日(米国時間)、世界のWebデザイナーと開発者の年次ニーズ調査の結果をまとめたレポート「MDN Web Developer Needs Assessment(DNA)2020」を公開した。Web DNA調査は今回が2回目。世界137カ国の6645人のWebデザイナーと開発者が回答した。
Mozillaは調査結果について大きく3点を紹介している。(1)2019年の初回調査結果を踏まえて2020年に達成された成果、(2)2020年調査のハイライト、(3)2020年調査を受けた次のステップだ。
2019年の調査では、回答者の4分の3以上がWebプラットフォームに「非常に満足している」または「満足している」と答えた。
回答者が挙げた不満点の上位4つは、「特定のWebブラウザ(Internet Explorer 11など)をサポートしなければならない」「フレームワークやライブラリのドキュメントが古くなっている、または不正確」「Webブラウザが異なると動作しない機能を回避し、削除する手間がかかる」「各種Webブラウザでのテストに手間がかかる」だった。調査の自由記入欄には生々しい意見もあった。
「Webブラウザの互換性と拡張性が問題だ。プラットフォーム向けにプラグインを作成する際、セキュアな構成にしようとすると問題になる」
「完全なクロスブラウザ互換性がほしい。標準やドラフトでは『実装に特化した』点がない」
「HTML/CSSを書いて、半年後に仕様やWebブラウザが変わったときに意図していたのとは異なる動作にならないようにしたい」
「メディア管理のためにフォルダへのフルアクセスが必要だ。ファイルシステム上に永続的な状態を保存し、Webブラウザのストレージクリーンアップの気まぐれに左右されないようにしたい」
「仮想ファイルシステムへのアクセスを用いることで、通常は余分な手順や外部ライブラリを全て省くことができる」
「自動テストのために、コマンドラインからのWebブラウザアプリケーションのデバッグをより簡単にしたい。これを実行するための独自の方法はあるのだが、コマンドラインからテストに合格したのか不合格なのかのすぐに判定できる方法があれば、時間の節約になる」
「デバッグはもっとトレーサブルであるべきだ。例えば『Vue』や他のWebフレームワークを使用していると、エラーの原因がフレームワークにあるかのように表示されることがある。問題のJavaScriptファイルがすぐには分からない」
「コンテナのせいで、多くのデバッグツール、開発ツールの使用が困難になったり、そもそも使えなかったりする」
MozillaやWeb業界団体などがこうした調査結果を踏まえて2020年に達成した主な成果として、次の6点を挙げた。
2020年の調査では、回答者の属性が6分野に分かれている。フルスタック(フロントエンドとバックエンド)が59.1%、フロントエンド(主にJavaScriptを使用)が24.2%、フロントエンド(主にCSSとHTMLを使用)が9.6%、バックエンドが4.1%、他のWeb開発者が2.5%、テストエンジニアが0.5%だった。
開発経験年数別の内訳は、10年以上が30.9%、3〜5年が25.7%、1〜2年が18.1%、6〜9年が16.8%、1年未満が8.4%。
今回の調査で明らかになった最大の不満点はWebブラウザの互換性だった。これは前回の調査と同じだ。興味深いことに、Webプラットフォームへの全体的な満足度もあまり変わらず、回答者の77.7%が、「非常に満足している」または「満足している」と答えた。
今回はニーズのセグメンテーション分析を追加した。その結果、回答したWebデザイナーと開発者が7つのセグメントに分かれることが分かった。Mozillaは、各セグメントの大きな不満点などを次のように説明している
「フレームワークやライブラリのドキュメントが古くなっている」「HTML、CSS、JavaScriptのドキュメントが古くなっている」ことが最大の不満点。これらの不満を感じている回答者の割合が、全体平均より高いセグメントだ。
「特定のWebブラウザをサポートしなければならない」ことが最大の不満点。さらに「Webブラウザが異なると動作しない機能を回避し、削除する手間がかかる」「複数のWebブラウザ間でデザインや機能性の統一が困難」「各種Webブラウザでのテストに手間がかかる」ことへの不満も強い。
「APIの不足」「プログレッシブWebアプリ(PWA)のサポート不足」「ネイティブまたはハイブリッドコンテキストでのWeb技術の使用」に関する不満が強い。だが、Webブラウザ関連ニーズに関する不満を感じている回答者の割合が、全体平均より低い。
「エンドツーエンドのテスト」「フロントエンドのテスト」「各種Webブラウザでのテスト」「テストで見つからなかったバグの発見」に不満を感じている回答者の割合が、全体平均より高い。その一方で、「各種Webブラウザでのテスト」を除けば、Webブラウザ関連ニーズに関する不満を感じている回答者の割合が、全体平均より低い。
「多数の新旧のツールやフレームワークへの対応の継続」「Webプラットフォームの変化への対応の継続」が最大の不満点。
「既存のパフォーマンス問題の特定」「パフォーマンス最適化の実装」が最大の不満点。テスト関連の不満を感じている回答者の割合は、全体平均より低いが、「テストで見つからなかったバグの発見」に不満を感じている回答者の割合は、全体平均より高い。
「法律や規制を順守するためのユーザーデータ管理」が最大の不満点。「セキュリティ対策の理解と実装」「Webブラウザにおけるさまざまな追跡保護とデータ保存ポリシーへの対応」「サードパーティーを統合した認証」に不満を感じている回答者の割合も、全体平均より高い。
Mozillaは今後数カ月で調査分析をさらに深め、今回の調査結果に基づく取り組みを進めようとしている。フォーカスすべき重要分野の選択と、ユーザーインタビューの実施、詳細分析を実行することで、不満が出ている重要分野を掘り下げ、不満を軽減する方法を見いだすことが可能になると述べている。
定性調査を含む調査の対象となる可能性がある分野は、テストとドキュメンテーション、Webプラットフォームの変化のペース、各種Webブラウザ間でのデザインやレイアウトの問題など。
今回の調査期間は2020年10月12日〜11月2日。回答者3万844人の21.2%に当たる6645人が完全回答だったため、調査レポートはこの6645人の回答に基づいている(2019年調査は173カ国の7万6118人が回答し、37.4%に当たる2万8474人が完全回答だった)。
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